
システムアーキテクト試験とは?難易度・合格率・試験方式と、インフラ・開発エンジニアのキャリアでの位置づけ
システムアーキテクト試験(略号:SA)は、IPA(情報処理推進機構)が実施する国家試験で、システムの要件定義や設計を主導する人を対象にした高度試験です。令和7年度春期の合格率は15.5%、合格者の平均年齢は36.8歳でした(IPA公表)。
この記事では、試験の中身と難易度に加えて、インフラ・開発エンジニアのキャリアの中で、この試験がどこに位置するのかを、転職支援の立場から整理します。
システムアーキテクト試験は、「情報処理技術者試験」の一つで、応用情報技術者試験より上のレベルにある高度試験に分類されます。
IPAは、対象者像を「高度IT人材として確立した専門分野をもち、ITストラテジストによる提案を受けて」システム開発に必要な要件を定義し、設計や開発を主導する人としています。つまり、会社の戦略をもとに「どんなシステムを、どんな構成で作るか」を決める立場の人を想定した試験です。
IPAが示している業務と役割を、わかりやすく言い換えると次のとおりです。
| IPAが示す役割(要旨) | わかりやすく言うと |
|---|---|
| 情報システム戦略を具体化するための構造設計 | 会社の方針を、システム全体の形に落とし込む |
| 開発に必要な要件の分析・整理・取りまとめ | 利用部門の要望を聞き、何を作るかを決める |
| 最適なシステム方式の設計(情報セキュリティの確保を含む) | サーバー・ネットワーク・ソフトの組み合わせ方を決める |
| ソフトウェアの設計・開発、テスト、運用、保守の検討 | 作ったあとの運用や保守まで見通して設計する |
| 対象システムとその効果の評価 | 完成したシステムが、目的どおりの効果を出しているかを確かめる |
ポイントは、技術の知識だけでなく、業務の理解が求められることです。IPAは期待する技術水準として、業務をモデル化する力や、業種ごとの慣行への知見、運用や投資効果の評価なども挙げています。OS、データベース、ネットワーク、セキュリティといった基本的な技術の知見も含まれます。
求人や職種名でも「システムアーキテクト」「アーキテクト」という言葉が使われます。一般には、システム全体の構成を考え、設計の方針を決める役割を指します。試験の対象者像もこれに近く、上流工程(要件定義・基本設計)を中心に担う人の試験と考えるとわかりやすいでしょう。上流工程・下流工程の違いは、IT業界の上流工程・下流工程とはで解説しています。
2026年度(令和8年度)から、応用情報技術者試験と高度試験はCBT方式(試験会場のパソコンで解答する方式)に変わりました。システムアーキテクト試験は前期のみの実施です。
| 科目 | 試験時間 | 出題形式と問題数 |
|---|---|---|
| 科目A-1 | 50分 | 四肢択一・30問(すべて解答) |
| 科目A-2 | 40分 | 四肢択一・25問(すべて解答) |
| 科目B-1 | 90分 | 記述式・3問から2問を解答 |
| 科目B-2 | 120分 | 論述式・2問から1問を解答 |
科目A-1とA-2の間、B-1とB-2の間には、それぞれ10分の休憩があります。科目名は「午前Ⅰ・午前Ⅱ・午後Ⅰ・午後Ⅱ」から「科目A-1・A-2・B-1・B-2」に変わりましたが、IPAは、問う知識・技能の範囲や配点、合格基準は変わらないとしています。
この記事を書いている2026年11月4日の時点で、2026年度の申込受付はすでに終わっています。
IPAは、現行の試験制度を2026年度の試験実施をもって終了し、2027年度から新しい試験制度に移行する予定としています。新しい制度では、現在の応用情報技術者試験と高度試験をまとめて内容を再編し、「マネジメント領域」「データ・AI領域」「システム領域」の三つの試験区分を設けるとしています。
新設予定の「プロフェッショナルデジタルスキル(システム)試験」は、システムの要件定義・アーキテクチャ設計・開発・運用を主導する知識と技能を評価する試験と説明されています。システムアーキテクト試験の役割と重なる部分がありますが、IPAの公開資料では、システムアーキテクト試験の後継がどれかは明記されていません。これから目指す方は、IPAの「試験制度の見直しについて」のページで、新しい試験区分・シラバス・サンプル問題を確認しましょう。
| 試験区分 | 合格率 | 合格者の平均年齢 |
|---|---|---|
| システムアーキテクト試験 | 15.5% | 36.8歳 |
| ITストラテジスト試験 | 15.0% | 40.4歳 |
| ネットワークスペシャリスト試験 | 17.8% | 34.1歳 |
| 情報処理安全確保支援士試験 | 19.0% | 35.0歳 |
(IPA公表。令和7年度春期)
システムアーキテクト試験は、応募者6,021人、受験者3,963人、合格者616人でした。合格者の平均年齢は36.8歳で、IT業界で十分な経験を積んだ人が受けている試験だと読み取れます。
| 科目 | 配点 | 基準点 |
|---|---|---|
| 科目A-1 | 100点満点 | 60点 |
| 科目A-2 | 100点満点 | 60点 |
| 科目B-1 | 100点満点 | 60点 |
| 科目B-2(論述式) | 評価ランク | ランクA |
すべての科目が基準点以上で合格です。科目B-2の論述式は点数ではなく、A〜Dの4段階で評価され、「合格水準にある」とされるランクAだけが合格です。ランクBは「合格水準まであと一歩」で不合格になります。
また、高度試験は多段階選抜方式です。科目A-1・A-2が基準点に届かないと科目B-1・B-2は採点されず、科目B-1が基準点に届かないと科目B-2は採点されません。
高度試験には、それぞれ得意分野があります。システムアーキテクト試験とよく比べられる試験との違いを整理します。
| 試験区分 | 中心になるテーマ | 向いている人の例 |
|---|---|---|
| システムアーキテクト(SA) | システム全体の要件定義と設計 | 設計の方針を決める立場を目指すSE |
| プロジェクトマネージャ(PM) | プロジェクトの計画と管理 | チームや進め方を管理する立場を目指す人 |
| ネットワークスペシャリスト(NW) | ネットワークの設計・構築 | ネットワークの専門性を高めたいインフラエンジニア |
| データベーススペシャリスト(DB) | データベースの設計・運用 | データを扱う設計に強くなりたい人 |
| 情報処理安全確保支援士(SC) | 情報セキュリティ | セキュリティの専門職を目指す人 |
SAは特定の技術を深く掘るよりも、業務と技術をつないでシステム全体を設計することに重きを置いた試験です。一方、NWやDBは一つの技術分野の専門性を示す試験です。インフラエンジニアで、ネットワークを専門に深めたい方はネットワークスペシャリスト試験、データベースを専門にしたい方はデータベーススペシャリスト試験のほうが、日々の仕事と結びつけやすいでしょう。
プロジェクトを率いる立場を目指す方はプロジェクトマネージャ試験、セキュリティの専門職を目指す方は情報処理安全確保支援士試験も参考にしてください。
なお、応用情報技術者試験に合格すると、その後2年間は、高度試験と情報処理安全確保支援士試験の科目A-1が免除されます(IPA「科目A-1試験免除」)。2027年度からの新試験でも、同じような免除制度や経過措置が検討されています。
当社は、未経験からインフラエンジニアを目指す方の転職を多く支援しています。その立場から、システムアーキテクト試験は、未経験の方がすぐに目指す資格ではないと考えています。
理由は、試験が「要件定義や設計を主導する人」を対象にしていて、論述式では実務の経験をもとに書くことが求められるからです。IT業界に入る前の段階では、まず仕事を始めるために必要な基礎知識と、入社後の現場経験を優先するほうが、キャリア全体では近道になります。
| 段階 | やること | 資格の例 |
|---|---|---|
| ① IT業界に入る前 | ITの基礎とインフラの基本を学ぶ | ITパスポート・CCNA・LinuC |
| ② 入社後1〜3年 | 運用・監視などの現場で経験を積む | 基本情報技術者 |
| ③ 構築・設計を担当するころ | 担当範囲を広げ、知識を体系的に整理する | 応用情報技術者・NW・DB |
| ④ 要件定義・設計を主導するころ | 上流工程の経験を論述できる形にする | システムアーキテクト(または新試験) |
あくまで一例で、どの段階で何を取るかは、担当する仕事や目指す方向によって変わります。未経験の方は、まずIT転職に有利な資格や基本情報技術者試験から考えるのが現実的です。
キャリアカンパニーの現場から|若手の方に勧めるタイミング
基本設計や詳細設計の経験を積み、要件定義やシステム全体の設計を目指す段階が目安です。
インフラエンジニアの多くは、運用・監視から仕事を始め、構築、設計へと担当を広げていきます。当社の紹介実績では、運用・監視の経験が3年以上あり資格も持っていた20名のうち19名が、入社後半年ほどで構築・設計を担当しています(当社の自社集計・参考値。資格の種類はSAに限りません)。
構築・設計を担当するようになると、利用部門の要望を聞いたり、システムの構成を決めたりする場面が増えます。そこで積んだ経験が、SAの論述の材料になります。運用・監視から上の工程に進む方法は、運用・監視から構築・設計へで詳しく解説しています。
ここでは一般的な進め方を紹介します。学習時間の目安は、IPAからは公表されていません。経験や得意分野によって大きく変わります。
| 科目 | 主な対策 |
|---|---|
| 科目A-1・A-2 | IPAが公開している過去問題を繰り返し解き、出題の傾向と用語に慣れる |
| 科目B-1(記述式) | 事例を読み、設問に沿って短く答える練習をする。時間を計って解く |
| 科目B-2(論述式) | 自分の経験を整理し、設問に沿った構成で書く練習を重ねる |
試験画面にはメモ機能と電卓機能があり、試験室ではメモ用紙1枚と筆記用具が配られます。持参した筆記用具やキーボードは使えません(IPA案内)。論述式も画面で解答するため、パソコンで長い文章を書くことに慣れておくと安心です。ただし、2027年度からは新しい試験制度に移る予定のため、出題形式や科目は新制度の案内で確認してください。
SAは、上流工程を担う力を客観的に示せる資格です。次のような場面では、評価につながる可能性があります。
| 状況 | 伝えられること |
|---|---|
| 構築・設計から、要件定義に関わる仕事に進みたい | 設計を主導するための知識を体系的に身につけていること |
| SIerや社内SEで、上流工程のポジションに応募する | 業務と技術の両方を理解して、システム全体を考えられること |
| 開発やインフラの経験を、設計の仕事に広げたい | 一つの技術にとどまらない、全体を見る視点 |
ただし、資格だけで評価が決まるわけではありません。応募先は、実際にどんなシステムで、どの工程を、どの立場で担当してきたかをあわせて見ています。資格があっても、実務の説明が具体的でなければ評価につながりにくいでしょう。
キャリアカンパニーの現場から|合格者の転職での評価
システムの設計や要件定義に関する高度な知識の証明として評価されます。ただし、選考では実務経験が重視されます。
SAを持っていても、持っていなくても、上流工程の経験は面接で問われます。伝えるときは、次の点を整理しておきましょう。
職務経歴書での書き方はIT転職の職務経歴書、面接でよく聞かれる質問はインフラエンジニアの面接の質問で解説しています。
キャリアカンパニーの現場から|上流工程の経験の伝え方
担当した工程だけでなく、お客様の課題、自分の役割、提案した内容、工夫した点、成果を具体的に説明するよう助言しています。
上流工程を目指すキャリアを相談したい方へ
いまの経験と目指す仕事をお聞きして、次に積むべき経験と資格、応募を始めるタイミングを、キャリアアドバイザーと一緒に整理できます(オンライン・60分)。
日程を選んで無料相談を予約する令和7年度春期は、受験者3,963人のうち616人が合格し、合格率は15.5%でした。合格者の平均年齢は36.8歳です(IPA公表)。
科目A-1・A-2・B-1は、それぞれ100点満点中60点以上が基準です。科目B-2の論述式はA〜Dの4段階で評価され、ランクAが合格です。すべての科目が基準を満たすと合格になります。
CBT方式で前期に実施されます。科目A-1・A-2は2026年10月17日〜10月27日、科目B-1・B-2は11月11日〜11月23日の期間に行われ、合格発表は2027年2月頃の予定です。申込受付は10月24日で終わっています。
7,500円(税込)です。
IPAは、現行の試験制度を2026年度の試験で終了し、2027年度から新しい試験制度に移る予定としています。新制度では「マネジメント領域」「データ・AI領域」「システム領域」の三つの試験区分を設けるとしていますが、システムアーキテクト試験の後継がどれかは明記されていません。最新の情報は、IPAの「試験制度の見直しについて」のページで確認してください。
受験資格の制限はありません。ただし、論述式では実務の経験をもとに書くことが求められるため、未経験の方がすぐに目指す試験ではないと当社では考えています。まずは基本情報や応用情報、CCNA・LinuCなどで土台をつくり、現場で経験を積む順番がおすすめです。
上流工程を担う力を示せるため、評価につながる可能性があります。ただし、資格だけで決まるわけではなく、どの工程をどの立場で担当してきたかとあわせて伝えることが大切です。
インフラエンジニアとしてのキャリア全体は、未経験からのインフラエンジニア転職ガイドでまとめています。
出典・公式情報(確認日:2026年11月4日):IPA「システムアーキテクト試験」(対象者像・業務と役割・期待する技術水準・科目構成と試験時間・出題数)/「令和8年度 応用情報技術者試験、高度試験及び情報処理安全確保支援士試験の申込受付期間及び試験実施期間について」(前期・後期の区分、日程、受験手数料、休憩、CBTの注意点、合格発表の予定)/「令和7年度春期情報処理技術者試験(応用情報技術者試験、高度試験)及び情報処理安全確保支援士試験の合格発表について」(応募者数・受験者数・合格者数・合格率・合格者平均年齢)/令和8年度試験案内「採点方式・配点・合格基準」(基準点・論述式の評価ランク・多段階選抜方式)/「科目A-1試験免除」/「試験制度の見直しについて」「新試験制度の概要(2026年3月31日公表)」。当社の数字は、2025年8月〜2026年7月に入社した201名の紹介実績にもとづく自社集計で、業界全体の数字ではありません。学習時間の目安はIPAから公表されていないため記載していません。
株式会社エンデバース 代表取締役
キャリアカンパニー責任者
百瀬 将悟
大学卒業後、不動産会社に入社。その後、求人広告営業・キャリアアドバイザーを経験。現在は両面型のアドバイザーとIT企業の採用コンサルティングに従事。
採用と転職市場の両方を理解している点を強みとし、「市場価値を高めながら活躍できるエンジニア」になるためのを転職サポート。