
運用保守は未経験からでも入りやすい職種の一つとされていますが、企業によって求める素養は異なります。求められるのは専門知識そのものより、正確な作業遂行力とコミュニケーション力です。
この記事のポイント
運用保守は、開発職と比較して未経験者を採用する求人が多い傾向にあります。理由の一つは、業務がマニュアル化・標準化されやすく、教育体制を整えれば未経験者でも一定期間で戦力化しやすいという企業側の事情があるためです。
未経験可求人が多いことは、選考のハードルが低いことと同義ではありません。企業は、正確性・責任感・コミュニケーション力といった、職種に関わらず必要な素養を見ています。
以下のうち当てはまるものが多いほど、運用保守の選考で評価されやすい傾向があります。
キャリアカンパニーが直近1年間に支援した、未経験からの運用保守職への転職実績は253名。前職は販売職・飲食店アルバイト・製造職・営業職など幅広い業種からの転職があり、入社後1年以内の定着率は98%(201名が対象、自社集計)です。
✔ ポイント
自社集計(2025年8月〜2026年7月入社201名)では、前職がIT以外の方が90%、文系出身が92%でした。未経験・文系でも転職を実現している方が大半です。
未経験で入社した場合、最初に担当することが多いのは、手順書に沿った監視・確認作業です。仕事の流れを知っておくと、志望動機や面接で具体的に話せます。
| 業務 | 内容 | 未経験が身につけること |
|---|---|---|
| 監視 | 監視ツールで、サーバー・ネットワークの稼働状況を確認する | ツールの見方、正常・異常の判断基準 |
| 一次対応 | アラートが出たら、手順書に沿って対応する。難しい場合はエスカレーション | 落ち着いて状況を確認し、速く正確に報告する習慣 |
| 定常作業 | アカウント管理、バックアップの確認、ログの確認など | 手順を守り、ミスなく作業する力 |
| 記録・報告 | 対応内容を記録し、引き継ぎや報告書にまとめる | 文書化の力、報連相 |
運用保守は、「決められたことを正確に行う力」と「異常に気づいて報告する力」が基礎になります。これらは、販売・事務・製造・接客など、多くの職種の経験から、言い換えて示すことができます。
| 用語 | かんたんな説明 |
|---|---|
| IPアドレス | ネットワーク上の機器につける「住所」のようなもの |
| DNS | ドメイン名(例:example.com)を、IPアドレスに変換する仕組み |
| サーバー | サービスやデータを提供するコンピュータ |
| ネットワーク機器 | ルーター・スイッチなど、通信を中継する機器 |
| ログ | システムの動作や、エラーの記録 |
| 監視 | システムの状態を見て、異常を早く見つけること |
| バックアップ | データの複製を、別の場所に保存しておくこと |
| エスカレーション | 自分では判断・対応できないことを、上位の担当者に引き継ぐこと |
これらを、自分の言葉で説明できると、面接で「基礎を学んでいる」ことが伝わります。学習の進め方は、IT基礎知識の記事も参考になります。
| 期間 | 学ぶこと | アウトプットの例 |
|---|---|---|
| 1か月目 | ITの基礎(ITパスポートの範囲)、ネットワークの基礎用語 | 学んだ用語を、ノートに自分の言葉でまとめる |
| 2か月目 | Linuxの基本コマンド、ネットワーク(IPアドレス・DNS) | 自宅の検証環境で、コマンドを実際に試す |
| 3か月目 | 資格の学習(CCNA、LinuCなど)、模擬問題 | 受験日を決めて、書類に「〇月受験予定」と書く |
資格は必須ではありませんが、学習を続けている事実は、未経験者にとって、意欲と継続力の証拠になります。資格の選び方はIT資格のロードマップが参考になります。
運用保守の志望動機では、前職の経験を、「正確な作業」「報告」「手順を守る」といった、運用の仕事の言葉に言い換えるのがコツです。
| 前職 | 前職の行動 | 運用保守での活かし方 |
|---|---|---|
| 販売・接客 | お客様の相談を聞き取り、状況を整理して案内 | 障害時の状況確認と、関係者への報告 |
| 事務 | 請求書の入力・確認。ミスを防ぐ手順づくり | 手順書に沿った正確な作業、チェックの習慣 |
| 製造・現場 | 手順を守り、異常に気づいたら報告 | 監視での異常の検知、エスカレーション |
| 営業 | 顧客との調整、社内への連絡 | 関係部署との連携、報告 |
志望動機の詳しい書き方は、インフラエンジニアの志望動機の書き方、職務経歴書はIT転職の職務経歴書の書き方で解説しています。
SES企業は未経験者の採用に比較的積極的で、運用保守案件への配属を通じて実務経験を積むルートの一つです。SESには構造的な留意点もあるため、企業選びは慎重に行う必要があります。
自社内でシステムを運用する企業や、ヘルプデスク業務からステップアップする形で運用保守に関わるルートもあります。
未経験者向けの研修制度がある求人や、無料のITスクールなどを活用して基礎知識を身につけてから応募する方法もあります。
| 質問 | 聞かれる意図 | 答えの方向性 |
|---|---|---|
| なぜ、運用保守の仕事を選んだのですか? | 職種への理解と、志望の本気度 | システムを止めない仕事への関心と、前職の経験との接点を話す |
| 夜勤・シフト勤務は大丈夫ですか? | 24時間体制への理解 | 必要性を理解していると伝え、経験として前向きに答える。難しい場合は、事前に伝えておく |
| 手順書通りの作業が、続けられますか? | 定型作業への適性 | 正確に手順を守った経験と、改善の工夫を具体的に話す |
| アラートが出たとき、どう対応しますか? | 落ち着きと、報告の習慣 | まず状況を確認し、手順書に沿って対応し、判断できなければ速やかに報告する、と答える |
| ITの学習は、どう進めていますか? | 学習の継続性 | 教材・期間・進み具合を、具体的に話す。専門用語を2つは説明できるように |
| 将来、どうなりたいですか? | 定着と成長のイメージ | 運用で基礎を固めたあと、構築・設計に挑戦したい、と段階で話す |
面接全体の準備は未経験IT転職の面接でよく聞かれる質問と答え方で、12問の回答例を紹介しています。
| 確認項目 | 見るポイント | 質問の例 |
|---|---|---|
| 研修 | 期間・内容・資格取得の支援 | 「入社後の研修は、何をどのくらい行いますか」 |
| 配属先 | 配属の決まり方、希望の聞かれ方 | 「配属の希望は、聞いてもらえますか」 |
| 夜勤・シフト | 頻度、夜勤手当、休みの取り方 | 「夜勤の頻度と、夜勤明けの休みを教えてください」 |
| キャリアパス | 運用から構築・設計へ進んだ実績 | 「過去に、運用から構築へ進んだ方はいますか」 |
| 評価・年収 | 評価の基準、資格手当、昇給 | 「資格手当の対象と、昇給の時期を教えてください」 |
未経験歓迎の求人でも、上の項目は求人ごとに大きく違います。求人票だけで判断せず、エージェントを通して、具体的に確認しましょう。
dodaの「平均年収ランキング2025」(集計期間:2024年9月〜2025年8月)では、運用/監視/保守の平均年収は389万円、ヘルプデスクは362万円です。個別の年収を保証するものではなく、目安です。未経験からの入社時の年収は、会社の規定で決まっていることが多く、入社後の昇給・資格手当を確認することが大切です。詳しくはIT転職の年収交渉の進め方をご覧ください。
| 時期 | 主な内容 |
|---|---|
| 入社〜1か月 | 研修(IT基礎、ツールの操作)。先輩の作業の見学 |
| 2〜3か月 | 手順書に沿った監視・確認作業を、先輩の指導のもとで担当 |
| 4〜6か月 | 一次対応を、一人で担当。簡単な定常作業・報告書作成 |
配属先や研修の内容によって異なりますが、最初の半年は、「基本を確実にする」期間です。この時期に、手順の改善や、学習を続ける習慣をつけると、次のステップにつながります。
✅ 運用保守への転職チェックリスト
運用保守から先のキャリアは、運用保守はやめとけと言われる理由と、そこから抜け出す方法と、運用・監視から構築・設計へ進む方法で解説しています。
| パターン | 起きること | 防ぎ方 |
|---|---|---|
| 求人の中身を確認せずに応募する | 入社後、研修がなく、思っていた仕事と違う | 研修・配属・夜勤の実態を、応募前に確認する |
| 学習の事実がなく、面接で答えに詰まる | 意欲が伝わらず、不合格が続く | 資格・学習期間・教材を、具体的に言えるようにする |
| 長く働くイメージが伝わらない | 「すぐ辞めるのでは」と受け取られる | 入社後の成長の段階(半年・1年・3年)を、具体的に話す |
大丈夫です。自社集計(2025年8月〜2026年7月入社201名)では、前職がIT以外の方が90%、文系出身が92%でした。専門知識よりも、正確さ・報告・学ぶ姿勢が見られます。
年齢だけで可能性が決まるわけではありません。前職での経験(責任感ある対応、調整力など)と、学習の継続を示せるかが、評価の分かれ目になります。個別の状況は、面談で相談してください。
個人差が大きいですが、運用・監視の経験を3年程度積み、資格を取得した方は、構築・設計へ進みやすくなります。キャリアカンパニーでは、この条件を満たす20名のうち19名(95%)が、入社後半年程度で構築・設計を担当しています(自社集計)。詳しくは運用・監視から構築・設計へ進む方法をご覧ください。
応募できます。資格は必須ではありませんが、学習の事実として示せると、有利になります。「〇月受験予定」と、書類に書いて応募しても問題ありません。
夜勤の有無と頻度は、求人によって大きく異なります。日勤中心の求人もあります。不安がある場合は、面談の段階で、夜勤の可否を正直に伝えて、条件に合う求人から紹介を受けましょう。
全部で4〜6社に並行して応募すると、選考の機会が確保できます。自社集計では、内定までに応募した会社は平均5社、内定をいただいた会社は平均4社でした。複数の選択肢を持って進めることが、納得できる転職につながります。
| 手順 | やること | 期間の目安 |
|---|---|---|
| ① 棚卸し | 前職の経験を書き出し、運用保守の仕事の言葉に言い換える | 2〜3日 |
| ② 学習の事実の整理 | 資格・学習期間・教材・進み具合をまとめる | 1日 |
| ③ 職務経歴書の作成 | 4ブロック(職務要約・職務経歴・活かせる経験・自己PR)で書く | 3〜7日 |
| ④ 添削 | エージェントに見てもらい、直す | 2〜3日 |
| ⑤ 最終確認 | 日付・連絡先・誤字を、全文確認 | 1日 |
全体で1〜2週間が目安です。書類の書き方はIT転職の職務経歴書の書き方で、見本つきで解説しています。最初は6割の完成度でよく、直しながら進めるのがコツです。
資格そのものが必須というわけではありませんが、学習を通じてITの基礎用語や仕組みを体系的に理解しておくと、面接での説明に一貫性が出ます。
「なぜ運用保守なのか」「その先にどんなキャリアを描いているか」を自分なりに言語化しておくことは、他の未経験者との差別化にもつながります。
⚠ 注意
「未経験歓迎」でも、研修の有無・配属先・夜勤の有無は会社ごとに違います。応募前に必ず確認しましょう。
運用保守・インフラ職の転職では、前職がIT以外の方が多くを占めます。キャリアカンパニーで2025年8月〜2026年7月に入社が決まった201名の集計です。
出典:キャリアカンパニー自社集計(2025年8月〜2026年7月に入社が決まったインフラ職170名。年収は中央値)
対象:運用・監視の経験が3年程度あり、CCNP・LPICレベル3・AWS SAA・Azure AZ-104などの資格を取得している20名。入社後半年程度で構築・設計を担当した方の割合です。
出典:キャリアカンパニー自社集計(2025年8月〜2026年7月に入社が決まった方)
| 項目 | 結果 |
|---|---|
| 前職がIT以外だった方の割合 | 90% |
| 面談から内定までの期間(中央値) | 40日 |
| インフラ職で入社した方(170名)の入社時年収(中央値) | 320万円(転職前は300万円) |
| インフラ職で年収が上がった方の割合 | 60% |
| 入社後1年以内の定着率(201名が対象) | 98% |
| 運用・監視の経験が3年程度あり、資格(CCNP、LPICレベル3、AWS SAA、Azure AZ-104など)を取得している方(20名)のうち、入社後半年程度で構築・設計を担当した方 | 19名(95%) |
※自社集計(2025年8月〜2026年7月に入社が決まった方。定着率は、入社後1年以内に退職しなかった方の割合(201名が対象))。年収は中央値で、個人が特定されない形で集計しています。
運用・監視の経験が3年程度あり、CCNP、LPICレベル3、AWS ソリューションアーキテクト アソシエイト、Azure AZ-104などの資格を取得している20名のうち19名(95%)は、入社後半年程度で構築・設計を担当しています(自社集計、2025年8月〜2026年7月に入社が決まった方)。経験と資格がそろうと、運用・監視から構築・設計へ進みやすいことがうかがえます。
運用保守は、開発職と比較して未経験者を採用する求人が多い傾向にあります。理由の一つは、業務がマニュアル化・標準化されやすく、教育体制を整えれば未経験者でも一定期間で戦力化しやすいという企業側の事情があるためです。
SES企業は未経験者の採用に比較的積極的で、運用保守案件への配属を通じて実務経験を積むルートの一つです。SESには構造的な留意点もあるため、企業選びは慎重に行う必要があります。
資格そのものが必須というわけではありませんが、学習を通じてITの基礎用語や仕組みを体系的に理解しておくと、面接での説明に一貫性が出ます。「なぜ運用保守なのか」「その先にどんなキャリアを描いているか」を自分なりに言語化しておくことは、他の未経験者との差別化にもつながります。
運用保守は未経験からでも挑戦しやすい職種ですが、その分「なぜこの職種なのか」「どう成長していきたいか」を明確に持っている人が選考で有利になりやすい傾向があります。
運用保守への転職を考えている方は、無料キャリア診断や無料相談をご活用ください。
アドバイザー
百瀬将悟
大学卒業後、不動産会社に入社。その後、求人広告営業・キャリアアドバイザーを経験。現在は両面型のアドバイザーとIT企業の採用コンサルティングに従事。
採用と転職市場の両方を理解している点を強みとし、「市場価値を高めながら活躍できるエンジニア」になるためのを転職サポート。