
IT転職で複数の内定が出たときは、「年収」だけでなく、仕事内容・成長・働き方・会社の将来性を、同じ基準で比べて決めます。回答の期限は、1週間ほどが多いため、決め方の手順を、先に用意しておくことが大切です。この記事では、複数内定を比べる軸、労働条件通知書の確認ポイント、点数表の作り方、内定の保留・辞退・現職への退職の伝え方(例文つき)を、IT転職の視点で整理しました。当社は、採用コンサルティングで、エンジニア採用をする会社の面接官も担当しており、企業側の事情も踏まえてお伝えします。
この記事のポイント
「内定が複数出たら、どうすればよいのか」という悩みは、転職活動の終盤で、多くの方が経験します。当社の自社集計(2025年8月〜2026年7月入社の201名)では、応募数の平均は5社、内定数の平均は4社でした。応募先を絞って面接を受けても、複数の内定が出ることは、珍しくありません。
複数の内定が出るのは、喜ばしいことですが、同時に、「どの会社を選ぶか」という、大きな決断が必要になります。ここでの判断を誤ると、入社後のミスマッチにつながります。この章以降で、考え方と手順を、順に整理します。
内定の回答期限は、1週間ほどに設定されることが多く、会社によっては、延ばしてもらえても、2週間ほどです(当社の面談での目安です)。そのため、1社だけ先に内定が出て、志望度の高い他社の選考が、間に合わなくなる、という状況が起こりえます。
複数の会社を受ける場合は、面接を、同じ時期にまとめて進めるのが、おすすめです。目安として、面接を受ける会社は、4〜5社ほどに絞ります。興味のある会社だけに絞ると、日程の調整がしやすく、1社ごとの準備にも、時間をかけられます。
| 入社したい時期 | 面接を始める目安 | 考え方 |
|---|---|---|
| 1月入社 | 11月の頭ごろから | 10月に、求人と方向性を考え、11月に面接をまとめて進める |
| 4月入社 | 1月〜2月ごろから | 年末年始をはさむため、早めに書類を準備する |
| できるだけ早く | 登録後、すぐ | 現職の退職日程も、あわせて確認する |
スケジュールが読めない場合は、転職エージェントに、「他社の選考状況」を共有し、面接日程の調整や、回答期限の相談を、お願いすることもできます。
複数の内定を比べるときは、気になる点を、思いつくままに挙げるのではなく、同じ軸で、整理して比べます。次の7つの軸が、基本です。
| 軸 | 確認する内容 | 見落としやすい点 |
|---|---|---|
| ①仕事内容・経験できる工程 | 運用・保守・構築・設計・開発など、担当する工程。配属先の想定 | 「入社後に決まる」とされ、希望と違う配属になる場合がある |
| ②年収・給与の中身 | 基本給・手当・賞与の内訳。固定残業代の有無と時間 | 年収の総額が高くても、固定残業代が大きく含まれている場合がある |
| ③働き方 | 勤務時間・夜勤・シフト・休日・リモートの可否 | 夜勤や平日休みへの抵抗の有無。通勤時間 |
| ④会社の規模・商流 | 会社の規模、設立からの年数、取引の構造(商流の深さ) | 商流が深いと、単価と給与が上がりにくい傾向がある |
| ⑤育成体制 | 研修、資格取得の支援、先輩のサポート | 制度が「ある」ことと、実際に使われていることは別 |
| ⑥評価・昇給 | 評価の基準、面談の頻度、昇給の実績 | 「頑張り次第」と言われ、基準が見えない |
| ⑦人・雰囲気 | 面接官・現場の社員の印象、チームの人数 | 面接で会えなかった人が、実際の配属先の上司になる場合がある |
どの軸を重視するかは、人によって異なります。「何を優先したいか」を、先に決めておくと、迷いにくくなります。
年収は、比べやすい数字ですが、総額だけで判断すると、入社後に、想定と違う、ということが起こります。確認したいのは、次の3点です。
固定残業代(みなし残業代)を採用している求人は、募集の段階で、「金額・時間数」「固定残業代を除いた基本給の額」「固定残業時間を超える分を追加で支払う旨」の3点を、明示することが求められています(厚生労働省の指針・職業安定法)。内定時の書類で、この3点が、はっきり書かれているかを、確認してください。
参考までに、当社の自社集計(2025年8月〜2026年7月入社)では、インフラ職に入社した170名の、入社時の年収の中央値は320万円で、転職前の中央値は300万円でした。年収が上がった方は、60%です。ただし、これは、入社時点の数字であり、業界全体の傾向を示すものではありません。入社後の成長や昇給まで含めて、比べることが大切です。
給与の交渉については、IT転職の年収交渉の進め方で、詳しく解説しています。
労働基準法15条により、会社は、労働契約を結ぶときに、賃金や労働時間などの労働条件を、明示しなければなりません。内定が出たら、口頭の説明だけでなく、書面(労働条件通知書や、雇用契約書)で、内容を確認します。
労働条件通知書のチェックリスト
| 軸(重視度) | A社 | B社 | C社 |
|---|---|---|---|
| 仕事内容・経験できる工程(重視度:高) | 4 | 5 | 3 |
| 年収・給与の中身(重視度:中) | 3 | 4 | 5 |
| 働き方(重視度:高) | 5 | 3 | 4 |
| 育成体制(重視度:高) | 5 | 4 | 2 |
| 評価・昇給(重視度:中) | 3 | 3 | 4 |
点数は、あくまで、整理のための道具です。合計点が高い会社が、必ずしも正解とは限りません。点数をつけたあとに、「自分は、どの会社で働く姿を、一番イメージできるか」を、あわせて確かめてみてください。
内定後は、入社前の、最後の確認のチャンスです。疑問は、このタイミングで、解消しておきます。質問は、「条件の確認」のためであり、失礼にはあたりません。
| 確認したいこと | 質問の例 |
|---|---|
| 配属 | 「入社後の配属先は、どのように決まりますか。現時点で、想定されている部署や業務を、教えてください」 |
| 育成 | 「入社後の研修は、どのような内容と期間ですか。資格取得の支援制度は、実際に、どのくらい利用されていますか」 |
| 働き方 | 「配属予定のチームの、平均的な残業時間や、夜勤・シフトの状況を教えてください」 |
| 評価 | 「評価は、どのような基準で、年に何回行われますか。昇給の実績も、教えてください」 |
| 先輩社員 | 「同じ職種で入社された方に、お話をうかがう機会はありますか」 |
質問の仕方は、面接の最後の質問と、共通する部分が多くあります。IT転職の逆質問|質問30選とNG例も、参考にしてください。
他社の結果を待ちたい、条件を整理したい、といった場合は、回答期限の延長を、お願いすることができます。ポイントは、「早く」「理由を正直に」「いつまでに回答できるか」を、具体的に伝えることです。
保留・期限延長のメール例(書き方の例)
件名: 内定のご連絡へのお礼と、お返事のお願い(氏名)
○○株式会社 採用ご担当者様
このたびは、内定のご連絡をいただき、誠にありがとうございます。貴社で働けることを、大変うれしく思っております。
大変恐縮ですが、現在、ほかにも選考が進んでいる企業があり、慎重に検討したく存じます。つきましては、お返事の期限を、○月○日(○)まで、延ばしていただくことは可能でしょうか。
お手数をおかけしますが、ご検討のほど、よろしくお願い申し上げます。
複数の内定のうち、入社しない会社には、辞退の連絡をします。辞退は、会社にとっては、採用計画に影響する連絡です。次の点を、守ってください。
内定辞退のメール例(書き方の例)
件名: 内定辞退のご連絡(氏名)
○○株式会社 採用ご担当者様
このたびは、内定のご連絡をいただき、誠にありがとうございました。
慎重に検討を重ねた結果、このたびは、内定を辞退させていただくことといたしました。
お時間をいただいたにもかかわらず、このようなご連絡となり、誠に申し訳ございません。
末筆ながら、貴社のますますのご発展をお祈り申し上げます。
入社する会社が決まったら、現職に、退職を伝えます。民法627条では、期間の定めのない雇用の場合、退職の申し入れから2週間で、雇用が終了すると定められています。ただし、実際には、就業規則に、「1か月前までに申し出る」などの定めがある場合が多く、引き継ぎの期間も必要です。
在職中に、転職活動を進めるか、退職してから進めるかについては、IT転職は在職中と退職後のどちらがよい?で解説しています。
| NGの行動 | なぜ避けるか | 代わりに |
|---|---|---|
| 返事を、放置する | 会社の採用計画に影響し、信頼を損なう | 期限内に、必ず連絡する。難しければ、早めに相談する |
| 他社の内定を、条件に、強く引き合いに出す | 交渉が不自然になり、印象が下がる場合がある | 条件の希望は、事実を、丁寧に伝える |
| 年収だけで、決める | 入社後に、仕事内容や、働き方で、ミスマッチが起こりやすい | 7つの軸で、総合的に比べる |
| 条件を、書面で確認しない | 入社後に、「聞いていた話と違う」となりやすい | 労働条件通知書で、内容を確認する |
| エージェントに、状況を隠す | 日程調整や、条件交渉の支援が、受けにくくなる | 他社の選考状況を、正直に共有する |
転職エージェントを利用している場合は、条件の確認や、回答期限の相談を、エージェントを通して、行うことができます。企業に直接は聞きづらい、給与の内訳や、残業の実態、配属の想定なども、エージェントが、企業の人事に確認し、伝えてくれる場合があります。
当社では、企業の人事・役員に、直接ヒアリングしており、各社の状況を、踏まえた助言ができます。内定後も、1か月・3か月の面談で、状況を確認しています。入社後1年以内の定着率は、98%です(2025年8月〜2026年7月入社の201名が対象、自社集計)。内定が複数出て、迷っている方は、比べる軸の整理から、一緒に行いますので、お気軽にご相談ください。
複数内定の実際の事例は、複数内定から選んだ事例を、あわせてご覧ください。
点数をつけても、決めきれない場合があります。そのときは、「3年後に、どうなっていたいか」から、逆算して考えると、整理しやすくなります。当社の面談では、キャリアの順番について、次のようにお伝えしています。
「今の年収」より、「3年後に、どんな経験を持っているか」を、基準にすると、判断の軸がぶれにくくなります。
条件が、ほぼ同じに見えるときは、次の点が、決め手になりやすい傾向があります。
数字や制度に表れにくい部分ですが、入社後に、毎日接するのは、「人」と「仕事」です。最後は、自分の感覚も、大切にしてください。
決断前の最終チェックリスト
1週間ほどが多く、会社によっては、延ばしてもらえても2週間ほどです(当社の面談での目安)。期限は、会社ごとに異なるため、内定の連絡を受けたときに、必ず確認してください。
失礼にはあたりません。早めに、理由を正直に伝え、いつまでに回答できるかを、具体的にお願いすれば、応じてもらえる場合があります。ただし、応じるかどうかは会社によります。
年収は重要な要素ですが、内訳(固定残業代の有無)や、伸び方、仕事内容、働き方もあわせて、比べることをおすすめします。入社後のミスマッチを、減らせます。
会社への影響が大きくなるため、慎重に判断してください。迷いがあるときは、承諾の前に、保留や質問で、不安を解消することをおすすめします。辞退する場合は、できるだけ早く、誠実に連絡します。
メールでも、構いませんが、電話で伝える方が、丁寧と受け取られる場合があります。エージェント経由の場合は、まずエージェントに相談し、連絡の方法を決めます。
内定の内容を、書面で受け取り、入社する会社を決めてから、伝えます。就業規則で、退職の申し出の期限が定められている場合が多いため、事前に確認し、引き継ぎの期間も含めて、入社日を調整します。
面接の準備は、面接の自己紹介(1分の例文つき)と、面接でよく聞かれる質問と答えで解説しています。会社選びで失敗したくない方は、ブラックなIT企業の見分け方も、あわせてご覧ください。
アドバイザー
百瀬将悟
大学卒業後、不動産会社に入社。その後、求人広告営業・キャリアアドバイザーを経験。現在は両面型のアドバイザーとIT企業の採用コンサルティングに従事。
採用と転職市場の両方を理解している点を強みとし、「市場価値を高めながら活躍できるエンジニア」になるためのを転職サポート。