
SESから自社開発企業への転職は可能ですが、実務経験の年数だけでなく「開発への当事者意識」が問われます。評価されやすいのは、担当工程の広さ・自主学習の実績・自社サービスへの理解です。
SES経験者が自社開発企業へ転職する事例は珍しくありません。ただし、自社開発企業は採用にかける時間とコストが大きいため、実務経験の年数だけでなく「入社後にどう活躍してくれるか」を見極めようとする傾向があります。
自社開発企業は、他社の指示のもとで作業する経験より、自ら課題を見つけて改善した経験や、プロダクトへの興味関心を重視する傾向があります。SES経験そのものがマイナスになるわけではなく、「その経験から何を学び、何を語れるか」が問われます。
キャリアカンパニーが直近1年間に支援した、SESから自社開発企業への転職実績は15名。準備期間の目安は3ヶ月〜半年で、転職先は社内SEが多い傾向にあります。
以下のうち当てはまるものが多いほど、自社開発企業への転職で評価されやすい傾向があります。
SESでの不満から「とにかく今の環境を出たい」という気持ちだけで応募すると、志望動機が曖昧になりがちです。まずは自分が何を実現したいのかを整理することが先決です。
「ただ言われた作業をこなしていた」という自己認識のままだと、面接でも経験を魅力的に伝えられません。担当業務を分解し、工夫した点・苦労した点を棚卸しする作業が必要です。
自社開発企業は技術力だけでなく、チームでの働き方や価値観の一致も重視します。企業研究を怠ると、選考が進んでもミスマッチが起きやすくなります。
| 項目 | SES(客先常駐) | 自社開発企業 |
|---|---|---|
| 仕事の進め方 | 取引先に常駐し、取引先の指示のもとで業務を行う | 自社のサービス・製品を、自社のチームで開発・改善する |
| 関わる範囲 | 配属先によって、担当工程が決まる(運用・テストが中心の案件もある) | 企画・設計・開発・運用まで、プロダクトに継続して関わる |
| 求められること | 指示された業務を正確に行う力、取引先との調整 | 課題を自分で見つけ、改善する力。プロダクトへの理解 |
| キャリアの決まり方 | 配属案件によって経験が左右されやすい | 担当領域を、チーム内で広げやすい |
どちらが優れているということではなく、SESでの経験の「質」と、本人の準備次第で、自社開発企業への道が開けるかが決まります。
①
担当範囲
運用・テストだけでなく、設計や要件に関わった経験
②
改善の経験
自分で課題を見つけ、改善した事実
③
技術の裏づけ
業務外の学習、作ったもの、使える技術
④
プロダクト理解
応募先のサービスを使い、良い点・改善点を語れる
⑤
志望の一貫性
なぜSESを離れ、なぜその会社か
SES経験は、書き方次第で評価が変わります。「言われた作業をした」ではなく、「何を考え、どう動いたか」に直しましょう。
| 書き方(弱い) | 書き方(伝わる) |
|---|---|
| テスト業務を担当した | テスト項目の漏れを防ぐため、チェックリストを作成してチームに共有した |
| 運用業務を担当した | 障害対応の手順を見直し、一次対応の抜け漏れを減らすフローを作った |
| 開発の一部を担当した | 要件の不明点を自分から確認し、仕様の食い違いを早い段階で解消した |
| 時期 | やること |
|---|---|
| 1か月目 | 経験の棚卸し(担当工程・工夫・成果)。志望理由の整理。応募したい企業の条件を決める |
| 2〜3か月目 | 業務外の学習・個人制作。応募企業のサービスを使い、感想・改善点をメモする |
| 4〜6か月目 | 職務経歴書の仕上げ、応募、面接対策。必要なら転職エージェントに相談する |
| 質問 | 答えの方向性 |
|---|---|
| なぜSESから自社開発に移りたいのですか? | 不満ではなく、「プロダクトに継続して関わりたい」という目的で話す |
| SESでどんな工夫をしましたか? | 具体的な行動と、その結果・学びを話す |
| 当社のサービスをどう思いますか? | 実際に使った感想と、改善提案を話す |
| 入社後、どんな役割を担いたいですか? | 段階を踏んで、担当範囲を広げるイメージを話す |
| 技術の学習は、どう進めていますか? | 教材・期間・作ったものを具体的に話す |
面接全体の準備は未経験IT転職の面接でよく聞かれる質問と答え方、退職理由の伝え方はIT転職の退職理由の伝え方も参考にしてください。
✅ 自社開発への転職チェックリスト
| 用語 | かんたんな説明 |
|---|---|
| SES(客先常駐) | 技術者が、取引先に常駐し、技術を提供する契約形態 |
| 受託開発 | 顧客の依頼を受けて、システムを開発する形態 |
| 自社開発 | 自社のサービス・製品を、自社で開発・運営する形態 |
| プロダクト | 自社で開発・運営するサービスや製品 |
| 要件定義 | 何を作るのかを、整理して決める工程 |
| スクラム | 短い期間で、計画・開発・振り返りを繰り返す開発の進め方 |
| 技術スタック | 使っている言語・フレームワーク・インフラなどの技術の組み合わせ |
| カルチャーフィット | 会社の価値観・働き方と、本人が合っているか |
担当工程・工夫した経験、業務外の学習・成果物、応募先サービスへの理解、そして、志望動機の一貫性です。準備期間は、3か月〜半年が目安です。
経験自体は不利にはなりません。「その経験から何を学び、何を語れるか」が問われます。
一概には言えません。会社の規模・業績・評価制度によって異なります。年収の総額と評価制度を、個別に確認しましょう。
自社のシステムを担当する点では近いですが、社内向けのシステムの運用・改善が中心の場合が多く、役割が異なります。
求人サイトに加え、転職エージェントを通して、企業の内部情報を確認する方法があります。応募前に、サービスを使い、感想・改善点をまとめましょう。
①
書類選考
職務経歴書・成果物(GitHubなど)で、担当範囲と学習を確認
②
カジュアル面談
会社・サービスの説明と、お互いの理解を深める場
③
技術面接・課題
経験した技術の深掘り、コーディングや設計の課題が出ることも
④
最終面接
志望動機・価値観・入社後の役割を確認
企業によって、フローは大きく異なります。応募前に、エージェントを通して、「選考の回数」「技術課題の有無」「カジュアル面談の位置づけ」を確認しておくと、準備しやすくなります。
| テーマ | 聞かれ方の例 | 準備のしかた |
|---|---|---|
| 経験した技術の深掘り | 「そのとき、なぜその設計にしましたか」 | 担当した機能の目的・設計の理由・代替案を、整理する |
| トラブル対応 | 「一番大変だった不具合は何ですか」 | 原因の調べ方・解決策・再発防止を、順に話せるようにする |
| コードの読み書き | 簡単なコーディング課題・コードレビュー | 基本的なアルゴリズム・SQLを、手を動かして練習する |
| サービスの理解 | 「当社のサービスで、改善したい点は」 | 実際に使い、具体的な改善案を1〜2つ用意する |
| 経験 | 具体例 | 転職での見せ方 |
|---|---|---|
| 担当範囲を広げる | 設計書のレビュー参加、要件の確認、テスト設計に関わる | 「実装だけでなく、設計・テスト設計も担当」と書く |
| 改善提案を出す | 手順の自動化、チェックリスト化、レビュー観点の整理 | 課題・工夫・結果(実際の数字だけ)を書く |
| 技術を深める | 使っている言語・フレームワークの内部の仕組みを学ぶ | 学習の記録・勉強会の発表を示す |
| 個人開発 | 小さなサービスを作り、公開する | サービスの目的・工夫・改善履歴を、READMEにまとめる |
| 時期 | やること | 成果物 |
|---|---|---|
| 1か月目 | 経験の棚卸し、志望理由の整理、応募したい企業の条件決め | 経験メモ、志望理由の下書き |
| 2か月目 | 個人開発・技術学習、応募先のサービスの利用 | 成果物(公開済み)、サービスの感想・改善案メモ |
| 3か月目 | 職務経歴書の作成、エージェントへの相談、応募 | 職務経歴書、応募先リスト |
| 4〜6か月目 | 面接・技術面接、条件確認、退職の準備 | 内定、退職・入社日の調整 |
⚠ 注意
「SESが嫌だから」という理由だけの志望動機は、評価されにくくなります。不満ではなく、「何を実現したいか」を軸に、応募先の事業・サービスと結びつけて話しましょう。
面接全般の準備は未経験IT転職の面接でよく聞かれる質問と答え方、自社開発の特徴は自社開発のメリットを徹底解説が参考になります。
SESから転職する場合、「次の会社で、何を得たいのか」を先に決めることが大切です。当社の面談では、次の点を確認しています。
また、直近で正社員としての経験が1年以上あるかどうかで、受けられる会社の幅が変わります。転職のタイミングは、この点も踏まえて考えてください。確認ポイントはブラックなIT企業の見分け方、キャリアの考え方はITエンジニアの年収が上がりにくい理由をご覧ください。
SESから自社開発企業への転職は可能です。SESで複数の現場を経験したことを強みに、開発スキルの習得と実績の整理を進めれば、自社開発企業の選考でも評価されます。ただし採用のハードルは高めなので、学習と応募準備を計画的に進めることが大切です。
SESでの不満から「とにかく今の環境を出たい」という気持ちだけで応募すると、志望動機が曖昧になりがちです。
SESから自社開発企業への転職は十分に可能な選択肢ですが、経験年数以上に「何を考え、どう準備してきたか」が問われます。一人での準備に不安がある場合は、客観的な視点を借りながら進めるのも有効です。
自社開発企業への転職に向けて経験の整理を進めたい方は、無料キャリア診断や無料相談をご活用ください。
アドバイザー
百瀬将悟
大学卒業後、不動産会社に入社。その後、求人広告営業・キャリアアドバイザーを経験。現在は両面型のアドバイザーとIT企業の採用コンサルティングに従事。
採用と転職市場の両方を理解している点を強みとし、「市場価値を高めながら活躍できるエンジニア」になるためのを転職サポート。