
インフラエンジニアに数学は必要?実際に使う計算を例題で確認し、苦手な人の準備を解説
「インフラエンジニアは理系の仕事だから、数学ができないと無理では」と不安に感じる方は少なくありません。結論から言うと、微分・積分のような高校後半〜大学の数学は、日々の仕事ではほとんど使いません。
この記事では、インフラエンジニアが実際に使う計算を、短い例題(答え付き)で確認します。そのうえで、工程ごとにどのくらい計算が必要になるか、数学より大事な力、苦手な方の準備のしかたを解説します。インフラエンジニアの仕事の全体像から知りたい方は、未経験からのインフラエンジニア転職ガイドをご覧ください。
インフラエンジニアは、サーバーやネットワークといった、システムの土台をつくり、動かし続ける仕事です。その中で計算が出てくる場面は、おおむね次の5つに絞られます。
| 計算の種類 | 使う場面 | 数学のレベル(目安) |
|---|---|---|
| 2進数・10進数・16進数の変換 | IPアドレス、権限の設定、機器の表示を読む | 中学の数学+慣れ |
| IPアドレスとサブネットの計算 | ネットワークの設計、設定の確認 | 2のべき乗(2を何回かけるか) |
| ビットとバイト・通信速度の換算 | 回線の速さ、転送時間の見積もり | 掛け算・割り算 |
| ディスク容量・RAIDの容量 | サーバーの構築、容量の見積もり | 掛け算・引き算 |
| 稼働率 | システムの止まりにくさを考える | 割合(%)の計算 |
どれも、方程式を解いたり、証明をしたりするものではありません。決まった手順に数字を当てはめる計算です。以下、一つずつ例題で見ていきます。
コンピューターの中では、すべての情報が「0」と「1」の組み合わせ(2進数)で扱われています。インフラエンジニアは、この2進数と、ふだん使う10進数、そして2進数を短く書くための16進数を行き来する場面があります。
| 10進数 | 2進数 | 16進数 |
|---|---|---|
| 1 | 1 | 1 |
| 8 | 1000 | 8 |
| 10 | 1010 | A |
| 15 | 1111 | F |
| 16 | 10000 | 10 |
| 192 | 11000000 | C0 |
| 255 | 11111111 | FF |
考え方のコツ:2進数は、右から順に「1・2・4・8・16・32・64・128」の重みを持っています。1が立っている位置の重みを足せば、10進数に戻せます。
例題(一例):2進数の「1010」を10進数にすると、いくつですか。
答え:10。右から2番目(重み2)と4番目(重み8)が1なので、2+8=10です。
例題(一例):2進数の「11000000」を10進数にすると、いくつですか。
答え:192。左の2つ(重み128と64)が1なので、128+64=192です。
16進数は、2進数の4けたを1文字にまとめた書き方です。10〜15をA〜Fで表します。たとえば2進数の「1111」は10進数の15で、16進数では「F」です。8けたの「11111111」は、4けたずつ区切ると「1111」「1111」なので「FF」になります。
Linuxのファイルの権限設定(chmod)で使う「755」のような数字も、同じ考え方です。読み取り=4、書き込み=2、実行=1を足して、7なら「読み・書き・実行すべて可」、5なら「読み・実行のみ可」を表します。Linuxの基本操作は、Linuxコマンド一覧で確認できます。
インフラの計算で、いちばんつまずきやすいのがここです。ただし、表を手元に置いて考えれば、計算そのものは難しくありません。
IPアドレス(IPv4)は、「192.168.1.10」のように、0〜255の数字4つで書きます。中身は8けたの2進数が4つ、合わせて32けた(32ビット)です。このうち、前半の何けたを「ネットワークの番号」に使うかを示すのが、サブネットマスクです。「/24」のように書くこともあります。
| 書き方 | サブネットマスク | 機器に割り当てられる数 |
|---|---|---|
| /24 | 255.255.255.0 | 254 |
| /25 | 255.255.255.128 | 126 |
| /26 | 255.255.255.192 | 62 |
| /27 | 255.255.255.224 | 30 |
| /28 | 255.255.255.240 | 14 |
| /30 | 255.255.255.252 | 2 |
計算の型:32から「/」の後ろの数字を引くと、機器用に残るけた数がわかります。2をそのけた数だけかけた数がアドレスの総数で、そこから2を引いた数が、機器に割り当てられる数です。2を引くのは、先頭(ネットワークそのものを表す番号)と末尾(全体に一斉に送るための番号)が、機器には使えないためです。
例題(一例):「/24」のネットワークで、機器に割り当てられるIPアドレスはいくつですか。
答え:254。32−24=8けたが残ります。2を8回かけると256。256−2=254です。
例題(一例):「/26」のネットワークではどうですか。
答え:62。32−26=6けたが残ります。2を6回かけると64。64−2=62です。
例題(一例):「192.168.1.100/26」は、どの範囲のネットワークに属しますか。
答え:192.168.1.64〜192.168.1.127の範囲です。/26は64個ずつの区切り(0〜63、64〜127、128〜191、192〜255)なので、100は「64〜127」に入ります。先頭の192.168.1.64がネットワークを表す番号、末尾の192.168.1.127が一斉送信用の番号で、機器に使えるのは192.168.1.65〜192.168.1.126の62個です。
このしくみを理解しておくと、「設定したのに通信できない」ときに、アドレスの範囲がずれていないかを確かめられます。通信のしくみの土台は、TCP/IPとはで解説しています。
通信の速さは「bps(1秒あたりに送れるビット数)」、ファイルの大きさは「バイト(B)」で表すのが一般的です。1バイト=8ビットという関係を押さえておけば、ほとんどの換算ができます。
| 単位 | 関係 | 使われる場面の例 |
|---|---|---|
| ビット(bit) | 0か1の1けた | 通信速度(Mbps・Gbps) |
| バイト(B) | 1バイト=8ビット | ファイルやディスクの大きさ |
| キロ・メガ・ギガ・テラ | 1,000倍ずつ大きくなる | 通信速度、ディスクの表示 |
| キビ・メビ・ギビ(KiB・MiB・GiB) | 1,024倍ずつ大きくなる | OSが表示するメモリやディスク |
例題(一例):100Mbpsの回線で、1GBのファイルを送るのに、理論上は何秒かかりますか(1GB=1,000MBとして計算)。
答え:80秒。1GB=1,000MB=8,000Mbit(8をかけてビットにそろえる)。8,000÷100=80秒です。1Gbps(1,000Mbps)の回線なら、8,000÷1,000=8秒です。
実際には、通信の制御に使われる分などがあるため、この時間ちょうどでは届きません。それでも、「ビットとバイトをそろえてから割り算する」という型を知っているだけで、「この作業は何分くらいかかりそうか」の見積もりができるようになります。
サーバーでは、複数のディスクを組み合わせて、1本が壊れてもデータを失わないようにする「RAID(レイド)」というしくみをよく使います。RAIDの種類によって、使える容量が変わります。
| RAIDの種類 | 2TBのディスク4本で使える容量 | 特徴 |
|---|---|---|
| RAID0 | 8TB | 容量は最大。1本壊れるとデータを失う |
| RAID1(2本ずつ鏡のように複製) | 4TB | 同じ内容を2本に書く。容量は半分 |
| RAID5 | 6TB | 1本分を復旧用に使う。1本の故障まで耐える |
| RAID6 | 4TB | 2本分を復旧用に使う。2本の故障まで耐える |
| RAID10 | 4TB | 複製と分散の組み合わせ。容量は半分 |
計算の型:RAID5は「本数−1」、RAID6は「本数−2」に、1本の容量をかけます。
例題(一例):4TBのディスク5本でRAID5を組むと、使える容量は何TBですか。
答え:16TB。(5−1)×4TB=16TBです。
なお、ディスクの製品表示は1TB=1,000GBで数えますが、OSでは1,024を区切りに表示するため、OSで見ると表示の数字が少し小さく見えることがあります。前の章の「キロとキビの違い」がここで役立ちます。
稼働率は、「システムが止まらずに動いている時間の割合」です。止まると困るシステムほど、高い稼働率を目標にします。数学としては割合(%)の計算です。
| 稼働率(一例) | 1年(8,760時間)のうち止まってよい時間の目安 |
|---|---|
| 99% | 約87.6時間(約3.65日) |
| 99.9% | 約8.76時間(約8時間46分) |
| 99.99% | 約0.876時間(約53分) |
計算の型:1年は365日×24時間=8,760時間。これに「止まってよい割合(100%−稼働率)」をかけます。99.9%なら、止まってよい割合は0.1%(0.001)なので、8,760×0.001=8.76時間です。
例題(一例):稼働率99%の機器を2台「直列」(どちらか1台でも止まると全体が止まる)につなぐと、全体の稼働率は何%ですか。
答え:98.01%。0.99×0.99=0.9801です。
例題(一例):同じ機器を2台「並列」(2台とも止まらない限り全体は動く)にすると、どうなりますか。
答え:99.99%。2台とも止まる割合は0.01×0.01=0.0001なので、1−0.0001=0.9999です。
この計算からわかるのは、「予備の機器を用意すると、システム全体が止まりにくくなる」という考え方です。設計の仕事では、こうした考え方をもとに、機器を二重にするかどうかを決めていきます。
インフラエンジニアの仕事は、担当する工程によって、計算が出てくる量が変わります。未経験から入る場合、最初は監視・運用の担当になることが多く、計算の出番は多くありません。
| 工程 | 計算が出てくる場面 | 必要度の目安 |
|---|---|---|
| 監視 | アラートの数値(使用率など)を読む、手順書の確認 | 低い。%や単位の読み取りが中心 |
| 運用 | ディスクの空き容量の確認、IPアドレスの確認 | やや低い。表を見ながら対応できる |
| 構築 | IPアドレスの割り当て、RAIDの構成、設定値の入力 | 中くらい。サブネット計算に慣れておきたい |
| 設計 | ネットワークの分け方、容量や性能の見積もり、稼働率の検討 | 中くらい〜高め。型の計算を組み合わせて使う |
| クラウド・自動化 | ネットワーク範囲の指定、コードで設定を書く | 中くらい。計算より手順の正確さが大切 |
当社が面談でお伝えしているとおり、運用・監視の求人は、プログラミングを書く仕事ではありません。監視の仕事の中身はIT監視業務とはで、クラウドで使う考え方はクラウド環境とはで解説しています。
構築・設計に進むほど計算は増えますが、内容は上の5種類の組み合わせです。現場で経験を積みながら、少しずつ慣れていくのが一般的です。
キャリアカンパニーの現場から|数学が苦手だった方の入社後
一般的な運用・監視の業務では、高度な数学を使う機会は少なく、数学が苦手でも業務に対応できる可能性は十分にあります。
インフラの現場で求められるのは、計算の速さよりも、考え方の正確さです。中でも、次の3つの力が大切です。
インフラの作業は、「Aを設定してから、Bを確認し、Cを再起動する」というように、順番が決まっています。順番を入れ替えると、システムが止まることもあります。「なぜこの順番なのか」を考えながら進める力は、数学の得意・不得意とは別のものです。
運用の仕事では、手順書に沿って作業することが基本です。自己流で手順を飛ばさず、決められたとおりに確認する姿勢が、信頼につながります。「わからないところは自己判断せず、確認してから進める」ことも、手順を守る力の一部です。
障害が起きたとき、「サーバーが原因か、ネットワークが原因か、設定が原因か」を一つずつ確かめて、原因を絞り込んでいく作業を「切り分け」と呼びます。仮説を立て、確かめ、違えば次を試すという進め方は、むしろ国語や社会のように、筋道を立てて説明する力に近いものです。
インフラエンジニアに向いている人の特徴は、インフラエンジニアに向いている人でくわしく解説しています。
キャリアカンパニーの現場から|企業が数学より重視していること
数学に不安がある方は、資格の勉強を通じて、仕事で使う計算に先に触れておくのがおすすめです。資格の範囲に出る計算は、仕事で使うものと重なっています。
| 資格 | 出てくる計算の例 | 準備のしかた |
|---|---|---|
| ITパスポート | 2進数、稼働率、割合の計算 | 計算問題は型が決まっているので、過去問で型を覚える |
| 基本情報技術者 | 2進数・16進数、稼働率、論理演算、容量の計算 | ITパスポートより範囲が広い。計算分野を先に固める |
| CCNA | IPアドレスとサブネットの計算、2進数 | サブネット表を自分で書けるまで練習する |
| LinuC | 権限の数字(755など)、ディスク容量の確認 | 実際にLinuxを触りながら覚える |
準備の順番(一例)
計算問題は、わからなくても「型」を覚えれば解けるようになるという点で、文章の読解よりも対策しやすい分野です。暗算が苦手でも、紙に書いて確かめれば十分です。
資格ごとの詳しい内容は、ITパスポートは転職に役立つ?、CCNAとは、LinuCとはをご覧ください。学習の進め方全体は、インフラエンジニアの勉強法にまとめています。
「インフラエンジニアは理系の人が多いのでは」と心配される方もいます。当社の紹介実績では、2025年8月〜2026年7月にインフラ職に入社した178名のうち140名が、前職がIT以外の方でした(当社の紹介実績であり、業界全体の数字ではありません)。前職がIT以外の方が、インフラ職に多く入社しています。
文系出身の方が意識したいのは、次の2点です。
文系からの転職の進め方は、文系からインフラエンジニアへの転職で解説しています。
未経験者向けの面接では、計算そのものより、学ぶ姿勢や、なぜインフラを選んだのかを聞かれることが一般的です。ただし、資格の勉強をしていると伝えた場合は、その内容について質問されることもあります。勉強した範囲は、自分の言葉で説明できるようにしておきましょう。
キャリアカンパニーの現場から|面接での計算
当社が支援している未経験のインフラの選考では、計算の力は事前の適性検査で確認し、面接の中で計算の質問はしない企業が多くあります。ただし、ネットワーク関連の求人では、2進数・IPアドレス・サブネットマスクなどの基礎知識を確認される場合があります(すべての企業ではありません)。
面接でよく聞かれる質問と答え方は、インフラエンジニアの面接でよく聞かれる質問にまとめています。
数学に不安があり、インフラエンジニアを目指せるか相談したい方へ
今の経験や得意なことから、どの工程から始めると無理がないか、何を準備すればよいかを、キャリアアドバイザーと一緒に整理できます(オンライン・60分)。
日程を選んで無料相談を予約する高度な数学はほとんど使いません。使うのは、2進数の変換、IPアドレスとサブネットの計算、単位の換算、容量や稼働率の計算といった、中学〜高校1年程度の内容です。決まった型の計算なので、やり方を覚えれば対応できます。
なれます。計算の型は限られており、資格の勉強で先に慣れておくことができます。現場では、計算の速さより、手順を守る力や原因を切り分ける力が大切にされます。
目指せます。当社の紹介実績では、インフラ職に入社した178名のうち140名が、前職がIT以外の方でした(当社の紹介実績であり、業界全体の数字ではありません)。報告や手順書の読み書きなど、文系の方が得意なことが多い力も活きます。
多くの方がつまずきやすいのは、サブネットの計算です。ただし、「32から/の後ろの数字を引き、2をその回数かけて、2を引く」という型があります。表を自分で書けるまで練習すると、迷わなくなります。
使う場面はありますが、多くはありません。使用率(%)や容量の数字を読む、IPアドレスを確認するといった内容が中心です。運用・監視の求人は、プログラミングを書く仕事でもありません。
中学の数学をすべてやり直す必要はありません。2のべき乗(2、4、8…256)、2進数と10進数の変換、割合(%)の計算の3つから始めるのがおすすめです。そのあと、ITパスポートやCCNAの計算問題で慣れていきましょう。
クラウドでも、ネットワークの範囲の指定などでサブネットの計算は使いますが、内容は同じ型です。コードで設定を書く場面が増えるため、計算よりも、手順を正確に書く力のほうが求められます。コードで設定を管理するツールの一例がTerraformです。
例題はすべて理解のための一例です。通信時間は理論上の値で、実際には通信の制御に使われる分などにより長くなります。工程別の必要度は一般的な目安で、会社や現場によって異なります。自社集計の数字(インフラ職入社178名中140名が前職IT以外)は、キャリアカンパニーの紹介実績(2025年8月〜2026年7月入社)であり、業界全体の数字ではありません。
株式会社エンデバース 代表取締役
キャリアカンパニー責任者
百瀬 将悟
大学卒業後、不動産会社に入社。その後、求人広告営業・キャリアアドバイザーを経験。現在は両面型のアドバイザーとIT企業の採用コンサルティングに従事。
採用と転職市場の両方を理解している点を強みとし、「市場価値を高めながら活躍できるエンジニア」になるためのを転職サポート。