
「未経験歓迎」のSES求人を見て、応募すべきか迷っていませんか?未経験からITエンジニアを目指すなら、SESは有力な入口です。ただし、どのSESでもよいわけではありません。研修内容・初回配属・商流・評価制度を見ずに入社すると、年収もスキルも伸びにくくなります。
この記事では、転職エージェントとして数多くの未経験者をサポートしてきた経験から、SES入社後のリアルな流れ、年収推移、ブラック企業の見分け方、面接で必ず確認すべきポイントまで徹底解説します。
この記事が向いている人
・20代で未経験からITエンジニアに転職したい人
・まずは実務経験を積みたい人
・ブラックSESを避けて、3〜5年で年収を上げた


「未経験からSESに転職して本当に大丈夫なのか?」
この疑問に結論からお答えします。SESは条件次第で未経験者にとって最適な選択になりますが、すべての人に向いているわけではありません。
そもそもSESとはどんな働き方なのか、基礎から確認したい方はSESの仕組みや派遣との違いを解説した記事もあわせてご覧ください。
IT業界未経験で実務経験を積みたい方、幅広い技術や業界を経験したい方、3〜5年後に転職やキャリアアップを考えている方には、SESは理想的な選択肢です。自社開発企業や大手SIerは即戦力を求める傾向が強く、未経験者の採用枠は限られています。一方、SES正社員として入社すれば、研修を通じてエンジニアとして成長できる環境が整っている企業が多数存在します。
案件ごとに異なる企業やプロジェクトに参画するため、金融、製造、通信など様々な業界のシステムに触れる機会があります。この経験は、将来的に自分の専門分野を見つける上で非常に有益です。
以下の項目に当てはまるものが3つ以上あれば、SESは適した選択肢です。
適性チェックリスト
未経験からSESに入社すると、どのような流れでキャリアが進むのでしょうか。企業によって研修内容や配属プロセスに大きな差があります。
優良企業では、2〜3ヶ月の体系的な研修を提供しています。インフラエンジニア志望なら、1ヶ月目にLinux基本操作やネットワーク基礎、2ヶ月目にサーバー構築演習、ビジネスマナーを学びます。講師は現役エンジニアが務め、質問対応も充実しています。
一方、ブラック企業では参考書を渡されて「自習してください」と言われるだけのケースや、研修が1週間程度でコールセンターや携帯ショップに派遣されるケースがあります。2030年には最大79万人のIT人材が不足すると試算されており、企業は未経験者の育成に力を入れる必要がありますが、助成金目当ての形だけの研修を行う企業も存在します。 (出典:経済産業省「IT人材需給に関する調査」)
未経験1年目では、運用監視、テスト、ヘルプデスク、保守などの案件から入ることが多いです。ここで重要なのは、業務名そのものより、どこまで担当範囲が広がるかです。
たとえば、監視だけでなく障害一次切り分けがある、手順書修正やジョブ作成補助がある、テスト実施だけでなくテスト設計補助がある案件は、1年後の職務経歴書で説明しやすい経験になります。逆に、単純監視のみ、IT要素の薄い問い合わせ対応のみ、教育担当不在の案件は伸びにくい傾向があります。
1年目は「何の案件か」より「何が積めるか」を見ましょう。 また、配属後は毎月、自分が「触った技術」「改善したこと」「説明したこと」をメモに残しておきましょう。
そのため、未経験からの初年度が300万円前後でスタートすること自体は珍しくありません。(出典:doda)。
一方で、3年目450万円、5年目500万円は、どの会社でも自動的に達成できる水準ではありません。現実的にこのラインを狙えるのは、次の条件がそろった場合です。
年収アップに必要な条件
求人を見るときは、初年度年収だけでなく、2〜3年後にどんな業務へ進めるかまで確認しましょう。


「SES やめとけ」という声には、確かな理由があります。ただし、すべてのSES企業が該当するわけではありません。各理由と具体的な対策を見ていきましょう。
多重下請け構造の末端に位置する企業では、月給が低めのケースもあります。
一次請けの比率を確認しましょう。初任給の水準も、他社と比べて確認することをおすすめします。
コールセンターや家電販売など、IT業務と無関係な現場に配属され、技術を学べないケースがあります。単純作業のみの現場では成長が止まってしまいます。
面接で「未経験者の配属実績を3つ教えてください」と具体的に質問し、IT業務以外への配属がないか確認しましょう。
「研修」と称してスマホ販売やコールセンターに配属され、数ヶ月経ってもITスキルがゼロのままというケースがあります。これは助成金目当ての大量採用企業に多いパターンです。
契約書で業務内容を明確に確認し、未経験者を月10名以上採用している企業は避けましょう。
元請けから三次請け、四次請けと下がるごとに中間マージンが発生し、エンジニアの給与が圧迫されます。例えば、元請けが月額100万円で受注しても、四次請けのエンジニアには月給30万円しか渡らないケースもあります。
「御社は何次請けですか?」と面接で直接質問し、一次請け・二次請けまでの企業を選びましょう。
本人の希望を聞かず一方的に配属を決める企業では、スキルアップできない現場に長期間配属されるリスクがあります。
キャリア面談の頻度(月1回以上が理想)と案件選定プロセスを確認し、待機期間の給与保証についても質問しましょう。


ブラック企業を避け、優良企業を見極めるための具体的なチェックポイントをご紹介します。
以下の項目に1つでも該当したら要注意、3つ以上ならブラック確定です。
ブラックSESのチェックリスト
優良企業には以下の共通点があります。
SES派遣ではなくSES正社員として安定した雇用形態で働ける企業を選ぶことも重要です。
雇用契約書で基本給と各種手当の内訳、みなし残業時間、賞与の計算方法、試用期間の条件を確認しましょう。待機期間の給与保証(労働基準法では60%以上)と待機発生の頻度も重要です。
OpenWorkや転職会議で直近1年以内の口コミを「研修」「配属先」「給与」のキーワードでチェックすることもおすすめします。

未経験からSESに入社した場合、3年間でどのようなキャリアを築けるのでしょうか。実例とともにご紹介します。

専門学校卒業後、構成作家として働いていた20代の方は、将来のキャリアに漠然とした不安を感じ、友人の勧めでITエンジニアを目指しました。
入社後はCCNA・LPIC-1を取得し、運用→構築と着実にステップアップ。2年後には構築メンバーのサブリーダーとしてマネジメント業務も担当するまでに成長しました。
その後、2年間で取得したAWSの資格を活かしてSIerへ転職。現在はAWS+オンプレのハイブリッド環境で設計・構築・テストを担当し、クラウド設計に従事しています。
業務内容は運用監視、テスト、ドキュメント作成が中心です。インフラ志望ならLinux基本操作、ネットワーク基礎、AWS入門を、開発志望ならJavaやPython、SQLといったプログラミング基礎を習得しましょう。
未経験からのスタートでは、まず基礎を固めることが最優先です。派手な技術よりも、毎日確実に業務をこなせる力を身につけることが、次のステップへの土台になります。
インフラ系では詳細設計補助や構築作業を担当し、インフラ設計、Terraform、Dockerなどの技術を習得します。開発系では詳細設計やコーディングを担当し、フレームワーク(SpringやDjango)やデータベース設計を学びます。
この方のように、2年目でサブリーダーとしてマネジメント経験を積めれば、次の転職で大きなアドバンテージになります。
次のキャリア選択肢として、大手SIer、自社開発企業、フリーランスがあります。
インフラエンジニアの場合は、この方のようにオンプレミスの経験を活かしつつクラウド領域へキャリアを広げることで、クラウドアーキテクトやDevOpsエンジニアへの道も開けます。開発エンジニアの場合はフルスタックエンジニアやテックリードへの道も開けます。
SESで培った幅広い経験は、次のステップで必ず活きてきます。

SES以外にも選択肢はありますが、未経験者にとっての現実的な難易度は異なります。
自社サービスやアプリケーションの開発に携わるため、企画段階から運用まで一貫して関われる魅力があります。
プログラミングスクール卒業生やポートフォリオがある方に向いていますが、未経験者には非常に狭き門です。書類選考で落ちることも多く、面接までたどり着くのが難しいのが現実です。ただし、入社できれば自社プロダクトに愛着を持って働ける環境が待っています。
SESより採用ハードルは高いものの、自社内勤務で上流工程に関われるメリットがあります。クライアントから依頼を受けてシステムを開発するため、要件定義から設計、開発、テストまで一連の流れを経験できます。
ただし、納期プレッシャーや残業が多い傾向があり、繁忙期には月40〜60時間の残業が発生することも珍しくありません。プロジェクトの責任を負う分、やりがいは大きいですが、体力的な負担も考慮する必要があります。
SIer(システムインテグレーター)は、企業の業務システムを提案・設計・構築する企業です。大手SIerは新卒採用が中心で、中途は経験者採用が主流です。
中小SIerであれば未経験者の採用もありますが、実態としてはSESと業務内容が重なる部分も多く、客先常駐型の働き方になるケースもあります。SIerとSESの境界線は曖昧で、企業によって働き方は大きく異なります。
IT業界の未経験採用の約9割がSES関連企業です。これは決してネガティブな意味ではなく、未経験者を受け入れる土壌がしっかり整っているということです。
「SESで経験を積む→3〜5年後に転職」が王道ルートとして確立しています。まずはSES正社員として実務経験を積み、資格を取得し、その後キャリアアップする道が最も現実的で確実な選択と言えます。
理想を追い求めて自社開発企業だけに絞ると、転職活動が長期化し、機会損失になる可能性もあります。まずは確実にIT業界に入り、実務経験を積むことを優先しましょう。

SESを選ぶときの、ブラック企業の見分け方は、こちらで解説しています。
▶ ブラックなIT企業の見分け方|求人票・面接・口コミで確認するポイントと質問例
SESの全体像はSESはやめとけ?、SESからの転職はSESから転職するには?、SESから自社開発への転職、会社選びはブラックなIT企業の見分け方で解説しています。

本当です。研修が短い、または実質なしの企業もあります。面接で研修内容と期間を必ず確認しましょう。
初年度の年収や月給は企業によって幅があります。求人票では、固定残業代の有無と時間数・昇給の実績・研修内容を確認し、条件が極端に有利な求人には注意しましょう。
SESは成果物納品義務がないため、平均15〜30時間/月と比較的少なめです。
入社時は不要ですが、基本情報技術者試験やLPIC-1またはCCNAの学習を開始しておくことを推奨します。資格は入社後の昇給やキャリアアップに直結します。
問題ありません。IT業界には文系出身の方も多く、必要なのは学習意欲と基礎を積み上げる姿勢です。入社後の研修や学習支援の有無を確認して企業を選びましょう。
未経験ならインフラが狙い目です。開発より求人が多く、資格でスキル証明しやすいメリットがあります。
すぐに転職活動を開始しましょう。最低3ヶ月の在籍でも職歴として書けるため、早めの決断が重要です。
※年収の金額はあくまで目安です。実際の年収は、企業・職種・経験・地域によって異なります。職種別の平均年収は、doda「平均年収ランキング」や、厚生労働省 職業情報提供サイト(job tag)などで最新の数値をご確認ください。
未経験からITエンジニアを目指すなら、SESは十分に良い選択肢です。ただし、成功を分けるのは「SESに入ること」ではなく、「どのSESに入るか」です。
IT人材の需要は今後も高く、未経験からでも入口はあります。一方で、研修の質、初回配属、商流、待機時条件、評価制度を見ずに入社すると、年収もスキルも伸びにくくなります。
だからこそ、未経験のうちから「入りやすさ」だけでなく、「1〜3年後にどんな経験が残るか」で企業を選ぶことが大切です。 求人票だけでは見えにくいポイントも多いため、企業選びに迷う場合は、未経験向けSESの見極めポイントを踏まえて私たちにご相談ください。

アドバイザー
百瀬将悟
大学卒業後、不動産会社に入社。その後、求人広告営業・キャリアアドバイザーを経験。現在は両面型のアドバイザーとIT企業の採用コンサルティングに従事。
採用と転職市場の両方を理解している点を強みとし、「市場価値を高めながら活躍できるエンジニア」になるためのを転職サポート。