
データベーススペシャリスト試験(DB)は、データベースの設計・運用・性能の力を問う、情報処理技術者試験の高度試験です。IPAの統計では、令和7年度秋期の合格率は18.4%でした。2026年度は、2027年2月〜3月に実施される後期試験が、現行制度での最後の機会です。この記事では、試験の概要、日程、合格率から見る難易度、出題分野、午後問題の対策、学習計画、転職での活かし方までまとめました。
この記事のポイント
データベーススペシャリスト試験は、データベースの設計から、運用・保守までを、体系的に問う試験です。午後の問題では、事例を読み、データモデルの設計、SQLの記述、性能や障害の原因などを、記述で答えます。
未経験の方が最初に受ける試験ではありません。まず、基本情報技術者試験などで基礎を固め、実際にSQLを書き、データベースに触れながら、中盤のキャリアで目指すのが、現実的な流れです。資格全体の進め方は、IT資格のロードマップで整理しています。
一方で、データベースの知識は、サーバー、アプリケーション、データ分析など、幅広い仕事の土台になります。学習内容は、実務でも、そのまま役立ちます。
IPAは、データベーススペシャリスト試験の対象者像を、「高度IT人材として専門分野をもち、データベースに関する固有技術を活用して、情報システム基盤の企画から保守までの中心的な役割を担う人、またはその技術支援を行う人」としています。
データベースエンジニアの仕事内容と年収は、データベースエンジニアとはで解説しています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 運営 | IPA(独立行政法人 情報処理推進機構) |
| 略称 | DB(Database Specialist Examination) |
| 試験の区分 | 情報処理技術者試験の「高度試験」のひとつ |
| 対象者像 | データベースの技術を活用して、システム基盤の設計・運用の中心を担う人 |
| 受験の資格 | 年齢・学歴・経験の制限はない |
IPAの公式ページでは、試験の科目は、次のように表記されています。従来の「午前I・午前II・午後I・午後II」と、対応します。
| 科目 | 従来の呼び方 | 試験時間 | 形式 | 出題数と解答数 |
|---|---|---|---|---|
| 科目A-1 | 午前I | 50分 | 多肢選択式(四肢択一) | 30問出題・30問解答 |
| 科目A-2 | 午前II | 40分 | 多肢選択式(四肢択一) | 25問出題・25問解答 |
| 科目B-1 | 午後I | 90分 | 記述式 | 3問出題・2問解答 |
| 科目B-2 | 午後II | 120分 | 記述式 | 2問出題・1問解答 |
科目A-1(午前I)には、一定の条件を満たす場合に、受験が免除される制度があります。条件や期間は、IPAの「科目A-1試験免除」のページで案内されています。自分が対象かを、受験前に確認してください。
IPAの案内では、データベーススペシャリスト試験は、2026年度はCBT方式により、後期に実施されます。令和8年度後期の日程は、次のとおりです。
| 項目 | 日程(令和8年度後期) |
|---|---|
| 申込受付期間 | 2027年1月27日(水)〜2月27日(土) |
| 科目A-1・A-2の実施期間 | 2027年2月20日(土)〜3月2日(火) |
| 科目B-1・B-2の実施期間 | 2027年3月16日(火)〜3月28日(日) |
| 合格発表(予定) | 2027年6月ごろ |
⚠ 注意
受験料は、令和8年度前期の高度試験で7,500円(税込)でした(IPA)。後期の受験料と、申込みの手順は、IPAの公式サイトで、必ず確認してください。日程や受験料は、変更される場合があります。
IPAは、現行の試験制度を、2026年度の実施をもって終了し、2027年度から新試験制度へ移行する予定としています。新制度の区分や形式は、検討の段階であり、今後変わる可能性があります。今回の後期試験は、現行の制度で受験できる、最後の機会にあたります。
IPAが公表した令和7年度秋期の統計では、データベーススペシャリスト試験の状況は、次のとおりです。
| 項目 | 令和7年度秋期のデータベーススペシャリスト試験 |
|---|---|
| 応募者数 | 14,416人 |
| 受験者数 | 9,769人 |
| 合格者数 | 1,796人 |
| 合格率 | 18.4% |
| 合格者の平均年齢 | 31.3歳 |
同じ令和7年度秋期の、他の試験の合格率と並べると、次のようになります(IPA)。
| 試験 | 合格率(令和7年度秋期) |
|---|---|
| 応用情報技術者試験 | 24.5% |
| 情報処理安全確保支援士試験 | 22.3% |
| データベーススペシャリスト試験 | 18.4% |
| システム監査技術者試験 | 16.1% |
| エンベデッドシステムスペシャリスト試験 | 15.3% |
| プロジェクトマネージャ試験 | 14.3% |
高度試験の中では、合格率は、中位から高めの部類です。合格者の平均年齢は31.3歳で、30代前半の、実務を数年経験した方が、中心と考えられます。ただし、合格率が高いことは、易しい試験という意味ではありません。
| ポイント | 理由 | 対策 |
|---|---|---|
| 午後の記述(設計と、SQL) | 事例を読み、データモデルの設計や、SQLを、記述で答える必要がある | 過去問題で、ER図の読み取りと、SQLの記述を、繰り返し練習する |
| 正規化と、データモデルの設計 | 「なぜその設計になるか」を、根拠をもって説明する力が必要 | 正規化の手順を、表を使って、自分で何度も手を動かして確認する |
| トランザクションと排他制御 | ロックや分離レベルなど、抽象的な概念が多い | 具体的なシナリオ(二人が同時に更新した場合など)で、考えてみる |
| 実機の経験の差 | SQLやデータベースを、触った経験が少ないと、イメージが湧きにくい | 自分のパソコンにデータベースを入れて、SQLを実際に実行する |
| 分野 | 押さえたい内容 | 用語の例 |
|---|---|---|
| データモデリング | 概念・論理・物理の設計の考え方 | ER図、実体と関連、多重度、スーパータイプとサブタイプ |
| 正規化 | データの重複と矛盾を、減らす設計 | 第1〜第3正規形、ボイスコッド正規形、関数従属 |
| SQL | データの検索・更新と、定義 | SELECT、JOIN、GROUP BY、サブクエリ、ビュー、ウィンドウ関数 |
| トランザクション管理 | 複数の処理を、安全に実行する仕組み | ACID特性、コミットとロールバック、排他制御、デッドロック、分離レベル |
| 性能設計 | 処理を速くするための設計と調整 | インデックス、実行計画、統計情報、パーティション |
| 運用・障害対応 | バックアップと、障害からの復旧 | バックアップ方式、ログとチェックポイント、リカバリ、レプリケーション |
| 分散・大規模データ | 複数のサーバーや、大量データの扱い | 分散データベース、NoSQL、データウェアハウス、データレイク |
| セキュリティ | データを守る仕組み | アクセス制御、暗号化、監査ログ、マスキング |
データベースを扱う仕事の全体像は、データベースエンジニアとはで解説しています。データ分析の入り口は、データアナリストとはもご覧ください。
午後は、記述式です。事例のシステムについて、データモデルの設計、SQL、性能、障害対応などの設問に、記述で答えます。午後I(科目B-1)は3問から2問を、午後II(科目B-2)は2問から1問を選んで、解答します。
ポイント
午後は、「知っている知識を書く」試験ではなく、「事例の条件から、設計や原因を導く」試験です。本文の言葉を使い、設問の指定に合わせて書く練習が、得点につながります。
正規化は、データの重複と矛盾を減らすための、設計の手順です。試験でも、実務でも、頻繁に使う考え方です。次の簡単な例で、手順を確認します。
| 段階 | 状態 | やること |
|---|---|---|
| 非正規形 | 1つの表に、注文の情報と、複数の商品の情報が、繰り返して入っている | 繰り返しの部分を、取り出す |
| 第1正規形 | 1つの欄に、1つの値だけが入っている(繰り返しがない) | 主キーを決め、主キーの一部だけで決まる項目を、探す |
| 第2正規形 | 主キーの一部だけで決まる項目を、別の表に分けた状態 | 主キー以外の項目で決まる項目を、探す |
| 第3正規形 | 主キー以外の項目で決まる項目を、別の表に分けた状態 | この状態が、実務の設計の基本 |
たとえば、受注の表に、商品名と、商品の単価が、毎回入っていると、商品名が変わったときに、すべての行を直す必要があります。商品の情報を、商品の表に分けると、1か所を直すだけで済み、矛盾も起きにくくなります。
⚠ 注意
性能のために、あえて正規化を崩す(非正規化する)設計もあります。ただし、「なぜ崩すのか」を、説明できることが前提です。試験でも、その理由を問う設問が出ます。
データベースでは、複数の利用者が、同時に、同じデータを更新することがあります。この状況で、データの矛盾を防ぐ仕組みが、トランザクションと排他制御です。
| 用語 | 意味 | 試験での問われ方 |
|---|---|---|
| ACID特性 | トランザクションが守る4つの性質(原子性・一貫性・独立性・永続性) | それぞれの意味を、具体的な場面で説明する |
| コミットとロールバック | 処理を確定する/取り消す | 障害時に、どこまで元に戻るかを答える |
| ロック | 他の処理が、同じデータを更新できないようにする | 共有ロックと専有ロックの違いと、待ちが発生する条件 |
| デッドロック | お互いに、相手のロックの解除を待ち続ける状態 | 発生する手順と、防ぐ方法(更新の順序をそろえるなど) |
| 分離レベル | 他の処理の途中結果が、どこまで見えるかの設定 | 読み取りの食い違いが、どのレベルで起きるか |
たとえば、在庫が1つの商品を、二人が同時に購入しようとした場合、排他制御がなければ、二人とも購入できてしまいます。ロックにより、片方の処理が完了するまで、もう片方を待たせることで、矛盾を防ぎます。
この仕組みは、具体的なシナリオで考えると、理解が進みます。「誰が、何を、どの順で更新するか」を、紙に書き出して、確認してみてください。
データベースは、手を動かして学ぶと、理解が一気に進みます。無料で使えるデータベース(PostgreSQLやMySQLなど)を、自分のパソコンに入れて、実際にSQLを実行できます。
この練習は、午後問題の「性能の原因を答える」「排他制御の問題を答える」設問に、直結します。実務でも、役に立つ力です。
仕事をしながら受験を目指す場合の、16週間の例です。生活に合わせて、調整してください。
| 期間 | 学ぶこと | やること |
|---|---|---|
| 1〜4週目 | データモデル、正規化、SQLの基礎 | 午前の過去問題を解き、SQLを自分のパソコンで実行する |
| 5〜8週目 | トランザクション、排他制御、性能設計 | 午前の過去問題を、分野別に解く。ロックの動きを、実機で試す |
| 9〜12週目 | 午後Iの読み方と、解き方 | 午後Iの過去問題を、1問ずつ、時間を計って解く |
| 13〜15週目 | 午後IIの解き方と、総復習 | 午後IIの過去問題を解く。間違えた分野を、復習する |
| 16週目 | 直前の確認 | 苦手分野の見直しと、試験会場・持ち物の確認 |
学習時間の目安は、公式には定められていません。経験や知識の量で、大きく変わります。まず、午前の過去問題を解いて、現在の力を確認してから、計画を立てましょう。後期の試験は、2027年2月〜3月です。逆算して、学習を始める時期を決めてください。
転職サービスdodaの「平均年収ランキング(2025年版、2024年9月〜2025年8月)」では、データベースエンジニアの平均年収は417万円、IT・通信の技術系全体の平均は469万円でした。経験者を含む全体の平均です。
ただし、資格だけで、採用が決まるわけではありません。採用側が見るのは、「どのようなデータベースを、どの規模で、設計・運用したか」です。資格は、その経験を、体系的に理解していることの裏付けになります。
| 状況 | 資格の位置づけ | 進め方 |
|---|---|---|
| 未経験〜1、2年目 | 基礎資格を優先 | 基本情報技術者などで基礎を固め、SQLを書く機会のある仕事で、経験を積む |
| SQLや運用の経験が数年ある | 経験の裏付けとして、効果が高い | 午後問題の学習を、日々の業務と結び付ける。設計・性能改善の担当を、増やす |
| 設計・性能改善の経験が豊富 | 専門性の客観的な証明 | 資格の取得に加え、職務経歴書で、データ量・構成・役割を具体的に示す |
当社の自社集計(2025年8月〜2026年7月入社)では、インフラ分野に入社した170名の入社時年収は、中央値で320万円でした。運用・監視の経験を3年程度積み、資格を持つ20名のうち19名(95%)が、入社後半年程度で、構築・設計を担当しています。進み方は、運用・監視から構築・設計へ進む方法をご覧ください。
| 段階 | 主な役割 | 身につけたいこと |
|---|---|---|
| 運用・保守 | データベースの稼働監視、バックアップの確認、問い合わせ対応 | SQLの基本、ログの読み方、障害の一次対応 |
| 構築・設計 | データベースの設計・構築、性能の調整 | データモデルの設計、正規化、インデックスの設計 |
| 専門性の強化 | 性能改善、移行、クラウドのデータベース、データ基盤 | クラウドの知識、データの設計、チームのリーダーシップ |
キャリアカンパニーでは、未経験・若手のITエンジニアの転職を支援しています。「データベースの仕事に進みたい」「将来は設計まで担当したい」という方には、運用・監視から経験を積み、上位の工程へ進める企業を、ご案内しています。資格の学習と転職活動の両立も、面談で、状況に合わせて計画を立てます。
受験前のチェックリスト
IPAの統計では、令和7年度秋期の合格率は18.4%でした(応募14,416人、受験9,769人、合格1,796人)。合格者の平均年齢は31.3歳です。年度によって変動するため、最新の統計は、IPAの公式サイトで確認してください。
受験の資格に、年齢・学歴・経験の制限はありません。ただし、午後問題は、データモデルやSQLを、記述で答える力が必要です。未経験の方は、まず、基本情報技術者試験などで基礎を固め、自分のパソコンでSQLを実行して、慣れることをおすすめします。
IPAの案内では、データベーススペシャリスト試験は、2026年度はCBT方式により後期に実施されます。申込みは2027年1月27日〜2月27日、科目A-1・A-2は2027年2月20日〜3月2日、科目B-1・B-2は3月16日〜3月28日です。最新の情報は、IPAの公式サイトで確認してください。
IPAは、2027年度から新試験制度へ移行する予定としています。区分や形式は、検討の段階であり、今後変わる可能性があります。最新の情報は、IPAの公式サイトで確認してください。
経験がなくても、学習で身につけられます。ただし、午後問題で、SQLを記述するため、実際に書いて動かす練習が欠かせません。無料のデータベースを、自分のパソコンに入れて、練習してください。
専門性の裏付けとして、評価される場面があります。ただし、採用で重視されるのは、実務での経験です。資格と、職務経歴書での経験の示し方を、あわせて準備してください。
データベーススペシャリスト試験は、データの設計・運用の専門性を問う試験です。プロジェクトマネージャ試験は、プロジェクトの管理を問う試験です。両方とも、高度試験です。詳しくは、プロジェクトマネージャ試験の記事をご覧ください。
試験の最新情報は、必ず、IPAの公式サイトで確認してください。キャリアの進め方や、資格と転職活動の両立で迷ったときは、お気軽にご相談ください。
アドバイザー
百瀬将悟
大学卒業後、不動産会社に入社。その後、求人広告営業・キャリアアドバイザーを経験。現在は両面型のアドバイザーとIT企業の採用コンサルティングに従事。
採用と転職市場の両方を理解している点を強みとし、「市場価値を高めながら活躍できるエンジニア」になるためのを転職サポート。