
執筆:百瀬将悟(キャリアアドバイザー/株式会社エンデバース)|情報の確認日:2026年10月21日
※この記事の公的資料・公式ドキュメントの数値は、2026年10月21日に原典を開いて確認したものです。将来の需要を断定するものではありません。
確認できた公的資料の範囲では、インフラエンジニアという職種そのものがなくなる兆候は見当たりません。国の職業情報サイト(厚生労働省 jobtag)は、サーバーを物理的に設置する仕事は減っている一方で、仕事内容は変化しながらも「ITの根幹を担うエンジニアとして需要は高い」と説明しています。運用・管理の仕事についても、集約化や無人化が進むが「一定の需要がある」としています。
ただし、変わっているのは仕事の中身です。機器の設置や、手順書どおりの定型作業は減っていく側にあります。反対に、クラウド上の設計・構築、自動化の仕組みづくり、障害時の判断、権限や承認のルールづくりは、人が担う比重が残る(または増える)と考えられます。AIについても、クラウド事業者が障害の一次調査を支援するAIエージェントを公式に提供し始めており、「AIは関係ない」とは言えない段階です。
この記事で整理することは3つです。
⚠ 注意: 国の統計に、「インフラエンジニア単独」の将来の需給を予測したものは、今回確認した範囲では見つかりませんでした。以下の数値の多くは「IT人材全体」や「職業分類」単位です。インフラの将来性を直接証明するものではなく、判断材料の一つとして読んでください。
| 出典(調査年) | 確認した内容 | 読み取れること | 読むときの注意 |
|---|---|---|---|
| 厚生労働省 jobtag「システムエンジニア(基盤システム)」(令和7年度の統計) | 物理サーバーを顧客先に設置する仕事は減少。一方、ECサイトやAI・IoTなど新しい分野でITインフラが求められている。ハローワークの有効求人倍率(令和7年度)は全国2.24倍 | 仕事は変わるが、需要は残るという国の整理 | 職業分類単位の統計で、インフラエンジニアのみの数字ではない。求人倍率はハローワーク求人のみ |
| 同「運用・管理(IT)」(令和7年度の統計) | データセンターやクラウドへの集約化・運用の無人化が進む。一方で自社内にシステムを持つ企業は一定数あり、新規導入も多く、運用・管理の仕事には一定の需要がある。有効求人倍率(令和7年度)は全国2.2倍 | 運用だけの仕事は、自動化の影響を受けやすい側面がある | 同上 |
| 厚生労働省「一般職業紹介状況」(令和7年度平均・2026年4月28日公表) | 全職業の有効求人倍率は1.20倍(前年度1.25倍) | 上の2.24倍・2.2倍を比べる基準 | 全職業平均との比較にすぎず、職業の中身は異なる |
| 総務省「令和7年通信利用動向調査」企業編(2026年5月29日公表。調査時点は令和7年8月末、常用雇用者100人以上の企業) | クラウドを一部でも利用する企業は83.5%。全社的に利用は60.0%(前年から6.9ポイント増)、一部の事業所・部門で利用は23.5% | クラウドを前提とした基盤の設計・運用が広がっている。一方、全社で使う企業は6割で、併存する企業も多い | 100人未満の企業は対象外。基幹システムまでクラウド化されているかは分からない |
| IPA「DX動向2026」(2026年7月30日公開。調査は2026年4月中旬〜6月中旬、1,799社) | DXを推進する人材の「量」が「やや不足」「大幅に不足」の合計は85.5%。AIを「導入している」42.3%、「試験利用」15.7%(合計58.0%)。AI導入・運用上の課題の1位は「専門人材が不足している」50.1% | IT人材全般の不足感が続く中、AIの導入も広がっている | インフラ人材を直接聞いた調査ではない。「専門人材」はAI関連の人材 |
| doda「転職求人倍率レポート」(2026年8月分・2026年9月17日公表) | エンジニア(IT・通信)は12.04倍(前月11.26倍)。全体は2.86倍 | IT・通信エンジニアの求人は転職希望者より多い状況 | IT・通信エンジニア全体の数字で、インフラや未経験者向け求人に限った倍率ではない |
IT人材の不足を説明する記事で、「経済産業省の調査で2030年に最大約79万人不足」という数字をよく見かけます。原典(経済産業省「IT人材需給に関する調査(概要)」、平成31年(2019年)4月)を確認すると、次のとおりです。
同じ調査には、もう一つ参考になる試算があります。従来型のIT(受託開発や保守・運用サービス等)から、IoT・AIを活用する先端ITへ人材が移っていく度合い(リスキル率)を3通り置いたものです。移る人が少ない(年1%)場合、2030年は先端IT人材が約55万人不足する一方、従来型は約10万人の供給超過となります。数字そのものは古い試算ですが、「需要が減る」のではなく「求められる中身が移る」という見方は、jobtagの説明とも合っています。
厚生労働省の一般職業紹介状況(令和8年3月分)では、情報通信業の新規求人は前年同月比で15.8%減でした。ハローワーク経由の単月の数字であり、これだけで需要の変化を判断することはできませんが、IT関連の求人も景気や企業の投資動向で動くことは確かです。求人倍率の高さ=誰でも入れる、ではありません。
変化を整理すると、次のようになります。各用語の詳しい解説は、既存の記事で確認できます。
| 変化 | 減る・比重が下がる作業 | 比重が増える作業 | 詳しい解説 |
|---|---|---|---|
| オンプレミス→クラウド | 機器の設置、配線、物理サーバーの保守 | クラウド上の設計・構築、権限やネットワークの設定、コスト管理 | クラウド環境とは/オンプレミスとは |
| 手作業→IaC | 管理画面での手動設定の繰り返し | 構成をコードで定義し、レビューして適用する | Terraformとは |
| 手動運用→SRE的な運用 | 手作業の繰り返し(障害対応・チケット処理) | 自動化、監視の設計、信頼性の目標づくり | SREエンジニアとは |
クラウド事業者は、障害の調査を支援するAIエージェントを提供しています。
ここから言えるのは、障害の一次切り分け(ログや指標の突き合わせ、原因候補の提示)は、AIが担う前提の仕組みが公式に提供されていることです。同時に、AIにどのツールの利用を許可し、どの操作に承認を必要とするかを決める設計(Azureでは、ツールごとに許可・確認・拒否を設定)が必要になっています。
一方で、言えないこともあります。日本企業の現場でこれらがどの程度使われているか、運用の人員がどれだけ減るかは、今回確認した公的統計では見つかりませんでした。また、サービスの機能や提供状況は変わるため、最新の公式ページの確認が必要です。
| 作業 | AIの影響の見立て | 根拠の種類 |
|---|---|---|
| アラート対応の一次切り分け(ログ・指標の突き合わせ、原因候補の提示) | AI支援が進んでいる | 公式ドキュメントで確認(Azure・AWS) |
| 手順書どおりの定型作業、画面の目視監視 | 自動化・無人化が進みやすい | jobtag(異常を検知する仕組みで無人運転している場合がある)、Google SRE(手作業の繰り返しは自動化の対象) |
| スクリプトやIaCコードの下書き | AI支援が使われやすいと考えられる | 筆者の見立て(今回、公的な根拠は未確認) |
| 要件の聞き取り、構成の判断(可用性・コスト・セキュリティのバランス) | 人の判断が残りやすいと考えられる | 筆者の見立て |
| AIに与える権限・承認ルールの設計、AIの出力の検証 | 新しく必要になる仕事 | 公式ドキュメントで確認(設計が必要な点)。人員需要への影響は未確認 |
| 機器の設置・配線などの物理作業 | AI単独では行えないが、クラウド化で全体の量は減っている | jobtag(物理サーバー設置の仕事は減少) |
筆者が懸念しているのは、職種がなくなることよりも、運用・監視の入口の仕事の中身が変わることです。手順書を実行するだけの仕事は、自動化やAI支援の対象になりやすいからです。これは筆者の見立てで、公的な統計で確認できたものではありません。
そのため、運用・監視から始める場合は、「手順どおりに実行する」だけで終わらせず、障害の切り分けの理由を言葉にする、手順書を改善する、簡単なスクリプトで自動化する、といった経験を早めに積むことが大切になります。入口自体は、当社の実績では現時点で開いています。業界全体の数字ではなく、将来を保証するものでもありません)。
AI全般の影響やエンジニア職全体の話は、AIでエンジニアの仕事はなくなる?で扱っています。
「インフラエンジニアは将来性がない」と言われる背景には、職種ではなく、働き方の固定化があると考えられます。次のような状態が長く続くと、経験の価値が上がりにくくなります。
☐ 入社3年たっても、手順書の実行と画面の確認だけで、改善や自動化に触れていない
☐ 担当する環境がオンプレミスの特定の製品だけで、クラウドに触れる機会がない
☐ 夜勤・シフトで学習時間が取れず、資格や技術の学習が止まっている
☐ 構築・設計の案件に移った人が、周りにほとんどいない
当社では、最初の3年は運用・監視などで経験を積み、その後に構築・設計へ進む流れをお伝えしています(自社の面談での考え方です)。ただし、運用・監視を続けているだけで自動的に構築・設計へ進めるわけではありません。会社選びの確認点は、「インフラエンジニアはやめとけ」の記事でも詳しく扱っています。
最初からすべてを身につける必要はありません。1〜3を先に、4と5は入社後に広げるのが現実的だと考えています(筆者の整理です)。
| 順 | 身につけること | なぜか | 目安の資格(公式情報は次の表) | 詳しい解説 |
|---|---|---|---|---|
| 1 | ネットワークの基礎(IPアドレス、サブネット、TCPとUDP) | クラウドでもネットワークの設計・設定は残る。CCNAの出題範囲にも、オンプレミスとクラウドの両方のトポロジが含まれる | CCNA | ネットワーク資格ガイド |
| 2 | Linuxの基本操作 | サーバー運用の基本。障害切り分けでも使う | LinuC レベル1 | Linuxとは/Linuxコマンド一覧 |
| 3 | クラウドの基礎(仮想サーバー、権限、責任共有モデル) | 総務省の調査で、クラウド利用企業は8割を超える | AWS Cloud Practitioner → Solutions Architect Associate | AWS資格ロードマップ |
| 4 | 自動化(スクリプト、IaCの読み書き) | IaC・SREの考え方が広がっている | 資格より、小さな成果物や業務での改善が示しやすい | インフラにプログラミングは必要?/Terraformとは |
| 5 | AIツールの使い方と、出力を検証する力 | AIの回答が正しいか、権限や影響範囲は適切かを人が確認する必要がある | (特になし) | AIでエンジニアの仕事はなくなる? |
資格は、学習範囲の目印と、選考で学習の証拠を示す手段です。jobtagの「運用・管理(IT)」でも、基本情報技術者などの資格が就職に有利とされ、入職後に取る資格としてLPIC・CCNAなどが挙げられています(学歴や資格は特に必要とされない、とも書かれています)。
| 資格 | 公式で確認できた内容 | 確認先 |
|---|---|---|
| 基本情報技術者試験(IPA) | CBT方式で随時実施。科目Aは90分・60問、科目Bは100分・20問 | IPA 試験区分ページ |
| CCNA(Cisco、200-301) | 試験時間120分、日本語・英語で受験可。範囲は6分野。確認した試験範囲の資料(v1.1)には、「ネットワーク運用におけるAIと機械学習の説明」「AnsibleやTerraformの機能の認識」「REST API」「JSON」が含まれる(自動化とプログラマビリティは配点10%)。範囲は予告なく変更されうるとも明記 | Cisco 公式 |
| LinuC レベル1 | 仮想環境を含むLinuxの基本操作とシステム管理ができる技術者を認定。101試験・102試験の両方に合格。受験の前提となる実務経験や資格はない | LinuC 公式 |
| AWS Certified Cloud Practitioner | クラウド未経験者向け。基礎的な理解を証明。90分・65問。有効期間3年。受験料100USD | AWS 公式 |
| AWS Certified Solutions Architect – Associate | コストと性能を考えた設計力を証明。130分・65問。有効期間3年。推奨は設計実務1年以上で、IT業務経験がない人は先にCloud Practitionerが勧められている。受験料150USD | AWS 公式 |
※受験料・試験範囲・バージョンは変わることがあります。申し込み前に必ず公式ページで確認してください。
運用・監視から構築・設計へ進む道筋について、当社の紹介実績では次のとおりでした。
運用・監視を3年以上経験し、資格も持っていた方20名のうち19名(95%)が、入社後半年ほどで構築・設計を担当しました。 出典: キャリアカンパニー(株式会社エンデバース)自社集計(2025年8月〜2026年7月入社の201名のうち該当の20名)
⚠ 注意: これは業界全体の数字ではなく、当社の紹介実績です。対象が20名と少ないため、傾向を示す参考値にとどまり、「3年たてば全員が構築・設計に進める」とは言えません。インフラエンジニアの将来性を証明する数字でもなく、入社後の進み方の一例として見てください。詳しい進め方は運用・監視から構築・設計へ進む方法にまとめています。
将来性の視点で、年次ごとに何に触れておくとよいかを整理すると、次のようになります(筆者の整理です)。
| 時期 | 触れておきたいこと |
|---|---|
| 1年目 | 障害の切り分けと手順書の読み書き。AIツールで調べる場合も、出力が正しいかを必ず確認する習慣をつける |
| 2年目 | 手順書の改善、簡単なスクリプトでの自動化、クラウドの基礎資格 |
| 3年目以降 | 小規模な変更・構築への参加、IaCの読み書き、上位資格 |
以下は、各ページに書かれている事実のみです。いずれも個人の事例で、結果を保証するものではありません。
自分の経験で、どの職種から始められるか。 無料で相談できます。→
将来性は、「インフラエンジニア」という職種名より、どんな環境でどんな経験を積めるかで決まる部分が大きいと考えています。応募前や面談で、次の点を確認してください。
☐ 配属: 運用・監視だけか、構築・設計・自動化に関わる機会があるか。運用から構築に移った方が実際にいるか(何年目に、どんな条件で)
☐ 環境: クラウド(AWS・Azureなど)に触れる案件があるか。オンプレミスのみの場合、クラウドへ移る計画や機会があるか
☐ 学習機会: 資格取得の支援(受験料の補助、学習時間の確保)があるか
☐ 自動化への関与: スクリプトやIaCに触れる時間が業務の中にあるか
☐ 勤務形態: 夜勤・シフトの頻度。学習の時間を確保できる勤務か(夜勤の実態)
☐ AIの利用ルール: 業務でAIツールを使える環境か。使える場合の情報管理のルールがあるか
☐ 研修・OJT: 入社後の教育体制と、最初に担当する業務の内容
面談で聞くときは、「運用から構築に移った方は、何年目に、どんな経験を評価されましたか」のように、実例を聞くと見分けやすくなります。エージェントの選び方はインフラエンジニア向け転職エージェントの選び方、自社データの全体像はインフラエンジニア転職の実態データを参照してください。
職種ごとなくなる兆候は、今回確認した公的資料からは見当たりません。ただし、障害の一次切り分けなど、AI支援が進んでいる作業はあります(AWS・Microsoftの公式ドキュメント)。手順書どおりの作業だけでなく、設計・自動化・判断に関われる経験を積むことが重要です。
クラウドになっても、利用者側の設計・設定・権限管理は残ります(AWSの責任共有モデル)。jobtagも、基盤システムエンジニアの仕事は「クラウド上で設定や調整を行い構築するもの」へ変化していると説明しています。ただし、機器の設置などの物理的な仕事は減っています。
遅いとは言い切れません。業界全体の数字ではありません)。国のjobtagでも、運用・管理の仕事は学歴や資格が特に必要とされていません。ただし、手順どおりの作業だけに留まらない経験を積む前提で選ぶことが大切です。
最初から必須とは限りませんが、自動化やIaCの読み書きの比重は増えています。CCNAの出題範囲にも、API・JSON・Terraformなどの内容が含まれます。詳しくはインフラエンジニアにプログラミングは必要かをご覧ください。
自分の経験で、どの職種から始められるか。 無料で相談できます。→
アドバイザー
百瀬将悟
大学卒業後、不動産会社に入社。その後、求人広告営業・キャリアアドバイザーを経験。現在は両面型のアドバイザーとIT企業の採用コンサルティングに従事。
採用と転職市場の両方を理解している点を強みとし、「市場価値を高めながら活躍できるエンジニア」になるためのを転職サポート。