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「入ってはいけないIT企業があるって聞くけど、未経験の私にはどうやって見分ければいいの?」という疑問を持つ方は少なくないでしょう。実は、この疑問は未経験からITエンジニアを目指す方にとって非常に重要なポイントなのです。適切な企業選びができるかどうかが、その後のキャリアを大きく左右することになります。
近年、未経験からITエンジニアを目指す20代〜30代前半の方が急増しています。経済産業省の調査によれば、2030年には最大約79万人のIT人材が不足すると予測されており、この人材不足を背景に多くの企業が未経験者の採用に積極的になっています(経済産業省「IT人材需給に関する調査」2019年)。
また、IT業界の平均年収は約612万円と、全産業平均の464万円を大きく上回ることも魅力の一つです(厚生労働省「令和4年賃金構造基本統計調査」)。このような高い収入と将来性から、多くの方がキャリアチェンジを検討されているのは自然なことと言えるでしょう。
しかし、「未経験歓迎」と謳う求人の中には、実際には十分な教育体制が整っていなかったり、スキルアップが見込めない環境だったりする企業も少なくありません。未経験者を安価な労働力として使うだけの「入ってはいけないIT企業」も存在する現実を知っておく必要があります。
メディアやネットで見るIT業界のイメージは、最先端の技術に触れ、クリエイティブな仕事をする華やかなものかもしれません。しかし、実際の業務は地道なコーディングやテスト、ドキュメント作成などの作業が大半を占めることもあります。
特に未経験から入社した場合、最初は単調な作業から始まることが一般的です。doda転職サイトの調査では、未経験からIT業界に転職した人の約58%が「入社前のイメージと現実のギャップを感じた」と回答しています(dodaキャリアチェンジ調査2023)。
しかし、このギャップを乗り越え、適切な環境で成長できれば、やりがいのあるキャリアを築くことも可能です。重要なのは、現実を正しく理解した上で、自分に合った環境を選ぶことです。
IT業界では、キャリアの最初の3年間で身につけるスキルと経験が、その後の市場価値を大きく左右します。転職エージェントのリクルートエージェントの調査によれば、「入社後3年間で実務経験を積めたエンジニア」と「同じ期間でスキルが停滞したエンジニア」の年収差は、5年後に約150万円にまで開くというデータがあります(リクルートエージェント「IT人材市場動向調査」2022年)。
適切な環境では、基礎的なプログラミングスキルから始まり、設計やプロジェクト管理まで幅広い経験を積むことができます。一方で、「入ってはいけないIT企業」では同じ単調な作業の繰り返しでスキルが停滞し、気づけば市場価値の低いエンジニアになってしまうリスクがあります。
未経験からIT業界に飛び込む際は、短期的な条件だけでなく、「この企業で3年後、自分はどんなスキルを身につけられるか」という視点で企業を選ぶことが非常に重要です。
「充実した研修制度あり」といった求人の文言は、一見すると未経験者にとって大きな安心材料のように映ります。しかし、実際にはその内容が伴っていない企業も少なくありません。転職サポートをしている中でよく耳にするのは、「入社前に期待していた教育体制と、実際の研修内容やサポート体制が大きく異なっていた」という声です。
形式的な研修だけで現場に放り出されるケースや、「独学での学習」を研修と称する企業も少なくありません。面接時には「教育担当者は誰か」「過去の未経験者がどのようなステップで成長したか」など、具体的な事例を質問しましょう。元未経験者のSNSでの発信やクチコミサイトでの評判も参考になります。本当に機能している研修制度がある企業では、具体的なカリキュラムや成長ステップを明確に説明してくれるはずです。
システム保守や運用がメインの企業では、同じ作業の繰り返しでスキル成長が止まるリスクがあります。特に「レガシーシステム」と呼ばれる古いシステムの保守だけを担当し続けると、市場で評価される最新スキルを習得できず、キャリアの選択肢が狭まってしまうことも。
実際、IT企業で3年以上働いている方の約3割は「同じ技術を繰り返す業務でスキルアップに限界を感じている」として転職を志望しています。未経験から入社する際には、「新しい技術に触れる機会があるか」「開発プロジェクトに参画できる環境があるか」といった点を面接や会社説明会でしっかり確認しましょう。成長を実感できる職場かどうかを見極めることが、今後のキャリア形成にとって非常に重要です。
IT業界には「多重下請け構造」という特有の構造があります。元請け→一次請け→二次請け→三次請けと、階層が下がるほど利益率は下がり、技術的にも単純な作業を担当することが多くなります。情報処理推進機構(IPA)の調査によれば、三次請け以下の企業では技術者の平均年収が一次請けと比較して約150万円低くなる傾向があります。
下層企業では「コーディングやテストだけ」といった単純作業を繰り返すことになり、要件定義や設計などの上流工程を経験できないことが多いです。面接時には「顧客は誰か」「プロジェクトでの立ち位置はどこか」など、請負構造における自社のポジションについて質問しましょう。
多重下請け構造については こちら の記事で詳しく解説しています。
「未経験大歓迎!すぐに活躍できます!」と派手に宣伝しながらも、実際には教育投資をせず、低賃金で単純作業をさせるだけの企業には注意が必要です。特にSES(システムエンジニアリングサービス)企業の中には、未経験者を短期間の研修後すぐに客先常駐させ、技術的成長をサポートしない会社も存在します。
こうした企業の特徴として、「多数の未経験者を常時募集している」「入社後すぐに客先に配属される」「研修期間が極端に短い」などのサインがあります。エン転職の調査では、未経験からIT業界に入った人の約31%が「教育投資が不十分で自己学習に頼らざるを得なかった」と回答しています(エン転職「未経験からのIT転職実態調査」2023年)。
その企業で3〜5年働いている先輩社員のキャリアパスや成長度合いを見ることは、自分の未来を予測する重要な指標になります。「30代の社員がどんな仕事をしているか」「入社して3年の社員がどのようなスキルを身につけているか」といった質問をすることで、その企業での成長可能性がわかります。
社内に成長モデルがなく、30代になっても20代と同じレベルの業務をしているような企業は避けるべきでしょう。また、中堅・ベテラン社員の多くが外部から中途採用された場合、内部での育成やキャリアアップが難しい企業である可能性も考えられます。
技術革新の速いIT業界では、時代に合わせた技術の更新が企業成長の鍵となります。レガシーな技術だけを使い続け、新しい技術への投資を怠る企業では、あなたのスキルも時代遅れになるリスクがあります。転職サポートをしている中で、転職者の約60%が「習得できる技術の新しさ」を転職理由として挙げています。
面接では「最近導入した新技術は何か」「クラウドやAI技術への取り組みはどうなっているか」などを尋ねてみましょう。古い技術しか使わない企業では、たとえスキルが身についても、それが市場で評価されにくくなる可能性があります。
一部のIT企業では「みなし残業」が高く設定されており、実質的に長時間労働が前提となっている場合があります。このような環境では、スキルアップのための自己学習時間が確保できず、長期的なキャリア形成が難しくなります。
厚生労働省の調査によれば、IT業界の過労死ライン(月80時間以上の残業)超えの企業は全産業平均の約1.5倍と高い水準にあります(厚生労働省「過労死等の労災補償状況」2022年)。残業の実態は求人票だけでは見えないため、クチコミサイトの情報や面接での質問を通じて確認することが重要です。また、「繁忙期の平均残業時間」「休日出勤の頻度」なども具体的に聞いておくと良いでしょう。
入ってはいけないIT企業の特徴を理解することで、未経験からでも成長できる環境を見極め、後悔のない転職を実現しましょう。
また、未経験求人の怪しい罠について、 こちら で詳しく解説しています。是非、求人を選ぶ上で参考にしてください。
「入ってはいけないIT企業」について知ることと同じくらい重要なのが、未経験からでもIT業界に入れるのか、その実態を正確に把握することです。私が転職エージェントとして複数の企業の採用担当者と話してきた経験から、最新の未経験採用事情をお伝えします。
まず知っておくべき事実として、IT人材の不足は今後も続く見通しです。経済産業省の調査によれば、2025年には最大約43万人のIT人材が不足すると予測されています(経済産業省「IT人材需給に関する調査」2019年)。この深刻な人材不足を背景に、未経験者の採用に積極的な企業は年々増加傾向にあります。
一方で、「入ってはいけないIT企業」が未経験者を大量募集しているケースも少なくありません。そのため、単に「未経験可」というだけでは判断せず、企業の育成環境や実際のキャリアパスを確認することが重要です。
私が日々やりとりをしている採用担当者の多くが口を揃えるのは、「未経験者には技術力より素質と姿勢を見ている」ということです。未経験者採用時に重視される要素の上位は「学習意欲・向上心」、「論理的思考力」、「コミュニケーション能力」となっており、技術的知識は下位に位置しています。
具体的に評価される3つの能力は以下の通りです:
これらの能力は前職や日常生活のエピソードから証明できるため、未経験でも十分アピール可能です。
「大手IT企業の方が成長できる」と考える方も多いでしょう。しかし、大手IT企業の未経験者の実態は、配属部署によって大きく異なります。研修は充実していても、実際の業務が保守運用中心だったり、専門性の低い作業に終始する場合もあるのです。
リクルートエージェントの調査によれば、未経験から入社した人の約40%が「大企業より中小企業の方がスキルアップのスピードが早かった」と回答しています(リクルートエージェント「IT転職実態調査」2022年)。大手より中小企業やベンチャー企業の方が、幅広い経験を早期から積める可能性が高いケースも少なくありません。
また、SES企業(エンジニアを客先に派遣するビジネスモデルの企業)については、「入ってはいけないIT企業」と一括りにされることもありますが、実態は企業によって大きく異なります。良質なSES企業の特徴としては、「教育制度が充実している」「定期的なフォローがある」「技術的に成長できるプロジェクトに配属される」「キャリアアップを支援する仕組みがある」などが挙げられます。
未経験からIT業界を目指すなら、企業規模や業種だけでなく、その企業が「未経験者をどう育てているか」「どんなキャリアパスを提供しているか」を重視して選ぶことが、「入ってはいけないIT企業」を避けるための鍵となります。
「入ってはいけないIT企業」を避けるための最も効果的な方法は、面接の場を企業調査の機会として最大限活用することです。未経験者だからといって質問できないわけではなく、むしろ積極的に質問することであなたの熱意と判断力をアピールできます。面接官の反応や回答内容から企業の本質を見抜く方法をご紹介します。
IT業界では「未経験者歓迎」「充実した研修制度」といった言葉がよく見受けられますが、実態がともなっていないケースも少なくありません。単なる座学やeラーニングだけで現場に放り出された、という声も多いのが現実です。
面接でオススメの質問
・「未経験者は、どのようなカリキュラムで何を学びますか?」
・「研修後のサポート体制やOJT(現場での実地研修)について教えてください!」
また、「過去に未経験で入社された方が、どのようなステップで業務に慣れていったか教えてください」と実例を求めることで、形だけの研修制度かどうか見極めやすくなります。
「入社後にどんな仕事をするのか」は、未経験者にとって最も不安なポイントです。IT企業の中には、保守や運用といった業務が多く、開発や最新技術に触れられない環境も存在します。
面接でオススメの質問
・「最初に担当する業務内容を具体的に教えてください」
・「使う技術や開発言語は何ですか?」
「現在進行中のプロジェクト例を教えてください」と尋ねるのも有効です。もし曖昧な回答しか得られなかった場合、その企業が「入ってはいけないIT企業」である可能性が高まります。
IT業界は長時間労働のイメージがありますが、実際の状況は企業によって大きく異なります。厚生労働省の調査によると、IT業界の月平均残業時間は約22時間ですが、企業によってはこれを大きく上回る場合もあります。面接担当者が数字や具体例を交えて答えてくれるかどうかも、信頼できる企業かを見極めるポイントです。
面接でオススメの質問
・「繁忙期の平均残業時間はどれくらいですか?」
・「休日出勤はありますか?」
・「直近1年間のプロジェクト納期は予定通り完了しましたか?」
「未経験歓迎」の企業の中には、極端に低い初任給を設定しているケースもあります。将来のキャリアパスを見通せる質問を投げかけましょう。
面接でオススメな質問
・「繁忙期の平均残業時間はどれくらいですか?」
・「休日出勤はありますか?」
・「直近1年間のプロジェクト納期は予定通り完了しましたか?」
透明性の高い評価制度を持つ企業では、これらの質問に対して具体的な回答が得られるはずです。曖昧な回答や質問をはぐらかす態度は、「入ってはいけないIT企業」の警告サインかもしれません。
エンジニアの仕事は、技術力だけでなくチームワークやコミュニケーションも重要です。
面接でオススメな質問
・「日常的なチームのコミュニケーションは、どのように行われていますか?」
・「未経験者が困ったときに相談できる相手や仕組みはありますか?」
また、オフィス見学や現場社員とのカジュアル面談が可能かどうかを確認するのもおすすめです。現場の雰囲気や社員同士のやり取りを観察することで、「入ってはいけないIT企業」かどうか、よりリアルに判断できます。
面接官の回答を評価する際は、具体性と一貫性に注目しましょう。曖昧な回答や言い訳が多い場合は警戒すべきです。たとえば「研修内容は配属先により異なります」という回答には、「最も一般的な配属先の例を教えていただけますか?」と具体例を求めることで、実態に迫れます。
また、回答に矛盾がないかも重要なチェックポイントです。「残業は少ない」と言いながらも「納期に追われることが多い」という発言があれば、実態は異なる可能性があります。
未経験者が「入ってはいけないIT企業」を避け、良い企業に採用されるためには、自己アピールも重要です。技術的なスキルがなくても、「学習意欲」「論理的思考力」「コミュニケーション能力」をアピールすることで、成長ポテンシャルをアピールできます。
例えば、前職での問題解決経験や、独学でプログラミングを学んだエピソード、チームで協力した経験などを具体的に語ることで、IT企業で活かせる素質をアピールしましょう。
未経験でも、適切な質問と自己アピールを組み合わせることで、「入ってはいけないIT企業」を避け、成長できる環境を選ぶ確率を高めることができるのです。
これまで「入ってはいけないIT企業」の特徴について詳しく見てきましたが、反対に「入っても良いIT企業」にはどのような特徴があるのでしょうか。未経験からIT業界に飛び込む際、最も重要なのは「成長できる環境」を選ぶことです。キャリアアドバイザーとして多くの未経験エンジニアの転職を支援してきた経験から、成功事例に共通する特徴と実践的なチェックリストをご紹介します。
良質なIT企業では、エンジニアが新しい技術や手法にチャレンジすることを積極的に支援しています。
例えば、業務時間の一部を自己裁量のプロジェクトに充てられる「20%ルール」を導入している企業や、新技術の検証プロジェクトに未経験者も参加できる文化を持つ企業があります。リクルートテクノロジーズ「エンジニア就業実態調査」2023年によれば、エンジニアの79%が「技術的挑戦の機会」を重視していると回答しており、この要素は満足度と定着率に大きく影響します。
「入っても良いIT企業」では、スキルレベルに応じた段階的なキャリアパスが明確に示され、どのようなスキルを身につければ次のステップに進めるかが透明化されています。これにより、未経験者も自分の成長目標を設定しやすくなります。
キャリアパスが明確な企業で働くエンジニアの満足度は、そうでない企業に比べて高いと言われています。
未経験者が成長するには「質問しやすい環境」が不可欠です。心理的安全性が確保されており、初歩的な質問でも丁寧に対応してもらえる文化があるかどうかは非常に重要です。実際、Stack Overflow Developer Survey 2023の調査では、「チーム内で質問しやすい環境がある」と回答したエンジニアの生産性は、そうでないエンジニアと比べて約30%高いという結果が出ています。
定期的な1on1ミーティングやコードレビューを通じて、具体的なフィードバックを提供する企業は、エンジニアの成長スピードが速い傾向にあります。特に未経験者にとって、適切なフィードバックは成長の鍵となります。
「定期的なフィードバックがある」ことで未経験入社者のスキル習得速度は、そうでないグループと比べて約1.5倍速いとも言われています。
技術革新の速いIT業界では、最新トレンドをキャッチアップする企業文化が重要です。社内勉強会の開催頻度や技術カンファレンスへの参加支援、技術書籍購入制度の充実度などをチェックしましょう。実際、市場価値の高いエンジニアの多くが「最新技術への投資が積極的な企業」に所属しているとも言われています。
未経験から成功したエンジニアの事例を見ると、企業環境が成長に大きく影響していることが分かります。
小売業からインフラエンジニアに転身したFさんの事例では、入社1年目ではヘルプデスクや運用監視がメインの業務でしたが、現場での経験を積みながら学習を継続したことで会社からステップアップの打診を受け、1年で上流工程へと成長。現在は、AWS環境をベースにしたシステム設計・構築プロジェクトに携わるまでになりました。
Fさんが在籍する企業では、未経験者でも段階的にスキルアップできる環境が整っており、個人の努力と学習意欲を適切に評価する仕組みがありました。単なる作業の繰り返しではなく、技術的な成長につながる業務を任せてもらえる環境であったことが、短期間での大幅なキャリアアップを可能にしたのです。
この成功事例から、
「技術的チャレンジの機会」「質問しやすい環境」「段階的な成長プロセス」
の3つが整った企業を選ぶことの重要性がわかりますね。
未経験からIT企業を選ぶ際は、下記のチェックリストを参考にしてください。
チェックリスト
「入社のしやすさ」よりも「成長の可能性」を重視し、長期的なキャリア構築の視点で企業を選ぶことが、未経験からITエンジニアとして成功するための鍵となります。
「入ってはいけないIT企業」を避けることは、未経験からITエンジニアを目指す方にとって最重要課題の一つです。
教育制度の形骸化、スキル停滞環境、多重下請け構造の下層など、7つの危険な特徴を理解し、面接での適切な質問を通じて企業の本質を見抜くことが重要です。最初の3年間がその後のキャリアを決定づけるため、「入社のしやすさ」より「成長の可能性」を重視した企業選びを心がけましょう。技術的挑戦を奨励し、明確なキャリアパスを持つ企業を選ぶことで、未経験からでも確実にスキルアップできる環境に身を置けます。
もしIT業界への転職をお考えでしたら、専門のキャリアアドバイザーがあなたに最適な企業選びをサポートいたします。ぜひお気軽にご相談ください。
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