COLUMN IT業界

「クラウド環境」とは何?IT未経験者にもわかる基本から転職活用まで

クラウド環境での経験者歓迎」「AWS、Azure知識必須」—— IT転職活動中によく目にするこれらの求人条件に、頭を抱えている方も多いのではないでしょうか。

現在、多くの企業がクラウド環境への移行を進めています。本記事では、IT未経験の方でも理解できるよう「クラウド環境とは何か」を身近な例を交えて解説し、転職活動で武器となる基礎知識まで幅広くご紹介します。

そもそも「クラウド環境」って何のこと?

転職活動でIT系の求人を見ていると、必ずと言っていいほど目にする「クラウド環境」という言葉。聞いたことはあるけれど、具体的に何を指しているのか分からないという方が大多数ではないでしょうか。

実は、クラウド環境の考え方は私たちの日常生活にも身近に存在しています。まずは専門用語を使わずに、「クラウド環境」の正体を紐解いていきましょう。

身近な例で理解する「クラウド」の正体

「クラウド」を最も分かりやすく理解するには、レンタルビデオ店とNetflixの違いを考えてみてください。

従来のレンタルビデオ店では、DVDという物理的なメディアを借りて、自宅のプレーヤーで再生します。一方、Netflixはインターネット経由で映画やドラマを視聴できるサービスです。DVDを借りに行く必要もなく、返却の心配もありません。

この「Netflix方式」こそが、クラウドの基本的な考え方なのです。つまり、クラウドとは「インターネットを通じて、必要な時に必要なサービスを利用できる仕組み」を指します。

ビジネスの世界では、コンピューターやソフトウェア、データ保存場所などを、まるでNetflixで映画を見るように、インターネット経由で利用することができます。これが「クラウドコンピューティング」と呼ばれる技術です。

「環境」が指すシステム基盤とは

次に「環境」という言葉について解説しましょう。IT業界で「環境」と言うと、コンピューターやソフトウェアが正常に動作するための基盤全体を指します。

これを理解するために、オフィスビルを例に考えてみてください。オフィスで働くためには、電気・水道・空調・インターネット回線・セキュリティシステムなど、様々な設備が整っている必要があります。これらすべてを含めて「オフィス環境」と呼びますよね。

ITシステムが動作するために必要な要素

  • コンピューター(サーバー):計算処理を行う機械
  • ネットワーク:データをやり取りする通信回線
  • ストレージ:データを保存する場所
  • ソフトウェア:プログラムやアプリケーション
  • セキュリティ:不正アクセスを防ぐ仕組み

これらすべてを含めて「システム環境」や「IT環境」と呼んでいます。つまり「クラウド環境」とは、これらのIT基盤をインターネット経由で利用できる状態のことを意味するのです。

従来の社内サーバーとの決定的な違い

最後に、従来の方法とクラウド環境の決定的な違いを見てみましょう。

従来の企業では、自社専用のコンピューター(サーバー)を社内に設置し、管理していました。これは「オンプレミス」と呼ばれる方式です。まるで自宅にDVDプレーヤーとテレビを置いて映画を楽しむのと同じように、必要な機器をすべて自前で用意する方法です。

一方、クラウド環境では、Amazon、Microsoft、Googleなどの専門企業が運営する巨大なデータセンターにあるサーバーを、インターネット経由で借りて使用します。これは先ほどのNetflixの例と同じで、必要な時に必要な分だけサービスを利用する方式です。

IDC Japanによると、国内のパブリッククラウドサービス市場が売上額で2023年の3兆2609億円から2028年には2倍以上の7兆2227億円になると見込んでいます。

国内パブリッククラウドサービス市場予測を発表

多くの企業がこの新しい方式への移行を進めており、この変化により、IT業界では「クラウド環境を理解し、運用できる人材」の需要が急激に高まっているのです。転職市場でクラウド関連のスキルが重視される理由も、ここにあります。

オンプレミスに関連する記事も併せてご覧ください。

クラウド環境を構成する3つの要素をわかりやすく解説

クラウド環境の仕組みがイメージできない

という方のために、まずはクラウド環境を支える3つの基本要素を、身近な例を使って分かりやすく解説していきます。

クラウド環境は、まるで巨大なショッピングモールのような構造になっています。利用者が快適にサービスを利用するために、見えないところで様々な設備が連携して動いているのです。

コンピューター(サーバー)の役割

クラウド環境の中核を担うのが「サーバー」と呼ばれるコンピューターです。サーバーは、レストランの厨房にいるシェフのような存在だと考えてみてください。

お客様(利用者)からの注文(リクエスト)を受けて、料理(データ処理や計算)を行い、完成した料理(結果)をお客様に提供します。1台のサーバーで複数の処理を同時に行うことができるため、多くの利用者が同時にサービスを利用しても問題ありません。

クラウド環境では、このサーバーが数千台、数万台という規模でデータセンターに設置されています。万が一1台のサーバーに問題が発生しても、他のサーバーが代わりに処理を継続するため、サービスが止まることはほとんどありません。

ネットワーク(通信回線)の仕組み

ネットワークは、クラウド環境とユーザーを結ぶ「道路」のような役割を果たします。宅配便のネットワークを想像してみてください。

あなたがオンラインショッピングで商品を注文すると、商品は倉庫から様々な中継地点を経由してあなたの手元に届きます。同様に、クラウド環境では、あなたのリクエストがインターネット回線を通じてサーバーに届き、処理結果が再びネットワークを通じてあなたのデバイスに返されます

ネットワークの品質が悪いと、データの送受信に時間がかかったり、途中で失われたりする可能性があります。そのため、クラウド事業者は高速で安定したネットワークインフラの構築に多額の投資を行っています。

企業の求人票で「ネットワーク設計経験」という表現を見かけるのは、この通信経路の最適化や設定を行う技術者を求めているからです。

ストレージ(データ保存場所)の機能

ストレージは、データを保管する「倉庫」の役割を担います。図書館の書庫をイメージすると分かりやすいでしょう。

図書館では、膨大な数の本が分類され、整理されて保管されています。利用者が特定の本を探している時、司書が効率的に本を見つけ出して提供してくれます。クラウドのストレージも同様に、写真、動画、文書、アプリケーションデータなど、あらゆる種類のデータを分類・整理して保管し、必要な時に瞬時に取り出せるよう管理しています。

現代のクラウドストレージでは、データの安全性を確保するため、同じデータを複数の場所に分散して保存する「冗長化」という技術が使われています。これにより、万が一一つの保存場所に問題が発生しても、データが失われることはありません。

これら3つの要素が連携することで、私たちは世界中どこからでも、安全で高速なクラウドサービスを利用できるのです。

代表的なクラウド環境「AWS・Azure・GCP」の基本知識

求人票でよく目にする「AWS経験者優遇」「Azure知識必須」といった記載に戸惑っている方も多いでしょう。これらは世界で最も利用されている3大クラウドサービスの名前です。転職活動を有利に進めるためにも、それぞれの特徴を理解しておきましょう。

まずは全体像から説明すると、総務省の令和6年版情報通信白書によると、2023年第4四半期時点で世界のクラウドインフラサービス市場において、Amazon(AWS)が約31%、Microsoft(Azure)が24%、Google(GCP)が11%のシェアを占めており、この3社だけで全体の66%を占める寡占状態となっています。

世界シェアNo.1「AWS」の特徴

AWS(Amazon Web Services)は、オンラインショッピングで有名なAmazonが提供するクラウドサービスです。「なぜ通販会社がIT事業を?」と思われるかもしれませんが、実はAmazonの巨大な通販サイトを支えるために開発されたIT基盤を、他の企業にも提供し始めたのがAWSの始まりです。

AWSの最大の特徴は、サービスの豊富さと実績の深さです。2006年にサービスを開始した先駆者として、現在200以上の多様なサービスを提供しており、スタートアップから大企業まで幅広い企業が利用しています。

転職市場でAWSのスキルが重宝される理由は、その圧倒的な導入実績にあります。国内企業のIaaS(Infrastructure as a Service:サーバーやストレージなどをインターネット経由で提供するサービス)利用率において、AWSは40%以上のシェアを持っており、多くの企業がAWSでシステムを構築しているためです。

特に、EC2(仮想サーバー)、S3(データストレージ)、RDS(データベース)といった基本サービスは、面接でもよく話題に上がる重要な要素です。

Microsoft製「Azure」の強み

Microsoft Azure(マイクロソフト・アジュール)は、WindowsやOfficeでおなじみのMicrosoft社が提供するクラウドサービスです。Azureの最大の強みは、多くの企業が既に使用しているMicrosoft製品との親和性の高さです。

例えば、社内でWindows ServerやSQL Server、Officeを利用している企業にとって、Azureへの移行は技術的なハードルが低く、既存システムとの連携もスムーズに行えます。このため、特に大企業での導入が急速に進んでおり、近年シェアを大きく伸ばしています。

転職エージェントとしての実感では、従来からMicrosoft製品を多用している金融機関や製造業大手からのAzure案件の求人が増加傾向にあります。また、Azure AD(現在はMicrosoft Entra ID)を使った認証システムの知識は、多くの企業で評価されるスキルとなっています。

Google製「GCP」の独自性

GCP(Google Cloud Platform)は、検索エンジンやYouTubeを運営するGoogleが提供するクラウドサービスです。Googleの検索技術やAI技術を活用できる点が最大の特徴です。

GCPは特に、データ分析や機械学習、AI関連のプロジェクトで威力を発揮します。BigQuery(ビッグクエリー)というデータ分析サービスや、TensorFlowを使った機械学習環境の構築が他社よりも優れており、データサイエンスやAI開発を行う企業で好まれています

また、Googleのシンプルで直感的なインターフェースを好む開発者も多く、スタートアップ企業や新しい技術に挑戦する企業での採用率が高い傾向にあります。

転職市場では、GCPのスキルを持つ人材はまだ希少性が高く、特にAI・機械学習分野での転職を考えている方には非常に有利なスキルと言えるでしょう。

企業はなぜ「クラウド環境」を導入するのか?

なぜ今、どの企業もクラウド環境への移行を急いでいるの?

これはクラウドを志望している方なら一度は疑問に思ったことがあるでしょう。実は企業にとってクラウド環境の導入は、単なる技術トレンドではなく、ビジネス競争力を大きく左右する戦略的な判断なのです。

総務省の平成30年版情報通信白書によると、企業がクラウドサービスを利用する主な効果として、システム構築の迅速性初期費用・運用費用の削減可用性の向上利便性の向上の4つが挙げられており、これらの効果を実際に感じている企業が多数存在することが分かっています。

コスト削減効果の具体例

最も分かりやすいメリットがコスト削減効果です。従来の社内サーバー運用では、まるで自宅に映画館を作るような投資が必要でした。建設費、維持費、スタッフの人件費など、膨大なコストがかかります。

具体的には、従来のオンプレミス環境では、サーバー機器の購入に数百万円から数千万円、それを設置するデータセンターの賃貸料や電気代、冷却費などの運用コストが月々数十万円から数百万円かかることも珍しくありません。さらに、24時間365日の監視体制を維持するための専門エンジニアの人件費も必要です。

一方、クラウド環境では、必要な分だけサーバーリソースを借りる「従量課金制が基本です。これは映画館に行って鑑賞券を買うのと同じ仕組みで、使った分だけお金を払えば良いのです。

柔軟性とスケーラビリティのメリット

クラウド環境の最大の強みは柔軟性スケーラビリティ(拡張性)です。これを理解するために、レンタカーと自家用車の違いを考えてみましょう。

自家用車(従来のオンプレミス)の場合、購入時に決めた車種や性能で長期間使い続ける必要があります。急に大きな荷物を運ぶ必要が生じても、トラックに買い替えるには時間とお金がかかります。

一方、レンタカー(クラウド環境)なら、平日は軽自動車、週末は大型車、長距離移動時はハイブリッド車というように、その時々のニーズに合わせて最適な車種を選択できます。

ビジネスの世界でも同様で、クラウド環境なら急激なアクセス増加に対して数分でサーバーを増強できますし、逆にアクセスが減った時は自動的にサーバー数を減らしてコストを抑制することも可能です。

例えば、テレビCMの放送直後やバーゲンセール開始時など、一時的にWebサイトへのアクセスが急増する場面で、従来なら サーバーダウンのリスクがありましたが、クラウド環境では自動的にリソースを拡張してサービスを安定稼働させることができます。

セキュリティと運用負荷軽減の実態

「クラウドはセキュリティが心配」という声をよく耳にしますが、実際は逆のケースが多いのが現実です。AWS、Azure、GCPなどの大手クラウド事業者は、セキュリティ対策に年間数千億円規模の投資を行っており、多くの企業が自社で構築できるセキュリティレベルを大きく上回っています

これは、個人で金庫を家に置くよりも、セキュリティ会社が24時間警備する貸金庫に預ける方が安全なのと同じ理屈です。専門的なセキュリティ人材を自社で雇用・育成するコストを考えると、クラウド事業者のセキュリティサービスを利用する方が合理的と判断する企業が増えています。

また、運用負荷の軽減も大きなメリットです。従来は深夜や休日にサーバートラブルが発生した場合、エンジニアが緊急対応で会社に駆けつける必要がありました。クラウド環境では、基本的なインフラ運用は事業者が担当するため、自社のエンジニアはより価値の高いシステム開発業務に集中できるようになります。

このような背景から、IT人材不足が深刻化する中で、限られたエンジニアリソースを有効活用したい企業にとって、クラウド環境は必要不可欠な選択肢となっているのです。

未経験からクラウド環境を学ぶ効率的な方法

クラウド環境について学びたいけれど、何から始めればいいか分からない

という悩みをお持ちの方は多いでしょう。IT未経験者にとって、膨大な情報の中から効果的な学習方法を見つけ出すのは至難の業です。ここでは、転職活動を有利に進めるための実践的な学習ステップをご紹介します。

最初に覚えるべき基礎用語10選

クラウド環境の学習を始める前に、面接や求人票でよく使われる基本用語を理解しておきましょう。これらの用語を知っているだけで、IT業界での会話についていけるようになります。

用語 意味
IaaS(イアース)

Infrastructure as a Serviceの略で、サーバーやストレージなどの
インフラをインターネット経由で提供するサービス

PaaS(パース) Platform as a Serviceの略で、アプリケーション開発に必要な
環境一式を提供するサービス
SaaS(サース) Software as a Serviceの略で、完成したソフトウェアを
インターネット経由で利用するサービス
仮想化 1台の物理的なサーバーを
複数の仮想サーバーに分割して使用する技術
ロードバランサー 複数のサーバーに処理を分散させる装置

Auto Scaling
(オートスケーリング)

アクセス量に応じてサーバー数を自動的に増減させる機能
VPC Virtual Private Cloudの略で、
クラウド上に構築された仮想的な専用ネットワーク空間
API Application Programming Interfaceの略で、
異なるソフトウェア同士が連携するための仕組み
DevOps(デブオプス) 開発(Development)と運用(Operations)を組み合わせた概念で、
開発チームと運用チームが連携してシステムの品質向上を目指す手法
Container(コンテナ) アプリケーションとその実行環境を一つにパッケージ化した技術

無料で試せる学習リソース

クラウド環境の学習には、各社が提供する無料の学習リソースを活用するのが最も効率的です。

AWS(Amazon Web Services)では「AWS 無料利用枠」を提供しており、12ヶ月間多くのサービスを無料で試すことができます。また、「AWS Skill Builder」という無料の学習プラットフォームでは、基礎から実践まで体系的に学習できるコースが用意されています。実際に手を動かしながら学べるハンズオン形式の教材が豊富で、未経験者でも段階的にスキルを身につけられます。

Microsoft Azureでは「Microsoft Learn」という無料学習サイトが充実しています。対話型のブラウザベース環境で実際にAzureサービスを操作しながら学習でき、完了すると達成バッジがもらえるゲーミフィケーション要素も魅力です。Azureも12ヶ月間の無料利用枠を提供しているため、コストを気にせず学習を進められます。

Google Cloud Platform(GCP)では「Google Cloud Skills Boost」で無料のクラウド学習ができます。特にデータ分析やAI・機械学習分野の教材が充実しており、これらの分野に興味がある方には特におすすめです。

書籍については、「AWSではじめるクラウド開発入門」や「ひと目でわかるAzure」といった入門書が初心者に人気です。また、YouTubeには「AWS入門」「Azure基礎」といった無料の解説動画も豊富にあります。

転職エージェントとしての経験からお伝えすると、これらの無料リソースだけでも基礎知識は十分習得可能です。重要なのは、実際に手を動かして操作することです。

転職に有利な資格取得の順番

クラウド関連の資格は転職活動で非常に高く評価されますが、取得する順番が重要です。

最初に目指すべきは「AWS認定クラウドプラクティショナー」です。この資格はプログラミング経験がなくても取得可能で、AWSの基本的なサービスと概念を理解していることを証明できます。勉強時間の目安は1〜2ヶ月程度で、クラウドの全体像を掴むのに最適です。

AWS認定ソリューションアーキテクトアソシエイト(SAA)」に挑戦しましょう。この資格は実務レベルのスキルを証明でき、転職市場での評価が非常に高い資格です。勉強時間の目安は3〜6ヶ月程度で、実際の設計業務に必要な知識を体系的に学習できます。

転職エージェントとしての実感では、AWS認定クラウドプラクティショナーを持っているだけでも面接での評価は格段に上がります。未経験者がIT業界への本気度を示すのに効果的な資格と言えるでしょう。

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今こそクラウド環境を学ぶべき理由と転職成功への道のり

クラウド環境は、もはや一部のIT企業だけのものではありません。国内クラウド市場は2029年まで年平均14.6%の高成長が続く見込みです。特に企業のレガシーシステムからクラウドへの移行が本格化しており、クラウド人材への需要は急拡大しています。

転職エージェントとして日々実感するのは、「クラウドって何?」という状態から「基本概念は理解している」に変わるだけで、面接通過率が劇的に向上することです。完璧な技術力は求められていません。重要なのは学習意欲と基礎理解です。

まずはAWS認定クラウドプラクティショナーの取得を目標にし、無料の学習リソースを活用しながら、身近な例(NetflixとDVDの違い)で理解を深めていきましょう。この波に乗り遅れることなく、ぜひクラウド環境への第一歩を踏み出してください。

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