
IT転職の年収交渉は、経験者は「内定後・承諾前に、根拠を示して、エージェント経由で」進めるのが基本です。一方、未経験の場合は、入社時の年収があらかじめ決まっていることが多く、交渉の余地は多くありません。この記事では、未経験と経験者の違い、希望年収の答え方、相場の目安、交渉の進め方と例文、年収以外に確認すべき条件、入社後に年収を上げる考え方までまとめました。
この記事のポイント
まず、実際の入社時の年収の実態を見てみましょう。キャリアカンパニーで2025年8月〜2026年7月に入社が決まった方のうち、インフラ分野の170名では、入社時の年収の中央値は320万円で、転職前(300万円)より高い結果でした。年収が上がった方は60%でした。
対象:インフラ分野で入社した170名。
出典:キャリアカンパニー自社集計(2025年8月〜2026年7月に入社が決まった方)
開発分野で入社した20名でも、入社時の年収の中央値は320万円で、転職前の300万円を上回っています(自社集計)。ただし、これは「入社時の条件」で、個人によって上下し、全員が上がるわけではありません。
| 未経験での転職 | 経験者の転職 | |
|---|---|---|
| 入社時の年収 | 企業の規定により、あらかじめ決まっていることが多い | 経験・スキルに応じて、幅がある |
| 交渉の余地 | 基本的に少ない | ある。根拠があれば、交渉しやすい |
| 交渉で使える材料 | 学習の事実・資格・前職の経験 | 現年収、経験年数、保有資格、実績、他社の選考状況 |
| 年収を上げる主な手段 | 入社後の昇給・資格手当・配属先の広がり | 入社時の条件交渉+入社後の昇給 |
| エージェントの役割 | 条件の確認・入社後の見通しの共有 | 条件交渉の代行またはサポート |
未経験の方は、入社時の年収で勝負するのではなく、入社後に、経験と資格で年収を上げていく道筋を見て選ぶことが大切です。運用・監視から構築・設計に進む道筋は、運用・監視から構築・設計へ進む方法で解説しています。
dodaの「平均年収ランキング2025」(集計期間:2024年9月〜2025年8月)では、IT関連の職種の平均年収は、次のようになっています。個別の年収を保証するものではなく、あくまで目安です。
| 職種 | 平均年収 |
|---|---|
| セキュリティエンジニア | 497万円 |
| サーバーエンジニア | 469万円 |
| ネットワークエンジニア | 455万円 |
| 運用/監視/保守 | 389万円 |
| ヘルプデスク | 362万円 |
出典:doda「平均年収ランキング2025」。技術系全体の平均は469万円、全体の平均は429万円です。経験・スキル・企業によって、年収は大きく異なります。
面接や、エージェントとの面談で、希望年収を聞かれる場面があります。ポイントは、求人票の条件と、かけ離れた金額を言わないことです。
| 状況 | 答え方のポイント |
|---|---|
| 未経験・求人票に年収が明記されている | 「御社の規定に従います」と答える。一日も早く貢献することが最優先、と添える |
| 経験者・年収に幅がある求人 | 現年収と、希望の幅(下限〜上限)を、根拠とともに伝える |
| 現年収より下がる場合 | 入社後の昇給・成長の見通しを確認し、納得できるかを自分で判断する |
⚠ 注意
「できるだけ高く」「いくらでも構いません」と答えるのは、どちらも避けましょう。根拠のない高い金額も、なげやりな回答も、評価を下げることがあります。
STEP1
内定・条件の確認
労働条件通知書などで、提示条件を確認
STEP2
希望を整理
希望額と、その根拠を整理する
STEP3
エージェントに相談
条件の交渉を、エージェント経由で依頼
STEP4
企業の回答を待つ
期限内に、回答を確認する
STEP5
承諾・辞退
条件に納得できたら承諾。難しければ、早めに辞退
内定の承諾期限は3〜5日と短い企業も多いため、内定が出る前に、希望の条件と根拠を整理しておくとスムーズです。交渉は、承諾の返事を出す前に行います。承諾したあとに、条件を変えることは難しくなります。
| 使える根拠 | 使えない根拠 |
|---|---|
| 現在の年収(源泉徴収票などで確認できる実績) | 「生活が苦しいから」など、個人的な事情 |
| 業務に直結する資格(AWS、CCNPなど) | 「友人がもっともらっているから」という比較 |
| 経験年数・担当した業務の範囲・実績 | 根拠のない「このくらいほしい」という希望額 |
| 他社の選考状況・提示条件(事実の範囲で) | 事実と異なる、他社の条件や実績の誇張 |
交渉が難しい場合でも、理由を聞いておくと、入社後の昇給の見通しや、次の転職の参考になります。
| 項目 | 確認すること |
|---|---|
| 固定残業代 | 年収に、何時間分の固定残業代が含まれているか。超過分は支給されるか |
| 賞与 | 支給の有無、回数、評価との関係、入社初年度の扱い |
| 各種手当 | 資格手当、通勤手当、住宅手当、夜勤手当など |
| 試用期間 | 期間の長さ、その間の給与・条件が変わるか |
| 入社日 | 引き継ぎ期間を考慮した、現実的な入社日 |
| 研修・資格支援 | 研修の内容、受験費用の補助、学習時間の確保 |
| 配属・業務 | 入社後に担当する業務、配属の希望の聞かれ方 |
労働基準法15条により、企業は労働者に対して、賃金や労働時間などの労働条件を明示する必要があります。内定後は、労働条件通知書を、必ず書面で確認し、口頭の説明と食い違いがないか確認しましょう。
条件面は、内定後に確認するのが一般的です。聞きにくいと感じても、入社後のミスマッチを防ぐために、必要な質問です。エージェント経由で確認すると、角が立ちません。
| 質問 | 確認する理由 |
|---|---|
| 年収の内訳(基本給・固定残業代・手当)を教えてください | 「額面は高いが、固定残業代が大きい」という場合があるため |
| 固定残業代は何時間分で、超過分は支給されますか | 実際の働き方と、収入の関係を知るため |
| 賞与の支給実績と、初年度の扱いを教えてください | 年収に占める賞与の割合を把握するため |
| 昇給の時期と、評価の基準を教えてください | 入社後の年収の伸びを見通すため |
| 資格手当の対象となる資格と、金額を教えてください | 学習の目標と、収入の関係を把握するため |
| 試用期間の長さと、その間の条件を教えてください | 試用期間中の給与や待遇が違う場合があるため |
| 夜勤・シフトの頻度と、夜勤手当を教えてください | 働き方と収入の両面を把握するため |
| 入社後の研修内容と、資格受験費用の補助はありますか | 成長のための支援を確認するため |
| 入社後、最初に配属される業務と、その後の道筋を教えてください | キャリアパスの実態を知るため |
| 入社日は、いつまで調整できますか | 現職の引き継ぎ期間を確保するため |
複数の内定が出た場合は、年収だけでなく、自分の転職の軸に立ち返って比較します。次の表のように、軸ごとに点数をつけると、判断しやすくなります。
| 比較の軸 | A社 | B社 | C社 |
|---|---|---|---|
| 入社時の年収(固定残業代を除く) | 〇 | △ | 〇 |
| 昇給・資格手当の仕組み | △ | 〇 | 〇 |
| 研修・学習支援 | 〇 | 〇 | △ |
| 構築・設計へ進める実績 | △ | 〇 | 〇 |
| 働き方(夜勤・残業・勤務地) | 〇 | △ | 〇 |
| 社風・チームの雰囲気(面接での印象) | 〇 | 〇 | △ |
「入社時の年収だけが一番高い」会社が、必ずしも最適とは限りません。5年後・10年後の姿から逆算して、「成長できる環境」「昇給の見通し」「自分の軸に合う働き方」を総合して選びましょう。
エージェントを通さず、企業の担当者と直接条件を話す場面もあります。そのときの会話の例です(架空)。
会話では、要望を伝えたあとに、「難しい場合の代替(昇給時期の確認など)」も聞くと、建設的な話し合いになります。「ダメなら辞退します」といった言い方は、避けたほうが賢明です。
| 分野 | 資格の例 | 役立つ場面 |
|---|---|---|
| ネットワーク | CCNA、CCNP | ネットワークの運用・構築の業務。資格手当の対象になる会社もある |
| サーバー | LPIC、LinuC | Linuxサーバーの構築・運用 |
| クラウド | AWS ソリューションアーキテクト アソシエイト、Azure AZ-104 | クラウドの構築・設計。需要が増えている分野 |
| セキュリティ | 情報処理安全確保支援士など | セキュリティ関連の業務。平均年収が高い傾向 |
資格手当の有無や金額は、会社によって異なります。資格の選び方はIT資格のロードマップが参考になります。
現年収を聞かれたとき、人によって「額面」「手取り」「残業代の有無」の認識がばらばらになりがちです。次の点を整理して、源泉徴収票など、確認できる数字で伝えるのが基本です。
| 項目 | 意味 | 伝え方 |
|---|---|---|
| 額面年収 | 税金・社会保険料を引く前の年間の収入(賞与・各種手当を含む) | 基本は、額面で伝える。源泉徴収票の「支払金額」で確認できる |
| 手取り年収 | 税金・社会保険料を引いた後の金額 | 求められない限り、手取りは伝えない(比較しづらくなる) |
| 残業代 | 時間外労働に対する賃金 | 含めるかを、先に明確にする。「残業代込みで〇〇万円」と伝える |
伝える数字は、実際より高く言わないことが大切です。入社後に提出する書類(源泉徴収票など)で、事実が確認されることもあります。
交渉できるかどうかは、「自分に力があるか」だけでなく、企業の制度・採用の枠組みにも左右されます。難しいと感じたときも、自信をなくす必要はありません。
伝えなくても進められることもありますが、経験者の条件交渉では、現年収が重要な基準になります。伝えたくない場合は、理由を添えて、希望の年収の幅だけを伝える方法もあります。エージェントに相談して、伝え方を決めましょう。
承諾前であれば、他社の状況も踏まえて、エージェントに相談できます。ただし、承諾したあとで、他社を理由に条件を変えることは、信頼を損なう可能性があります。迷っている段階で、早めに状況を共有しましょう。
一概には言えません。未経験からの転職では、入社時の年収が前職より低くなることもありますが、資格取得や担当範囲の拡大で、数年後に上がる道筋があるかを確認することが大切です。自社集計では、インフラ分野で入社した170名のうち、年収が上がった方が60%でした(2025年8月〜2026年7月入社)。
エージェントは、求職者の希望や経歴に合う求人を紹介します。年収の高さだけでなく、成長できる環境や、長く働ける条件も含めて提案してくれるかが、誠実さの目安です。面談で、「なぜその求人なのか」を毎回確認しましょう。
✔ ポイント
交渉の結果がどうであっても、最終的に判断する基準は「5年後に、自分が成長しているか」です。年収・研修・昇給・配属・働き方を総合して、納得できる条件を選びましょう。迷ったときは、条件を書き出して、エージェントと一緒に整理するのがおすすめです。
未経験からのIT転職では、入社時の年収が前職と近い、またはやや下がることもあります。判断のポイントは、「いま」ではなく、「3年後、5年後にどうなっているか」です。
| 時期 | 年収を上げる主な要因 |
|---|---|
| 入社後1年 | 業務に慣れ、評価・昇給の対象になる。資格手当の対象となる資格を取得する |
| 2〜3年目 | 運用から、保守・障害対応など、担当範囲を広げる。上位資格を取得する |
| 3年目以降 | 構築・設計に進む。キャリアアップの転職、または社内での昇格 |
入社先を選ぶときは、「入社時の年収」だけでなく、「資格手当」「昇給の実績」「構築・設計へ進んだ人の実績」を確認しましょう。
面接の中で聞かれる希望年収の答え方は、未経験IT転職の面接でよく聞かれる質問と答え方の「Q10」でも紹介しています。在職中の内定後の動きはIT転職は在職中と退職後のどちらがよい?も参考にしてください。
✅ 年収交渉のチェックリスト
キャリアカンパニーでは、内定後の条件面(年収・入社時期など)の確認や交渉を、エージェントがサポートしています。未経験の方は入社時の年収が決まっていることが多いため、入社後の昇給や、運用から構築へ進む道筋を含めて、一緒に考えています。
次にやること
あわせて読みたい:IT転職は在職中と退職後のどちらがよい?メリットと進め方
インフラ職の転職実績です。キャリアカンパニーで2025年8月〜2026年7月に入社が決まった201名の集計です。
出典:キャリアカンパニー自社集計(2025年8月〜2026年7月に入社が決まったインフラ職170名。年収は中央値)
| 項目 | 結果 |
|---|---|
| 前職がIT以外だった方の割合(全体201名) | 90% |
| インフラ職で入社した方(170名)の入社時年収(中央値) | 320万円(転職前は300万円) |
| インフラ職で年収が上がった方の割合 | 60% |
| 面談から内定までの期間(中央値) | 40日 |
※自社集計(2025年8月〜2026年7月に入社が決まった方。定着率は、入社後1年以内に退職しなかった方の割合(201名が対象))。年収は中央値で、個人が特定されない形で集計しています。
内定が出て、条件が提示された段階で行うのが一般的です。エージェントを通じて、希望と根拠を伝えます。
できますが、未経験の場合は、前職の年収より上がらないこともあります。年収だけでなく、入社後の成長や昇給の見通しも含めて判断しましょう。
自分で言いにくい点を、整理して企業に伝えてもらえる場合があります。希望と根拠を、事前に共有しておきましょう。
業務内容、配属先、残業・夜勤の有無、研修、資格取得支援、昇給・評価制度などです。入社後のミスマッチを避けるために、書面で確認しましょう。
doda「平均年収ランキング」や、厚生労働省の職業情報提供サイト(job tag)などで、職種別の目安を確認できます。
複数の内定が出たときの比べ方は、IT転職の内定が複数出たときの選び方もご覧ください。
この記事の内容をふまえて、自分の場合はどうなのかを知りたい方は、キャリアカンパニーの無料相談をご利用ください。経験や希望に合わせて、キャリアアドバイザーがご相談に対応します。
アドバイザー
百瀬将悟
大学卒業後、不動産会社に入社。その後、求人広告営業・キャリアアドバイザーを経験。現在は両面型のアドバイザーとIT企業の採用コンサルティングに従事。
採用と転職市場の両方を理解している点を強みとし、「市場価値を高めながら活躍できるエンジニア」になるためのを転職サポート。