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TCP/IPとは?インフラエンジニア転職で必須の基礎知識を初心者向けに徹底解説

CCNAの勉強を始めたけれど、TCP/IPって一体何なの?
求人票に書かれている技術要件が全然理解できない…

そんな悩みを抱えているのは決してあなた一人だけではありません。実際に、多くの未経験者がTCP/IPという専門用語に最初は戸惑いを感じています。

しかし、安心してください。TCP/IPは確かにインフラエンジニアにとって必須の知識ですが、未経験者でも必ず理解できる技術です。

この記事では、郵便システムなど身近な例を使いながら、TCP/IPの基本概念から実務での活用方法、さらには転職活動で評価される知識レベルまで、段階的に解説していきます。

なぜTCP/IPがインフラエンジニア転職で重要なのか

まず、現在の転職市場の実情をご紹介しましょう。

経済産業省の「IT人材需給に関する調査」によると、2030年には最大79万人のIT人材が不足すると予測されており、特にインフラエンジニアの需要は急速に高まっています。

実際に、インフラエンジニア求人を確認すると、多くの企業がTCP/IPを必要スキルとして挙げています。これは、現代のIT基盤がすべてTCP/IPプロトコル上で動作しているためです。インターネット、社内ネットワーク、クラウドサービス──私たちが日常的に使うあらゆるシステムの根幹を支えているのがTCP/IPなのです。

さらに重要なのは、面接での質問頻度の高さです。転職支援を行う中で多くの企業とやりとりをしていると、「TCP/IPについて説明してください」「ネットワークの基礎知識はどの程度お持ちですか?」といった質問が頻繁に出題されていることがわかります。つまり、TCP/IPを理解していることが、転職成功への重要な要素となるのです。

未経験からインフラエンジニア、ネットワークエンジニアを目指す方はこちらも併せてご覧ください。

TCP/IPとは何か?郵便システムで理解する基本概念

TCP/IPって結局何なの?

という疑問を抱いているあなたに、まずは身近な例からご説明しましょう。実は、TCP/IPの仕組みは私たちが日常的に利用している郵便システムととてもよく似ているのです。

「手紙を送る仕組み」で学ぶTCP/IPの本質

あなたが友人に手紙を送る場面を想像してみてください。まず、便箋に内容を書き、封筒に入れて宛先住所と差出人住所を記載します。そして郵便ポストに投函すると、郵便局員が集荷し、配送センターで仕分けされ、最終的に友人の家のポストに届けられます。

この一連の流れが、まさにTCP/IPがデータを送る仕組みそのものなのです。TCP/IP(Transmission Control Protocol/Internet Protocol)とは、インターネット上でコンピュータ同士がデータをやり取りするための「ルール」のことです。郵便システムに例えると、「どのような形式で住所を書くか」「どのルートで配送するか」「確実に届けるための仕組み」などのルールがすべて定められているということです。

転職活動中のあなたが求人サイトを閲覧する際も、このTCP/IPが裏側で働いています。あなたのスマートフォンやPCから求人サイトのサーバーへ「求人情報を見せてほしい」というリクエストが送られ、サーバーから求人データが返される──この一連の通信すべてがTCP/IPによって支えられているのです。

プロトコルとは?

ここで重要な概念が「プロトコル」です。プロトコルとは、コンピュータ同士が通信する際の「共通の言語」のことを指します。

例えば、日本人同士が会話するときは日本語を使い、アメリカ人とコミュニケーションを取るときは英語を使いますよね。同様に、世界中の異なるメーカーのコンピュータやスマートフォンが互いに理解し合えるように、共通の「言語」としてTCP/IPプロトコルが使われているのです。

実際に、WindowsのPCからiPhoneへファイルを送ったり、AndroidスマートフォンでWebサイトを閲覧したりできるのは、すべての機器がTCP/IPという共通のプロトコルを理解しているからです。もしこのプロトコルがなければ、メーカーや機種が異なる機器同士は全く通信できません。

TCPとIPの役割分担

TCP/IPは実際には、TCP(Transmission Control Protocol)とIP(Internet Protocol)という2つの異なるプロトコルが組み合わさったものです。それぞれの役割を郵便システムで例えてみましょう。

IP(Internet Protocol)の役割
IPは、郵便配達における「住所システム」に相当します。インターネット上のすべての機器には「IPアドレス」という固有の住所が割り当てられており、IPがこの住所を使ってデータを正しい宛先まで届ける役割を担います。あなたが求人サイトにアクセスする際も、IPが求人サイトのサーバーの場所を特定し、データを届けているのです。

TCP(Transmission Control Protocol)の役割
TCPは、「確実な配送サービス」に例えることができます。重要な書類を送る際に書留郵便を利用するように、TCPはデータが確実に相手に届いたかを確認し、もし途中で紛失した場合は再送する機能を持っています

この2つのプロトコルが連携することで、世界中のコンピュータが安全で確実にデータをやり取りできるのです。インフラエンジニアとして働く際は、この基本的な仕組みを理解していることが、ネットワーク設計や障害対応における土台となります。

TCP/IPの4階層モデル:各層の役割を身近な例で完全理解

TCP/IPの階層って何?なんで4つに分かれているの?

そんな疑問を抱いているあなたに、今度はオンラインショッピングの場面を例にして、TCP/IPの4階層モデルをわかりやすく解説しましょう。

転職活動中にAmazonで参考書を注文する場面を想像してみてください。あなたがスマートフォンで「注文する」ボタンを押してから、実際に商品が自宅に届くまでには、実は4つの異なる「部署」がそれぞれの専門業務を担当しているのです。

アプリケーション層

アプリケーション層は、あなたが直接触れる「アプリの世界」です。Amazonのショッピングアプリ、メールアプリ、Webブラウザなど、私たちが普段使っているすべてのアプリケーションがこの層で動作しています。「手紙を送る仕組み」に例えると、手紙を書いたり、手紙、はがき、小包など形式を決める行為にあたります。

この層では、HTTP(ウェブサイト閲覧用のプロトコル)、SMTP(メール送信用のプロトコル)、FTP(ファイル転送用のプロトコル)などが活躍しています。転職活動でいえば、求人サイトを閲覧する際のHTTP通信や、応募書類をメール送信する際のSMTP通信が、まさにアプリケーション層の働きなのです。

インフラエンジニアとして働く際は、「どのアプリケーションがどのプロトコルを使っているか」を理解することで、ネットワーク設計やセキュリティ対策において適切な判断ができるようになります。

トランスポート層

トランスポート層は、オンラインショッピングでいう「配送業者」の役割を担います。この層の主人公がTCP(Transmission Control Protocol)とUDP(User Datagram Protocol)です。「手紙を送る仕組み」に例えると、普通郵便か速達か配達方法を選択し、配達確認が必要か決める工程にあたります。

TCPは「書留郵便」のような確実な配送サービスです。データが確実に相手に届いたかを必ず確認し、もし途中で紛失した場合は再送します。あなたが転職サイトで重要な応募書類を送信する際は、このTCPが確実性を保証してくれているのです。

一方、UDPは「普通郵便」のような高速配送サービスです。確実性よりもスピードを重視するため、動画配信やオンラインゲームなどのリアルタイム通信でよく使われます。

実際の企業でのヒアリングでも、「TCPとUDPの使い分けを理解しているか」は技術面接でよく問われるポイントです。

インターネット層

インターネット層は、配送業者が「どのルートで荷物を届けるか」を決める道案内係の役割です。この層で活躍するのがIP(Internet Protocol)です。「手紙を送る仕組み」に例えると、郵便局が最適な配達ルートを決定し、投函した場所から宛先の最寄りの郵便局に運ばれることにあたります。

インターネット上のすべての機器には「IPアドレス」という住所が割り当てられており、IPがこの住所を使って最適な配送ルートを決定します。あなたのスマートフォンから転職サイトのサーバーまでデータを届ける際、IPは数多くのルーターやスイッチを経由する最適な経路を自動的に選択しているのです。

IPv4とIPv6という2つのバージョンがあり、現在はIPv4からIPv6への移行期にあります。インフラエンジニアとして働く際は、両方のIPバージョンに対応したネットワーク設計が求められることが多くなっています。

ネットワークインターフェース層

ネットワークインターフェース層は、実際の「道路」や「交通システム」に相当します。有線LAN(Ethernet)、無線LAN(Wi-Fi)、光ファイバーなど、物理的な通信手段を管理する層です。「手紙を送る仕組み」に例えると、郵便配達員が実際に手紙を運ぶ工程にあたります。

この層では、MACアドレス(機器固有の識別番号)を使って、同じネットワーク内での通信を制御しています。あなたが自宅のWi-Fiでインターネットに接続する際、スマートフォンとルーターの間の通信は、この層が管理しているのです。

転職を支援する中で企業の採用担当者とお話しすると、インフラエンジニアには「物理層からアプリケーション層まで、幅広い知識が求められる」という声をよく耳にします。しかし、最初からすべてを覚える必要はありません。まずは各層の基本的な役割を理解し、実務を通じて深めていけば十分です。

この4階層モデルを理解することで、ネットワークトラブルが発生した際に「どの層に問題があるのか」を段階的に切り分けられるようになり、これがインフラエンジニアの重要なスキルとなります。

インフラエンジニアの実務でTCP/IPはどう使われるか

TCP/IPの仕組みは理解できたけれど、実際の仕事でどう活用するの?

この疑問こそ、未経験からインフラエンジニアを目指すあなたが最も知りたいポイントでしょう。転職支援を通じて多くの企業の現場を見てきた経験から、TCP/IPが実務でどのように活用されているか、具体的にご紹介しましょう。

ネットワーク設計・構築

ネットワーク設計・構築は、インフラエンジニアの代表的な業務の一つです。新しいオフィスのネットワーク環境を構築する場面を想像してみてください。

まず、IPアドレスの設計から始まります。社員100名の企業であれば、「192.168.1.0/24」といったプライベートIPアドレス範囲を設定し、各部署や用途別にサブネット(ネットワークの区分)を分割します。営業部門には「192.168.1.10-50」、開発部門には「192.168.1.51-100」といった具合に、TCP/IPの知識を基にした論理的な設計を行うのです。

また、ファイアウォール(通信を制御するセキュリティ機器)の設定では、TCPポート80(HTTP通信用)や443(HTTPS通信用)、22(SSH通信用)などの開放設定を行います。これらのポート番号の意味を理解していることで、適切なセキュリティ設計が可能になります。

サーバー運用・保守

サーバー運用・保守の現場では、TCP/IPの知識が日常的に活用されています。例えば、Webサーバーが正常に動作しているかを確認する際、netstatコマンドを使ってTCPポート80が正しく待ち受け状態(LISTEN)にあるか確認します。

データベースサーバーの場合は、TCPポート3306(MySQL)や5432(PostgreSQL)での通信状況を監視します。もしアプリケーションからデータベースへの接続に問題が発生した場合、TCP/IPの知識があることで「ネットワーク層の問題なのか、アプリケーション層の問題なのか」を的確に切り分けることができるのです。

クラウド環境での運用も現在の主流となっており、AWS(Amazon Web Services)やAzure(Microsoft Azure)といったクラウドサービスでも、VPC(Virtual Private Cloud)と呼ばれるネットワーク設定でTCP/IPの知識が必須となります。

トラブルシューティング

トラブルシューティングこそ、TCP/IPの知識が最も威力を発揮する場面です。「インターネットに接続できない」という障害が発生した際、経験豊富なインフラエンジニアは段階的に原因を特定していきます。

まず、pingコマンドでIPレベルの疎通確認を行い、次にtelnetコマンドでTCPポートレベルの接続確認を実施します。例えば「ping 8.8.8.8」でGoogleのDNSサーバーへの疎通が取れれば、インターネット層(IP)の問題ではないことがわかります。しかし「telnet example.com 80」で接続できなければ、トランスポート層(TCP)に問題があることが特定できるのです。

実際の障害対応では、こうした論理的な切り分け能力が求められます。企業の採用担当者からも「障害対応時の論理的思考力」を重視するという声を多く聞きます。TCP/IPの4階層モデルを理解していることで、「どの層に問題があるのか」を体系的に判断できるようになり、これがインフラエンジニアとしての大きな強みとなります。

転職活動では、こうした実務での活用場面を具体的に説明できることで、「実践的な知識を持っている」という評価を得ることができるでしょう。

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未経験者向けTCP/IP学習ロードマップ

TCP/IPの重要性は理解できたけど、どこから手をつけていいか分からない…

そんなあなたのために、転職成功までの具体的な学習ロードマップをご紹介します。これまで数百名の未経験者の転職支援を行ってきた経験から、最も効率的で実践的な学習順序を3段階に分けて解説しましょう。

【段階1】基礎概念の理解

第1段階では、TCP/IPの全体像を掴むことに集中しましょう まず、書籍「マスタリングTCP/IP 入門編」の第1~3章を読み進めることをおすすめします。この書籍は、未経験者でも理解しやすいよう図解が豊富で、インフラエンジニアの現場でも長年愛用されている定番教材です。

学習のポイントは「完璧を求めない」ことです。最初は4階層モデルの名前と基本的な役割を覚えることから始め、IPアドレスとポート番号の概念を理解できれば十分です。1日1時間の学習で、通勤時間を活用すれば無理なく進められます。

この段階で重要なのは、実際のWebサイト閲覧やメール送信の場面で「今、TCP/IPが動いているんだな」と意識することです。理論と実体験を結びつけることで、記憶に定着しやすくなります。

【段階2】実機演習での体験学習

第2段階では、実際にコマンドを触りながら体験的に学習します。 まず、WindowsのコマンドプロンプトやMacのターミナルで基本的なネットワークコマンドを実行してみましょう。

「ping google.com」コマンドでGoogleサーバーとの疎通確認を行い、「nslookup google.com」でドメイン名からIPアドレスへの変換を確認します。これらのコマンド実行結果を見ることで、DNS(ドメイン名前解決システム)やIPアドレスの仕組みが実感として理解できるようになります。

さらに、VirtualBox(仮想環境作成ソフト)を使って、自宅に簡単なネットワーク環境を構築してみることをおすすめします。2台の仮想マシンを作成し、IPアドレスを設定して相互通信させる演習は、ネットワーク設定の基礎を身につける最良の方法です。

この段階での学習時間は、平日1時間、休日3時間程度を目安とし、実際に手を動かすことに重点を置きましょう。

【段階3】転職活動で話せるレベルまで

最終段階では、面接で自信を持って説明できるレベルまで知識を深めます。 この段階では、CCNA(シスコ認定ネットワークアソシエイト)の学習教材を活用することをおすすめします。資格取得が目的ではなく、体系的な知識整理のために利用するのです。

特に重要なのは、サブネットマスクとVLAN(仮想LAN)の概念です。企業の面接では「社内ネットワークをどのように設計しますか?」という実践的な質問が多く、これらの知識があることで具体的な回答ができるようになります。

また、クラウドサービス(AWS、Azure)の基本的なネットワーク機能についても学習しておきましょう。現在のIT業界では、オンプレミス(自社設置型)からクラウドへの移行が加速しており、クラウドネットワークの基礎知識は大きなアピールポイントになります。

未経験者がつまずくポイント

多くの未経験者が挫折する最大のポイントは「理論ばかりで実感が湧かない」ことです。 転職支援の現場では、参考書を読んだだけで理解した気になってしまう方を多く見かけます。

特につまずきやすいのは、IPアドレスとサブネットマスクの関係性です。「192.168.1.0/24」という表記を見て混乱してしまう方が多いのですが、これは実際にネットワーク設定を触ってみることで理解が深まります。

また、「TCPとUDPの違いが覚えられない」という悩みもよく聞きます。この場合は、具体的な利用場面を覚えることが効果的です。WebサイトやメールはTCP、動画配信やオンラインゲームはUDPと、用途で覚えると記憶に残りやすくなります。

最も重要なのは、分からないことがあっても諦めずに継続することです。TCP/IPは一朝一夕で理解できるものではありませんが、段階的に学習を進めることで必ず習得できる技術です。この3段階のロードマップに沿って学習を進めれば、転職活動で自信を持ってアピールできる知識が身につくでしょう。

【まとめ】TCP/IP理解がインフラエンジニアキャリアの第一歩

ここまでTCP/IPについて詳しく解説してきましたが、いかがでしたでしょうか。最初は「難しそう」と感じていたTCP/IPも、郵便システムや身近な例で理解することで、「思ったより理解できそう」と感じていただけたのではないでしょうか。

TCP/IPは確かにインフラエンジニアにとって必須の知識ですが、決して高い壁ではありません。4階層モデルの基本概念を理解し、実際にコマンドを触りながら体験的に学習することで、転職活動で自信を持ってアピールできるレベルまで到達できます。

重要なのは完璧を求めずに、段階的に知識を積み重ねることです。まずは基礎概念から始めて、実機演習を通じて理解を深め、最終的には面接で説明できるレベルまで成長していきましょう。TCP/IPの理解は、インフラエンジニアとしてのキャリアを築く確かな第一歩となるはずです。あなたの転職活動が成功することを心から応援しています。

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