
運用保守が「やめとけ」と言われるのは、業務範囲が定型化しやすく、上流工程に関わる機会が限られやすいという構造的な理由が背景にあります。ただし運用保守で得られるインフラ・障害対応の知識は、設計構築やクラウドエンジニアへのキャリアアップの土台として活かせます。
この記事のポイント
運用保守業務は、監視・障害一次対応・定型的なメンテナンス作業など、手順化されたオペレーションが中心になりやすい領域です。安定運用のためにマニュアル化・標準化が進んでいること自体は組織として健全な状態ですが、担当者からすると「毎日同じ作業の繰り返し」と感じられやすい側面があります。
設計・構築を担当するチームと運用チームが分業されている組織では、運用担当者が要件定義や設計に関わる機会が少なくなりがちです。この分業構造が「スキルアップしにくい」という評判につながっています。
24時間365日のシステム稼働を支える都合上、夜勤やオンコール(緊急呼び出し)対応が発生する現場も存在します。生活リズムへの影響を負担に感じる人がいるのも事実です。
運用保守は、実際に稼働しているシステムのネットワーク構成、サーバー、ミドルウェアの挙動に日常的に触れる仕事です。設計書の上だけでは分からない「本番環境のリアル」を知っていることは、将来設計構築を担当する際の強みになります。
障害発生時に何が起きているかを切り分け、影響範囲を見極め、関係者に連携する力は、開発・インフラを問わず高く評価されるスキルです。
キャリアカンパニーが直近1年間に支援した、運用保守から設計構築・クラウドエンジニアへのキャリアアップ実績は96名。多くは入社2年目でのキャリアアップとなっており、AWS認定ソリューションアーキテクト(AWS SAA)や基本情報技術者試験の取得がステップアップの後押しとなっています。
✔ ポイント
自社集計(2025年8月〜2026年7月)では、運用監視を3年以上経験して資格を取った20名のうち19名(95%)が、入社後半年程度で構築・設計を担当しました。
自分が今どの技術領域(OS、ネットワーク、クラウド、ミドルウェアなど)にどの程度触れてきたかを整理しましょう。運用保守経験者は、意外と自分のスキルを過小評価しがちです。
AWS認定やAzure認定などのクラウド資格は、実務経験がまだ浅い領域でも「学習意欲と基礎知識」を客観的に示す材料になります。独学が難しい場合は、無料のオンラインITスクールなど体系的に学べる環境を活用する方法もあります。
現職に設計構築部門があるなら異動の相談も選択肢です。異動が難しい、あるいは会社自体の技術スタックが古い場合は、クラウドインフラを扱う企業への転職を検討する余地があります。
「やめとけ」の実態を判断するには、まず仕事の中身を知ることが大切です。運用保守(運用・監視・保守)の、一般的な1日の流れの例です(現場や配属先によって異なります)。
| 時間帯 | 仕事の例 |
|---|---|
| 引き継ぎ | 前のシフトの担当者から、障害・作業の状況、注意点を引き継ぐ |
| 日中の監視 | 監視ツール(Zabbixなど)でサーバー・ネットワークの稼働状況を確認。アラートへの一次対応 |
| 定常作業 | アカウント管理、バックアップの確認、ログの確認、定期的なメンテナンス作業 |
| 障害対応 | 障害の影響範囲の確認、一次切り分け、手順書に沿った対応、必要ならエスカレーション |
| 終業前 | 対応内容の記録、報告書の作成、次のシフトへの引き継ぎ |
運用保守の仕事は、「システムを止めない」ことが価値です。目立たないぶん、評価されにくいと感じる人もいますが、現場から見れば、欠かせない仕事です。
当てはまりやすい人(合わない可能性)
当てはまりにくい人(合う可能性)
向き不向きは、仕事そのものだけでなく、配属先・チームの体制・本人の目標によって変わります。「運用保守は、全部よくない」わけではありません。
| 行動 | 具体例 | 得られること |
|---|---|---|
| 手順書を改善する | 分かりにくい手順に、補足を加える。チェックリストを作る | 文書化の力、改善提案の経験 |
| 作業を自動化する | 定型作業をシェルスクリプトなどで自動化する | 構築・自動化への足がかり |
| 障害の原因を深掘りする | 障害対応のあと、原因と再発防止策を整理して共有する | 障害分析・設計の視点 |
| 資格を取る | CCNA→CCNP、LPIC、AWSなど、分野を決めて取得 | 知識の証明、構築への準備 |
| 小さな変更作業に関わる | 設定変更や、小規模な構築に、手を挙げて参加する | 構築の実務経験 |
こうした行動を重ねると、運用保守を「ただの定型作業」から、「構築・設計への準備期間」に変えられます。
dodaの「平均年収ランキング2025」(集計期間:2024年9月〜2025年8月)では、職種別の平均年収は次のとおりです。個別の年収を保証するものではなく、目安です。
| 職種 | 平均年収 |
|---|---|
| 運用/監視/保守 | 389万円 |
| ヘルプデスク | 362万円 |
| ネットワークエンジニア | 455万円 |
| サーバーエンジニア | 469万円 |
| セキュリティエンジニア | 497万円 |
出典:doda「平均年収ランキング2025」。職種によって平均年収に差があります。運用保守で経験を積み、ネットワーク・サーバー・セキュリティなどの専門分野へ進むと、平均では年収の水準が上がる傾向が示されています。ただし、年収は経験・スキル・企業によって大きく異なります。
「運用保守」とひとくくりに言われますが、扱う対象によって、仕事内容と、身につくスキルが異なります。
| 種類 | 主な対象 | 身につきやすいスキル |
|---|---|---|
| サーバー運用 | Linux・Windowsサーバーの監視・メンテナンス | OS・ミドルウェアの知識、障害の切り分け |
| ネットワーク運用 | ルーター・スイッチなどの監視・設定変更 | ネットワークの基礎、機器の設定、通信障害の対応 |
| クラウド運用 | AWS・Azureなどの、リソースの監視・運用 | クラウドの基本サービス、構成の理解、自動化 |
| ヘルプデスク・社内ITサポート | PC・アカウント・アプリの問い合わせ対応 | ユーザー対応、一次切り分け、ツールの操作 |
| アプリケーション運用 | 業務システム・Webサービスの運用 | システムの仕様の理解、障害の原因分析 |
どの運用保守を経験するかで、次のステップも変わります。ネットワーク運用ならCCNA→CCNP、サーバー運用ならLPIC、クラウド運用ならAWS・Azureというように、今の仕事に近い分野から学ぶと、続けやすくなります。
夜勤やオンコール(緊急呼び出し)は、運用保守で「やめとけ」と言われる大きな理由の一つです。完全になくすことは難しくても、負担を減らす工夫はあります。
| 工夫 | 内容 |
|---|---|
| 日勤中心の現場を選ぶ | 夜間は別チーム・別拠点が対応する体制の求人を探す |
| シフトの希望を伝える | 入社前に、夜勤の頻度、連続日数、休日の取り方を確認する |
| 手当と休みの確認 | 夜勤手当、夜勤明けの休み、代休の仕組みを確認する |
| 手順書・自動化で負担を減らす | 夜間の対応手順を整備し、自動対応を増やす提案をする |
| 期間を区切って考える | 最初の数年は経験を積む期間と割り切り、構築・設計への移行計画を持つ |
夜勤の有無は、応募する前に、エージェントに必ず確認しましょう。面接では、「その都度相談したい」と答えると、募集要件に合わないと判断されることもあるため、可否は事前に整理しておきます。
| 次の道 | 内容 | 必要になりやすいもの |
|---|---|---|
| 構築・設計(インフラ) | 要件定義・設計・構築を担当 | 資格、検証環境での構築経験、運用で培った障害対応力 |
| クラウドエンジニア | クラウド環境の設計・構築・運用 | AWS・Azureの資格、自動化の知識 |
| セキュリティ | 脅威の監視・対応、セキュリティ設計 | セキュリティの知識・資格、運用の経験 |
| 社内SE | 自社のIT環境の運用・改善・企画 | 幅広い知識、調整力、ユーザー対応の経験 |
| SRE・自動化 | 運用の自動化、信頼性の向上 | スクリプト・自動化ツールの経験 |
次の道を決める前に、今の仕事の中で、何が一番「面白い」と感じたかを振り返ってみましょう。障害対応が好きならセキュリティ、仕組みを作ることが好きなら構築・クラウド、というように、興味の方向が手がかりになります。
運用保守から次のステップへ転職する場合、「今の仕事が嫌だから」と聞こえないように、伝え方に注意が必要です。事実を曲げず、前向きな目的に言い換えます。
| 本音 | 伝え方の例 |
|---|---|
| 毎日同じ作業で、成長を感じない | 運用で身につけた障害対応の経験を土台に、構築・設計の上流工程にも関わり、専門性を高めたい |
| 夜勤がつらい | 長く働き続けられる環境で、運用の経験を活かしながら、スキルを高めたい(働き方の条件は、事実として簡潔に) |
| 上流に関われない | 運用で見えた課題(設計段階で防げた障害)を、設計の段階から解決する仕事に挑戦したい |
退職理由全般の伝え方はIT転職の退職理由の伝え方で、回答例つきで解説しています。
転職する前に、今の職場で試せることもあります。次の3つを試してみて、変わらなければ、転職を検討しましょう。
これらを試した結果、構築・設計に進める見込みがないと判断できれば、転職の理由として、具体的に説明できるようになります。面接でも、「社内で試したが、環境上難しかった」という事実は、前向きな根拠になります。
| 状況 | おすすめの判断 |
|---|---|
| 入社して1年未満 | まずは、業務に慣れ、基礎を固める。資格学習を始める |
| 2〜3年目で、成長を感じる | 今の環境で、小さな構築・自動化に関わる。資格取得を進める |
| 3年程度で、構築に関われる機会がない | 転職を検討する時期。経験・資格をまとめ、構築・設計の求人を探す |
| 夜勤・オンコールで、体調に影響が出ている | 働き方の見直しを優先する。日勤中心の運用、または他職種への転換を検討する |
⚠ 注意
「やめとけ」という声だけで、仕事を辞める必要はありません。辞める理由が、仕事そのものなのか、職場の環境なのかを切り分けてから、判断しましょう。環境が原因なら、同じ職種でも、職場を変えることで解決する場合があります。
✅ 運用保守からの転職チェックリスト
職務経歴書の書き方はIT転職の職務経歴書の書き方、面接の準備は未経験IT転職の面接でよく聞かれる質問と答え方、未経験から運用保守に入る方法は運用保守は未経験からでも転職できる?が参考になります。
配属先と、本人の行動で変わります。手順書の改善、自動化、小さな変更作業への参加など、自分から動くことで、構築・設計の準備ができます。受け身のままだと、同じ作業の繰り返しになりやすい点は事実です。
評価されます。障害対応、報告の習慣、手順を守る力は、多くの企業で求められます。ただし、「何をやってきたか」を、具体的に書けることが前提です。
目安は3年程度です。キャリアカンパニーの自社集計では、運用・監視を3年程度経験し、資格を取得した方が、構築・設計に進みやすい傾向があります。ただし、年数より、中身(経験と資格)が大切です。
可能ですが、職種によって難易度が変わります。クラウド・セキュリティ・構築など、運用の経験が活きる分野なら、移行しやすくなります。開発職への転向は、学習の実績(成果物)が見られることが多く、準備に時間がかかります。
以下のうち当てはまるものが多いほど、次のステップを考えるタイミングかもしれません。
⚠ 注意
95%は「運用監視3年以上+資格」の20名の結果です。全員が同じ道筋になるわけではなく、経験年数や資格の有無で変わります。
運用保守から抜け出したい方へ、自社の転職支援の実績を紹介します。キャリアカンパニーで2025年8月〜2026年7月に入社が決まった201名の集計です。
出典:キャリアカンパニー自社集計(2025年8月〜2026年7月に入社が決まったインフラ職170名。年収は中央値)
対象:運用・監視の経験が3年程度あり、CCNP・LPICレベル3・AWS SAA・Azure AZ-104などの資格を取得している20名。入社後半年程度で構築・設計を担当した方の割合です。
出典:キャリアカンパニー自社集計(2025年8月〜2026年7月に入社が決まった方)
| 項目 | 結果 |
|---|---|
| 前職がIT以外だった方の割合 | 90% |
| 面談から内定までの期間(中央値) | 40日 |
| インフラ職で入社した方(170名)の入社時年収(中央値) | 320万円(転職前は300万円) |
| インフラ職で年収が上がった方の割合 | 60% |
| 入社後1年以内の定着率(201名が対象) | 98% |
| 運用・監視の経験が3年程度あり、資格(CCNP、LPICレベル3、AWS SAA、Azure AZ-104など)を取得している方(20名)のうち、入社後半年程度で構築・設計を担当した方 | 19名(95%) |
※自社集計(2025年8月〜2026年7月に入社が決まった方。定着率は、入社後1年以内に退職しなかった方の割合(201名が対象))。年収は中央値で、個人が特定されない形で集計しています。
運用・監視の経験が3年程度あり、CCNP、LPICレベル3、AWS ソリューションアーキテクト アソシエイト、Azure AZ-104などの資格を取得している20名のうち19名(95%)は、入社後半年程度で構築・設計を担当しています(自社集計、2025年8月〜2026年7月に入社が決まった方)。経験と資格がそろうと、運用・監視から構築・設計へ進みやすいことがうかがえます。
運用保守の求人で、ブラック企業を避ける確認方法は、こちらで解説しています。
▶ ブラックなIT企業の見分け方|求人票・面接・口コミで確認するポイントと質問例
運用・監視の夜勤・つらさと、キャリアの選択肢は、こちらでも解説しています。
▶ インフラエンジニアはやめとけ?きついと言われる7つの理由と、後悔しない会社選び・向き不向き
運用保守業務は、監視・障害一次対応・定型的なメンテナンス作業など、手順化されたオペレーションが中心になりやすい領域です。安定運用のためにマニュアル化・標準化が進んでいること自体は組織として健全な状態ですが、担当者からすると「毎日同じ作業の繰り返し」と感じられやすい側面があります。
運用保守は、実際に稼働しているシステムのネットワーク構成、サーバー、ミドルウェアの挙動に日常的に触れる仕事です。設計書の上だけでは分からない「本番環境のリアル」を知っていることは、将来設計構築を担当する際の強みになります。
自分が今どの技術領域(OS、ネットワーク、クラウド、ミドルウェアなど)にどの程度触れてきたかを整理しましょう。運用保守経験者は、意外と自分のスキルを過小評価しがちです。
運用保守の経験は、正しく振り返り、次のステップにつなげることで、設計構築やクラウドエンジニアへのキャリアアップの土台になります。焦って辞めるのではなく、今の経験を棚卸ししながら次の一歩を考えることが大切です。
今の運用保守経験をどう次に活かせるか、無料キャリア診断や無料相談で一緒に整理しませんか。
アドバイザー
百瀬将悟
大学卒業後、不動産会社に入社。その後、求人広告営業・キャリアアドバイザーを経験。現在は両面型のアドバイザーとIT企業の採用コンサルティングに従事。
採用と転職市場の両方を理解している点を強みとし、「市場価値を高めながら活躍できるエンジニア」になるためのを転職サポート。