
工場・製造業からIT業界へ転職できる?インフラエンジニアに活かせる経験と、未経験からの進め方
工場や製造業からIT業界への転職は、十分に目指せます。特に、サーバーやネットワークを止めずに動かし続けるインフラエンジニアの仕事は、工場の仕事と考え方がよく似ています。
この記事では、工場の経験が活きる理由、目指しやすいIT職と年収、勉強の進め方、職務経歴書と面接での伝え方、転職前に知っておきたい注意点を順番に解説します。
工場で働く方がIT業界を考えるきっかけは、人によってさまざまです。よく聞かれるのは、次のような理由です。
どれも、転職を考える理由として自然なものです。ただし、面接では「今の仕事がつらいから」だけで終わらせず、「だからITで何をしたいのか」まで話せるように準備しておくことが大切です。伝え方は後の章でくわしく紹介します。
工場の生産ラインは、「止めない」「不良を出さない」「事故を起こさない」ことが大切です。インフラエンジニアの仕事も、会社や社会を支えるサーバーやネットワークを「止めない」「障害を出さない」「情報を守る」ことが目的です。
扱うものが「機械」から「サーバーやネットワーク」に変わるだけで、決められた手順で正確に作業し、異常に早く気づき、再発を防ぐという考え方は共通しています。この点が、工場出身の方がインフラの仕事に入りやすい理由のひとつです。
「工場の経験は、IT業界では役に立たないのでは」と心配する方は少なくありません。実際には、工場で毎日くり返してきたことの多くが、IT職でも使えます。
| 工場での経験 | IT職での活かし方 |
|---|---|
| 手順書・作業標準を守る | 手順書どおりにサーバーの設定や作業を行い、手順と違うことが起きたら止まって確認する |
| 品質管理・ダブルチェック | 設定の内容を確認表で見直し、ミスを防ぐ。作業前後の確認を習慣にする |
| 安全管理・指差し確認 | 本番の機器を触る前に、対象や作業内容をひとつずつ確認する |
| 異常の報告(報・連・相) | 監視でアラート(異常の通知)が出たときに、決められた手順で上位の担当者へ正確に伝える |
| 交代勤務・夜勤への慣れ | 24時間体制の運用監視で、シフト勤務の生活リズムを保ちやすい |
| 改善活動(カイゼン) | くり返し起きる問い合わせや作業を見直し、手順書の改善や作業の効率化を提案する |
| 日報・記録の作成 | 対応の記録や障害の報告書を、誰が読んでもわかるように書く |
特に評価されやすいのは、手順を守る力と異常に気づいて報告する力です。インフラの現場では、一つの設定ミスが大きな障害につながることがあります。工場で身につけた「確認してから動く」習慣は、IT職でも大きな強みになります。
工場では、作業のムダを減らす改善活動や、不良の原因を調べて対策する取り組みに参加した方も多いと思います。こうした経験は、IT職でも「問題を見つけて、原因を考え、対策を形にする力」として伝えられます。どんな問題に、どう取り組んだかを、事実の範囲で整理しておきましょう。
同じ工場勤務でも、担当していた仕事によって、強みとして伝えやすい点は変わります。
自分の経験がどれに近いかを考えると、職務経歴書や面接で話す内容を決めやすくなります。
キャリアカンパニーの現場から|入社後に評価されやすい点
特に、インフラの運用・監視の仕事との相性がよい経験です。
工場の経験を活かしやすく、未経験から始めやすいIT職を整理しました。
| 職種 | 主な仕事内容 | 工場経験との相性 |
|---|---|---|
| 運用監視 | サーバーやネットワークを見守り、異常があれば手順に沿って対応・連絡する | 手順の順守・異常の報告・交代勤務の経験が活きる |
| ヘルプデスク | 社員や利用者からのパソコンやアカウントなどの問い合わせに答える | 現場の困りごとを聞き、わかりやすく説明する力が活きる |
| キッティング | 会社で使うパソコンやスマートフォンの初期設定・準備を、手順に沿って行う | 決められた手順で正確に、数多く作業する力が活きる |
| サーバー・ネットワークの構築 | 設計書をもとに機器の設定や組み立てを行う(運用の経験を積んでから進むことが多い) | 品質管理やダブルチェックの考え方が活きる |
運用監視は、インフラエンジニアの入り口になりやすい職種です。監視の画面でサーバーやネットワークの状態を見守り、異常が出たら手順書に沿って対応します。プログラミングを書く仕事ではないので、未経験の方も始めやすいのが特徴です。仕事の中身は監視業務とはでくわしく紹介しています。
ヘルプデスクは、社内の社員や利用者からの問い合わせに対応する仕事です。工場で、現場の作業者から相談を受けたり、新人に作業を教えたりした経験がある方は、その経験を活かしやすいでしょう。くわしくは未経験からヘルプデスクへの転職をご覧ください。
キッティングは、新しく使うパソコンなどに、OSやソフトの設定、アカウントの登録などを行い、すぐに使える状態にして届ける仕事です。決められた手順で、正確に、たくさんの台数をこなす点は、工場のライン作業に近い面があります。ITの機器や設定に慣れる最初の一歩になります。
サーバーやネットワークの構築は、運用監視などで経験を積んでから進むことが多い仕事です。当社の紹介実績では、運用・監視を3年以上経験し、資格も持っていた20名のうち19名が、入社後半年ほどで構築・設計を担当していました(参考値)。運用から構築・設計へ進む道は、運用・監視から構築・設計へで解説しています。
キャリアカンパニーの現場から|最初の職種の傾向
インフラの運用・監視、データセンターの運用、キッティング、ヘルプデスクなどが多い傾向です。未経験から始められる業務が、選択肢になりやすいためです。
転職サービスのdodaが公開している「平均年収ランキング2025」で、工場の経験を活かしやすいIT職の平均年収は、次のとおりです。
| 職種(doda) | 平均年収 |
|---|---|
| ヘルプデスク | 362万円 |
| 運用/監視/保守 | 389万円 |
| ネットワークエンジニア | 455万円 |
| サーバーエンジニア | 469万円 |
| (参考)全職種 | 429万円 |
これは経験者も含めた平均で、未経験で入社した直後の年収とは違います。一方で、運用監視やヘルプデスクから、サーバー・ネットワークのエンジニアへ進むほど、平均年収が高くなることがわかります。
当社の紹介実績では、前職がIT以外でインフラ職に入社した未経験者140名の、入社時の想定年収の中央値は320万円でした(前職の中央値は300万円)。
工場では、夜勤手当や残業代で収入を支えている方もいます。IT業界への転職直後は、手当の付き方が変わることで、年収が下がる場合もあります。応募先の給与の内訳は、事前によく確認しましょう。
ただし、IT業界では経験を積むほど年収が上がる道筋があります。当社の紹介実績でも、IT経験者として転職した38名の年収の中央値は、330万円から420万円に上がっています。年収の考え方はインフラエンジニアの年収でくわしく解説しています。
工場で働きながらITの勉強を進めるのは、簡単ではありません。交代勤務や残業がある方は、まとまった時間を取りにくいこともあるでしょう。だからこそ、目的を決めて、少しずつ続けることが大切です。
| 段階 | やること | ポイント |
|---|---|---|
| 1. 全体をつかむ | ITパスポートなどで、ITの基礎を幅広く学ぶ | まず用語に慣れる |
| 2. インフラの基礎 | CCNA(ネットワーク)やLinuC(サーバー)の勉強を始める | 目指す職種に合わせて選ぶ |
| 3. 手を動かす | パソコンでLinuxを動かす、コマンドを打ってみる | 面接で話せる経験になる |
ITパスポートは、ITの全体像をつかむ最初の一歩になります。転職での評価についてはITパスポートは転職に役立つ?をご覧ください。インフラエンジニアを目指すなら、CCNAやLinuCの勉強を始めると、志望動機とつながりやすくなります。
資格は、合格していなくても「勉強中です」と伝えられます。どの資格を、いつから、どのように勉強しているかを具体的に話せると、意欲が伝わります。キャリアカンパニーでは、CCNA・LPICなどの無料学習カリキュラムを用意しています。
最後の「記録」は、面接で「どのように勉強してきたか」を説明するときにも役立ちます。工場で日報を書いてきた習慣を、そのまま勉強に使いましょう。勉強の順番はインフラエンジニアの勉強法でもまとめています。
職務経歴書で「製造ラインで作業していました」とだけ書くと、IT企業には仕事の中身が伝わりにくくなります。次のように、IT職でも使う力として書き直してみましょう。
| よくある書き方 | IT企業に伝わる書き方(一例) |
|---|---|
| ラインで組み立て作業をしていました | 作業標準書に沿って組み立てを行い、作業前後の確認で品質を保っていました |
| 不良品を見つけたら報告しました | 異常に気づいた際は作業を止め、決められた手順で上長へ報告していました |
| 交代勤務をしていました | 日勤・夜勤の交代勤務で、引き継ぎの記録を残しながら業務を続けていました |
| 改善活動に参加しました | 作業のムダを洗い出し、手順の見直しを提案して、班の中で取り入れられました |
担当した工程の範囲、扱った設備、品質や安全に関する資格、新人への指導の経験などがあれば、事実の範囲で書き添えましょう。インフラ職向けの書き方は、インフラエンジニアの職務経歴書でくわしく解説しています。
志望動機では、次の3つをつなげて話すと伝わりやすくなります。
志望動機の例文(一例)
「製造業の工場で、設備を使った組み立て工程を担当してきました。作業標準を守り、異常があればすぐに止めて報告することを大切にしてきました。設備の管理システムに触れるうちに、生産を支える仕組みそのものに関心を持ち、ITの仕事を目指すようになりました。現在はCCNAの勉強を進めています。貴社の運用監視の仕事では、手順に沿った正確な作業と、異常を正しく伝える力を活かしたいと考えています。将来は、ネットワークの構築にも携われるエンジニアを目指しています。」
例文はそのまま使わず、ご自身の経験に合わせて書き直してください。志望動機の作り方はインフラエンジニアの志望動機でも紹介しています。
面接では、「体力的にきついから」「単純作業に飽きたから」といった理由だけを話すのは避けましょう。転職のきっかけに不満があっても、「その経験から、次に何をしたいと考えたか」まで話すことが大切です。
キャリアカンパニーの現場から|面接での経験の伝え方
「製造ラインで働いていた」だけで終わらせず、品質管理、設備トラブルへの対応、作業の改善、チームでの連携などを具体的に伝えるよう助言しています。
IT業界への転職には、事前に知っておきたい点もあります。当社の面談でもお伝えしている内容をまとめました。
| 注意点 | 内容 |
|---|---|
| 夜勤・シフトがある | 運用監視では、夕方17〜18時から翌朝9〜10時まで勤務し、翌日は休みという夜勤の例がある。夜勤と日勤が混ざる場合もある |
| 土日休みが難しい場合がある | 最初の数年は、土日祝休みが難しい場合がある。年間休日は120日を超えるケースが多い |
| プログラミングの仕事ではない | 運用監視の求人は、プログラミングを書く仕事ではない |
| 早い転職は避けたい | 最初の3年は現場の経験を積み、1〜2年での早い転職は避けるのがおすすめ |
| 会社選びで将来が変わる | 商流が深い会社では、単価と給与が上がりにくい |
工場で交代勤務を経験した方は、運用監視のシフトにも慣れやすいかもしれません。ただし、勤務時間の区切り方や休みの取り方は、工場と違う場合があります。夜勤のある働き方はインフラエンジニアの夜勤でくわしく解説しています。
未経験向けの求人の中には、仕事内容があいまいなものもあります。どんな機器を扱うのか、研修はあるのか、将来どんな仕事に広げられるのかを確認しましょう。固定残業代が含まれる場合は、時間数と金額が書かれているかも見ておきたい点です。見方はインフラエンジニアの求人の見極め方で紹介しています。
転職できる可能性はあります。運用監視やヘルプデスクなど、未経験から採用する求人があります。当社の紹介実績でも、インフラ職に入社した178名のうち140名は、前職がIT以外の方でした。手順を守る力や異常を報告する力は、IT職でも活かせます。
将来インフラエンジニアを目指したい方は運用監視、人と話すことが得意な方はヘルプデスク、まずITの機器に慣れたい方はキッティングが候補です。最初の職種と、その先の目標を分けて考えると決めやすくなります。
最初から高いスキルは求められない求人もあります。ただし、文字入力やファイルの操作など、基本の操作には慣れておきたいところです。勉強を始める前に、パソコンに毎日触れる習慣をつくると、その後の勉強も進めやすくなります。
入社時の年収は、前職や応募先によって変わります。夜勤手当や残業代が多かった方は、転職直後に下がる場合もあります。当社の紹介実績では、前職がIT以外の未経験者140名の入社時の想定年収の中央値は320万円で、前職の中央値は300万円でした。
資格がなくても応募できる求人はあります。ただし、未経験からの転職では、ITの勉強を始めていることが意欲の証明になります。ITパスポートやCCNA、LinuCなどの勉強を始めておくと、面接で話せることが増えます。
在職中に進める方も多くいます。当社の紹介実績では、面談から内定までの中央値は40日、応募は平均5社、内定は平均4社でした。交代勤務の方は、面接の日程を調整しやすいように、早めに予定を共有しておきましょう。
製造業の会社のIT部門で働く道もあります。工場の現場を知っていることが役立つ場面もありますが、求人ごとに求められる経験が違います。まずはインフラの基礎を身につけ、求人の仕事内容をよく確認したうえで検討しましょう。
運送業や配送の仕事をしている方は、ドライバー・運送業からIT業界へ転職も参考にしてください。
働き方の注意点は、キャリアカンパニーの面談でお伝えしている内容をまとめたもので、集計した数字ではありません。自社集計の数字は当社の紹介実績であり、業界全体の数字ではありません。例文は一例です。ご自身の経験に合わせて書き直してください。
株式会社エンデバース 代表取締役
キャリアカンパニー責任者
百瀬 将悟
大学卒業後、不動産会社に入社。その後、求人広告営業・キャリアアドバイザーを経験。現在は両面型のアドバイザーとIT企業の採用コンサルティングに従事。
採用と転職市場の両方を理解している点を強みとし、「市場価値を高めながら活躍できるエンジニア」になるためのを転職サポート。