
30代でも、未経験からIT業界へ転職することは可能です。ただし、20代と同じ進め方では、うまくいかない場合があります。選考では、「なぜ今、ITなのか」と「前職の経験を、どう活かせるか」が、より具体的に確認されるためです。この記事では、30代未経験の転職で見られる点、職種の選び方、年収の目安、学習の進め方、書類・面接の対策、企業選びのポイント、転職活動の進め方を、公的データと自社データをもとに整理しました。
この記事のポイント
転職サービスdodaの転職求人倍率レポート(2026年6月)では、IT関連の求人倍率は11.06倍で、全体の2.55倍を大きく上回っています。IT人材を求める企業は多く、未経験者向けの求人も、数多くあります。
ただし、「求人が多い」ことと、「30代未経験で受かりやすい」ことは、同じではありません。20代はポテンシャル(将来の伸びしろ)を中心に評価されやすい一方で、30代は、これまでの仕事で身につけた力と、転職の理由・覚悟が、より重視される傾向があります。
この記事は、これから転職活動を始める30代の方が、「何を準備し、どう進めるか」を、判断できるように構成しました。30代のエンジニア転職の全般は、30代エンジニアの転職で成功するポイントも、あわせてご覧ください。
| 見られる点 | 評価されやすい状態 | 不利になりやすい状態 |
|---|---|---|
| 志望理由 | 前職の経験や課題から、ITを選んだ流れが、具体的に説明できる | 「将来性がありそうだから」「人手不足だから」など、一般論だけ |
| 前職の経験 | 仕事の進め方・調整力・責任感を、IT業務に置き換えて説明できる | 「ITは未経験なので、何もありません」と、経験を伝えられない |
| 学習の状況 | 学習の期間・内容・資格の予定を、具体的に説明できる | 学習の事実がなく、「入社後に教えてもらう」前提 |
| 転職の理由 | 前向きな動機を中心に、前職の事情も簡潔に説明できる | 前職への不満が中心で、他責に聞こえる |
| 働き方の条件 | 夜勤・シフトなどの条件を、理解したうえで伝えている | 条件が多く、入社後の働き方のイメージが、持てていない |
| 定着の見込み | 長く働く意思と、その根拠(キャリアの見通し)がある | 短期間での転職が続いていて、理由の説明がない |
不利になりやすい点は、準備で、改善できるものが多くあります。特に、志望理由と、前職の経験の置き換えは、書き出して、整理することをおすすめします。
| 年代 | 評価されやすい点 | 準備しておくこと |
|---|---|---|
| 20代 | 学習意欲、吸収の早さ、将来の伸びしろ | なぜITか、学習を続けた事実、キャリアの方向性 |
| 30代 | 前職で培った責任感・調整力・業務の知識 | 前職の経験をIT業務に置き換えて説明する。転職の理由と覚悟を、明確にする |
| 40代 | マネジメント経験、課題解決の経験 | 運用現場で活かせる強み、学び続ける姿勢、働き方の条件の整理 |
当社の面談では、現在の相談者は20代の方が中心です。30代の方も、前職の経験を整理して、準備を進めることで、転職に進まれる例があります。年代が上がるほど、選考で確認される点が増えるため、準備の質が、結果を左右します。
| 職種 | 仕事の中心 | 前職の経験を活かせる場面 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 運用・監視(インフラ) | システムの稼働監視、アラートの一次対応 | 手順を守る、確認を徹底する、報告・連絡 | 夜勤・シフトの有無を確認する |
| ヘルプデスク・テクニカルサポート | 問い合わせ対応、設定の案内、状況の切り分け | 接客・営業・事務での、聞き取りと説明の経験 | コミュニケーションの比重が大きい |
| ITセールス・カスタマーサクセス | 顧客への提案・導入の支援 | 営業・接客での、課題の聞き取り、提案 | ITの基礎知識の学習が必要 |
| 社内SE(情報システム) | 社内のシステムの運用・問い合わせ対応 | 事務・管理部門での、業務の理解 | 未経験の募集は少ない。「最終着地」になりやすい点も、考慮する |
| テスター・QA | ソフトウェアの動作確認、不具合の報告 | 細かい確認、正確な記録、報告 | 開発や設計へ進む道筋を確認する |
インフラの仕事全体は、インフラエンジニアへ未経験で転職する方法で解説しています。社内SEについては、未経験から社内SEに転職できる?をご覧ください。
社内SEは、働き方が安定していて、魅力的な選択肢です。一方で、当社の面談では、「社内SEは、最終着地になりやすく、スキルが止まりやすい」ともお伝えしています。構築・設計・要件定義などの上流工程を、一通り経験してから進むほうが、年収もキャリアも、伸びやすい傾向があります。未経験の1社目は、実務の経験を積める職種を、選ぶことをおすすめします。
| 前職 | 活かせる強み | IT業務での置き換え |
|---|---|---|
| 営業 | 相手の課題を整理する力、調整力、数字への意識 | 顧客との窓口、要件の整理、ITセールス |
| 事務・経理 | 正確さ、ルールに沿った処理、確認の習慣 | 手順書に沿った作業、設定内容の確認、記録の管理 |
| 接客・販売 | 聞き取りと、状況に合わせた対応 | 問い合わせ対応、状況の聞き取り、分かりやすい説明 |
| 製造・現場 | 手順の遵守、品質管理、安全の意識 | 定型作業、監視、障害の一次対応 |
| 介護・医療 | 状況の変化に気づく観察力、緊急時の対応力 | アラートの検知、障害時の冷静な対応、引き継ぎ |
| 管理職・リーダー | メンバーの育成、進捗の管理、調整 | チームでの作業、進捗管理、後輩へのフォロー |
「何ができるか」ではなく、「前職で、どんな場面で、どう動いたか」を、具体的に説明できることが大切です。自己PRの書き方はIT転職の自己PRの書き方で、例文を紹介しています。
転職サービスdodaの「平均年収ランキング(2025年版、2024年9月〜2025年8月)」では、IT・通信の技術系の平均年収は、全体で469万円、年代別では、20代で398万円、30代で519万円、40代で649万円でした。経験を積むほど、年収が上がっていく傾向があります。
これは、経験者を含む平均です。未経験で入社した直後の年収は、これより低くなります。当社で、インフラ分野に入社した170名の入社時年収は、中央値で320万円でした(転職前は300万円、自社集計、2025年8月〜2026年7月入社)。入社時の年収が、転職前を上回った方は60%でした。
⚠ 注意
30代で、前職の年収が高い場合は、入社時に、年収が下がる可能性があります。年収は、入社時の金額だけでなく、「数年後に、どこまで伸ばせるか」で、判断することをおすすめします。入社前に、昇給の仕組みや、上位の工程へ進んだ方の実績を、確認してください。
| 期間 | 学ぶこと | 目標 |
|---|---|---|
| 1か月目 | ITの基礎用語、Linuxの基本操作 | 仮想マシンで、基本コマンドを一通り使える |
| 2か月目 | ネットワークの基礎、サーバーの設定 | 通信の流れを、図を描いて説明できる |
| 3か月目 | 資格の問題演習、職務経歴書・志望動機の作成 | 資格の受験予定を決め、応募の準備を整える |
仕事をしながらの学習は、平日は短い時間、休日にまとまった時間、と分けると続けやすくなります。資格は、基本情報技術者試験や、LinuCなど、仕事内容に近いものを選びます。「〇月に受験予定」と書類に明記して、応募を進める方も多くいます。
【志望動機の例(この記事のための、書き方の例です)】
前職では営業として、お客様の課題を聞き取り、社内の関係部署と調整しながら、提案を進めてきました。仕事を通じて、システムの不具合が、お客様の業務に直結することを実感し、システムの基盤を支える仕事に、専門性を持って関わりたいと考えるようになりました。現在は、仮想マシンでLinuxの学習を続けており、〇月に資格の受験を予定しています。前職で培った、状況の聞き取りと、関係者との調整を活かし、まずは運用の業務から経験を積み、将来は構築・設計を担当したいと考えています。
⚠ 注意
上の例は、書き方を示すための例文です。実際のご経験ではありません。自分の経験に合わせて、書き換えてください。
| 質問 | 答え方のポイント |
|---|---|
| なぜ今、30代で、ITに転職するのですか | 前職の経験や課題から、ITを選んだ流れを、前向きに話す。年齢の話は、自分から避けない |
| 前職の経験を、どう活かせますか | 調整力・責任感などを、具体的な場面とあわせて話す |
| 年下の先輩や上司の下で、働けますか | 役割の違いを理解し、学ぶ姿勢を示す |
| どのように学習していますか | 期間・頻度・教材・試した環境を、具体的に話す |
| 年収が下がる可能性は、理解していますか | 入社時の年収より、数年後の伸びを見ていることを、話す |
| 夜勤・シフト勤務は、可能ですか | 条件を、正直に伝える。可能な範囲を、明確にする |
| 入社後に、どうなりたいですか | 運用から経験を積み、構築・設計へ進みたい、と段階で話す |
面接の質問と答え方は、未経験IT転職の面接でよく聞かれる質問と答え方で、さらに詳しく紹介しています。職務経歴書の書き方はIT転職の職務経歴書の書き方、退職理由はIT転職の退職理由の伝え方をご覧ください。
| 確認点 | 見るポイント | 質問の例 |
|---|---|---|
| 研修の内容 | 期間、内容、研修後のフォロー | 研修は何か月で、どんな内容ですか |
| 配属と担当工程 | 入社後の配属先、上位の工程へ進んだ実績 | 入社後、構築・設計に関わった方は、どのくらいいますか |
| 勤務形態 | 夜勤・シフトの有無と頻度、手当 | 夜勤は月に何回ありますか |
| 評価と昇給 | 評価の仕組み、数年後の年収のモデル | 3年後に、どんな役割・年収の方が多いですか |
| 社員の年齢層 | 30代の中途入社者の在籍と、活躍の実績 | 30代で未経験入社した方は、どのくらいいますか |
SESなどでは、商流が深い(二次受け・三次受けが多い)と、単価が下がり、給与が上がりにくい傾向があります。また、「マージンの○割を還元」と強くうたう会社は、基本的に注意が必要です。当社の面談では、キャリアとして評価し、育てる会社のほうが、長く続けやすいと、お伝えしています。SESの働き方は、SESはやめとけ?未経験が後悔しないための事実とキャリア戦略で解説しています。
| 方法 | 向いている人 | 注意点 |
|---|---|---|
| 独学 | 費用を抑えたい人、自分のペースで進めたい人 | 質問できる相手がいないと、挫折しやすい |
| スクール | 質問できる環境がほしい人 | 費用が高い場合がある。修了が就職を保証するわけではない |
| 公的職業訓練(ハローワーク) | 離職中で、学ぶ時間を確保できる人 | 申込みに条件や選考があり、開始時期が決まっている。対象や費用の扱いは、制度で異なるため、ハローワークで確認する |
どの方法でも、最終的な目的は「企業に採用されること」です。学習と並行して、志望動機と、前職の経験の整理を、進めてください。当社でも、ITスクール(CCNA・LPICレベル1のカリキュラム)を運営しており、ご希望の方には、無料でお渡ししています。
当社で、内定までに応募した会社は、平均5社、内定をいただいた会社は、平均4社でした(自社集計)。面談から内定までの期間は、中央値で40日です。全体の流れはIT転職エージェントの登録から内定までの流れ、在職中の進め方はIT転職は在職中と退職後のどちらがよいかをご覧ください。
30代で入社する場合、入社後の数年間で、どこまで経験を積めるかが、キャリアの伸びを左右します。次の表は、運用・監視から入った場合の、一般的な流れの例です。
| 時期 | 主な役割 | 身につけたいこと |
|---|---|---|
| 1年目 | 運用・監視、一次対応、定型作業 | 手順書に沿った作業、障害の切り分け、報告・連絡 |
| 2〜3年目 | 障害の原因調査、設定変更、構築の補助 | サーバー・ネットワークの設定、スクリプトによる自動化 |
| 3年目以降 | 構築・設計、専門分野の強化 | 設計書の作成、クラウドの設計、資格による専門性の証明 |
当社では、運用・監視の経験を3年程度積み、資格を持つ20名のうち19名(95%)が、入社後半年程度で、構築・設計を担当しています(自社集計)。進み方は運用・監視から構築・設計へ進む方法で解説しています。
また、入社後1年以内の定着率は98%です(201名が対象、自社集計)。2年目以降は、キャリアアップのために、より上の領域やSIerへ進む転職も、前向きな選択肢のひとつです。ただし、1〜2年での早い転職は避け、3年ほど経験を積んでから、次に進むほうが、評価されやすい傾向があります。
| 失敗のパターン | 起きる理由 | 対策 |
|---|---|---|
| 志望動機が、一般論になる | なぜITか、なぜその職種かが、経験から語れていない | きっかけ・準備・将来像を、具体的に書く |
| 前職の経験を、「ない」と考える | 経験の置き換えの視点がない | 前職の仕事を、手順・調整・確認の視点で書き出す |
| 年収の条件を、譲れない | 入社時の年収を、前職と比べている | 数年後の伸びと、キャリアの広がりで、判断する |
| 応募が、増えすぎる | すべての求人に応募して、準備が追いつかない | 4〜5社に絞って、準備に時間をかける |
| 企業の実態を、確認しない | 「未経験歓迎」だけで判断している | 研修・配属・勤務形態を、入社前に質問する |
準備のチェックリスト
すべてにチェックが付かなくても、転職活動を始められます。ただ、「志望理由」と「前職の経験の置き換え」の2つは、応募の前に、文章にしておくことをおすすめします。
キャリアカンパニーは、未経験・若手のITエンジニアを専門に支援しています。企業側と求職者側の両方を担当する「両面型」のため、企業ごとの研修や配属の実態を踏まえて、ご案内しています。面接対策は、企業ごとに個別に行い、模擬面接も、ご希望の回数だけ実施します。入社後も、1か月・3か月の面談で、状況を確認しています。
「30代でも、未経験から転職できるか」「自分の経験が、どう活かせるか」といった相談だけでも、お受けします。お気軽にご相談ください。
30代の方が、ブラック企業を避けるための確認方法は、こちらで解説しています。
▶ ブラックなIT企業の見分け方|求人票・面接・口コミで確認するポイントと質問例
可能性はあります。当社で2025年8月〜2026年7月に入社した201名のうち、前職がIT以外の方は90%でした(自社集計)。30代の場合は、「なぜ今ITなのか」と「前職の経験の活かし方」が、より具体的に確認されるため、準備を丁寧に進めることが大切です。
未経験で入社した直後は、300万円台前半が目安です。当社でインフラ分野に入社した170名の入社時年収は、中央値で320万円でした(自社集計)。前職の年収が高い場合は、下がる可能性もあります。数年後の伸びで、判断してください。
運用・監視、ヘルプデスク、テクニカルサポート、ITセールスなどが、入り口になりやすい職種です。前職の経験を、活かせる場面があるかを基準に、選んでください。
資格がなくても、転職できる場合があります。ただ、学習意欲と基礎知識を示す材料として、資格は有効です。「〇月に受験予定」と書類に明記して、応募を進める方も、多くいます。
直近で正社員の経験が1年以上あると、受けられる会社の幅が広がります。経験がない場合は、アルバイトや業務委託での経験を、具体的に説明できるように、準備してください。
当社の入社者では、内定までに応募した会社は平均5社、内定をいただいた会社は平均4社でした(自社集計)。4〜5社に絞り、同じ時期に面接を進めると、内定の期限に対応しやすくなります。
進められます。辞めると伝えずに面接を受け、天秤にかけて決める進め方もあります。面接の日程は、有給休暇などで、調整できるかを先に確認してください。
転職の進め方や、企業選びで迷ったときは、お気軽にご相談ください。
アドバイザー
百瀬将悟
大学卒業後、不動産会社に入社。その後、求人広告営業・キャリアアドバイザーを経験。現在は両面型のアドバイザーとIT企業の採用コンサルティングに従事。
採用と転職市場の両方を理解している点を強みとし、「市場価値を高めながら活躍できるエンジニア」になるためのを転職サポート。