
近年、サイバー攻撃のニュースが増える中で注目を集めているセキュリティエンジニアですが、検索すると「やめとけ」「きつい」といったネガティブな言葉が並ぶことがあります。これから目指そうと考えている方にとって、こうした噂は非常に不安に感じる要素ではないでしょうか。
この記事では、現役エンジニアの視点も交えながら、なぜセキュリティエンジニアが「やめとけ」と言われるのか、その理由と実態を包み隠さず解説します。また、厳しい側面だけでなく、それを上回るメリットや将来性、向いている人の特徴についても詳しく紹介します。読み終える頃には、あなたがセキュリティエンジニアを目指すべきかどうかの判断基準が明確になっているはずです。


| 理由 | 具体的な悩み | 影響度 |
| 責任の重さ | インシデント時の損害賠償や信頼失墜への恐怖 | 大 |
| 勤務体制 | 夜勤や休日呼び出しによる生活リズムの乱れ | 中 |
| 学習コスト | 終わりのない勉強と技術キャッチアップ | 大 |
| 評価されにくい | 「何もなくて当たり前」という減点方式の評価 | 中 |
| 人間関係 | 専門用語が通じない相手への説明や他部署との折衝 | 小 |
セキュリティエンジニアという職業に対して、なぜ「やめとけ」という声が上がるのでしょうか。その背景には、この職種特有の厳しさやプレッシャーが存在します。ここでは、多くの人が挫折しそうになる主な理由を5つに分けて詳しく見ていきます。
セキュリティエンジニアが最も精神的な負担を感じるのは、責任の重さです。企業の情報資産や顧客の個人情報を守る「最後の砦」としての役割を担っているため、万が一情報漏洩などのインシデントが発生した場合、その影響は計り知れません。
企業の信頼失墜や巨額の損害賠償に直結する可能性があり、そのプレッシャーは他のエンジニア職とは比較にならないほど大きいです。「絶対にミスが許されない」という緊張感が常につきまとうため、精神的にタフでないと辛く感じてしまうことがあります。
※インシデント…情報セキュリティにおいて、システムの停止や情報漏えいなど、事業の継続に支障をきたす恐れがある事象のこと。
サイバー攻撃は平日や日中だけでなく、夜間や休日にも容赦なく行われます。そのため、セキュリティ監視センター(SOC)などの業務では、24時間365日の監視体制が敷かれていることが一般的です。
シフト制での夜勤や、休日出勤が発生する現場も少なくありません。また、夜中に緊急の呼び出しを受ける可能性もあり、生活リズムが不規則になりがちです。ワークライフバランスを重視したい方にとっては、こうした勤務体系が「きつい」と感じる大きな要因となります。
IT業界の中でも、セキュリティ分野は技術の進化スピードが極めて速い領域です。新しい攻撃手法が次々と生まれ、それに対抗するための防御技術も日々アップデートされています。
昨日までの知識が今日には通用しなくなることも珍しくありません。そのため、業務時間外も含めて常に勉強し続ける姿勢が求められます。一度覚えたら終わりではなく、キャリアを通じて終わりのない学習マラソンを続けなければならない点に、疲弊してしまう人もいます。
開発エンジニアが新しいシステムを作ったという目に見える成果を得やすいのに対し、セキュリティエンジニアの成果は何も起きないことです。インシデントを防いで当たり前、システムが正常に動いて当たり前という減点方式で見られがちです。
一方で、セキュリティ対策のために社員の利便性を制限すると「使いにくい」「面倒だ」と文句を言われることもあります。成功しても褒められず、制限をかけると嫌がられるという構造が、モチベーション維持を難しくさせる理由の一つです。
セキュリティエンジニアは技術力だけでなく、高いコミュニケーション能力も求められます。専門知識がない顧客や経営層に対し、なぜその対策が必要なのか、リスクの大きさはどれくらいかを分かりやすく説明しなければなりません。
また、脆弱性診断などで他部署が開発したシステムの欠陥を指摘する場面も多くあります。「せっかく作ったのにケチをつけられた」と開発側から反発を受けることもあり、板挟みのような状態にストレスを感じるケースもあります。

ここまで厳しい側面を見てきましたが、それでもセキュリティエンジニアを目指す人は後を絶ちません。それは、「やめとけ」と言われる理由を補って余りある魅力的なメリットが存在するからです。ここでは、この職種ならではのポジティブな側面を紹介します。
現在、日本国内だけでなく世界的にセキュリティ人材は不足しています。経済産業省などの調査でも数十万人規模の不足が指摘されており、企業は喉から手が出るほど優秀なセキュリティエンジニアを求めています。
需要が供給を大きく上回っているため、就職や転職において非常に有利な立場に立つことができます。一度実務経験を積めば、企業の規模や業種を問わず、多くの選択肢の中から自分に合った職場を選べるようになるでしょう。
高い専門性が求められる分、セキュリティエンジニアの給与水準はITエンジニアの中でも高めに設定されています。希少価値が高いため、企業も優秀な人材を確保するために高い報酬を用意する傾向にあります。
スキルアップして資格を取得したり、マネジメント経験を積んだりすることで、年収1,000万円を超えることも夢ではありません。努力した分だけ対価として返ってきやすい環境は、大きなモチベーションになります。
セキュリティエンジニアの仕事は、企業の資産だけでなく、私たちの生活基盤である社会インフラを守ることに直結しています。金融機関、電力、交通、医療など、あらゆるシステムがIT化されている現代において、その安全を守る意義は非常に大きいです。
サイバー攻撃からシステムを守り抜いた時や、脆弱性を発見して事故を未然に防げた時には、強い達成感と誇りを感じることができます。「社会の役に立っている」という実感は、この仕事ならではの醍醐味です。
AIの進化により多くの仕事が自動化されると言われていますが、セキュリティ領域は人間による判断が必要な場面が多く残されています。攻撃者の心理を読み解く洞察力や、複雑な状況下での倫理的な判断は、AIにはまだ難しい領域です。
むしろAIを悪用した攻撃が増えることで、それに対抗できる高度なセキュリティ人材の需要はますます高まると予想されます。長く安定して働き続けたい人にとって、将来性の高さは大きな安心材料となります。
セキュリティエンジニアとしての経験は、多様なキャリアパスへの入り口となります。技術を極めてスペシャリストになる道もあれば、セキュリティコンサルタントとして経営課題を解決する道、CISO(最高情報セキュリティ責任者)として組織を牽引する道もあります。
また、脆弱性診断やセキュリティ監査などの業務は、フリーランスとして独立しやすい分野でもあります。自分の得意な領域を活かして副業を行うなど、柔軟な働き方が実現しやすいのも魅力です。
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セキュリティエンジニアは専門性が高い職種であるため、適性があるかどうかが仕事を長く続けられるかの鍵となります。ここでは、どのような人がこの仕事に向いているのか、具体的な特徴を挙げて解説します。
セキュリティの世界は日進月歩であり、好奇心を持って新しい情報を追いかけられる人が最も向いています。ニュースで新しいサイバー攻撃の事例を見かけた時に、詳しく調べたくなるような知的好奇心がある人は、楽しみながら成長できるでしょう。
勉強を「やらされている」と感じるのではなく、パズルの謎を解くように技術の仕組みを理解することに喜びを感じられる人であれば、激しい変化も苦になりません。
セキュリティエンジニアは「守る側」の仕事です。悪意ある攻撃者からシステムやユーザーを守りたいという強い正義感を持っている人は、困難な状況でもモチベーションを維持しやすいです。
自分の仕事が誰かの役に立っている、社会の安全を支えているという実感に価値を見出せる人にとって、これほどやりがいのある仕事はありません。高い倫理観を持ち、誠実に業務に取り組める人が求められます。
派手なハッキング対決のイメージがあるかもしれませんが、実際の業務は地道な作業の連続です。膨大なログデータの中から異常の兆候を見つけ出したり、細かい設定ミスがないかを確認したりする作業には、根気と集中力が必要です。
細かいことに気づける几帳面さや、答えが見つかるまで粘り強く調査を続けられる忍耐力がある人は、セキュリティエンジニアとしての高い適性を持っています。
インシデント発生時には現場が混乱することもありますが、そんな時こそ冷静さが求められます。焦らずに状況を整理し、優先順位をつけて的確な指示や対応ができる人は重宝されます。
プレッシャーがかかる場面でもパニックにならず、論理的に物事を考えられるメンタルの強さは、セキュリティエンジニアにとって重要な資質の一つです。

「やめとけ」と言われるような過酷な環境を避け、やりがいを持って働くためには、職場選びが非常に重要です。ここでは、ホワイトな環境を見極めるための具体的なチェックポイントを紹介します。
一般的に、自社サービスを運営している企業や大手SIerのセキュリティ部門は、待遇や労働環境が整っている傾向があります。自社のシステムを守る意識が高いため、セキュリティへの投資も積極的で、エンジニアの意見が尊重されやすい環境が多いです。
一方、下請け構造の下層に位置する企業では、低予算で過重な業務を押し付けられるリスクが高まります。転職活動の際は、企業の立ち位置やセキュリティに対する姿勢をよく確認しましょう。
※ SIer…システムの構築や運用を請け負う事業者のこと。顧客の要望に合わせて、ハードウェアやソフトウェアを組み合わせ、一つの仕組み(システム)を完成させる役割を担う。
SOC(セキュリティオペレーションセンター)などの監視業務に従事する場合、夜勤やシフト勤務が発生します。この際、十分な人員が確保されており、交代制が適切に機能しているかを確認することが重要です。
無理なシフトが組まれていないか、夜勤明けの休息時間は確保されているかなどを面接時に質問してみましょう。体制が整っている企業であれば、健康を守りながら働くことが可能です。
未経験から挑戦する場合や、さらなるスキルアップを目指す場合、企業の教育体制は重要な要素です。資格取得にかかる費用を負担してくれたり、外部研修への参加を推奨していたりする企業は、社員の成長を大切にしている証拠です。
教育に投資できる企業は経営基盤が安定していることが多く、長期的に働く上でも安心できる環境である可能性が高いと言えます。


最後に、セキュリティエンジニアを目指す方からよく寄せられる質問とその回答をまとめました。
はい、可能です。ただし、完全な未経験からいきなり高度なセキュリティ業務に就くのはハードルが高いのが現実です。まずはインフラエンジニアやシステム開発者としてITの基礎経験を積み、その中でセキュリティ知識を身につけてキャリアチェンジするルートが一般的でおすすめです。
また、20代であればポテンシャル採用を行っている企業もあるため、資格取得などで意欲を示せばチャンスは十分にあります。
【関連記事】未経験からインフラエンジニアになるには?20代のためのロードマップ
まずは基礎となる「基本情報技術者試験」や「CCNA」に加え、セキュリティ特化の「情報セキュリティマネジメント試験」がおすすめです。実務レベルを目指すなら、国家資格である「情報処理安全確保支援士(登録セキスペ)」や、国際的に評価の高い「CompTIASecurity+」などが非常に有効です。
これらの資格を持っていることは、知識の証明だけでなく、学習意欲の高さを示すアピール材料にもなります。
【関連記事】セキュリティエンジニア資格完全ガイド2025|経験年数別ロードマップで年収アップ
文系出身で活躍しているセキュリティエンジニアはたくさんいます。技術的な知識は学習すれば身につきますし、むしろ文系の方が得意とする「分かりやすく説明する力」や「文章力」は、報告書作成や顧客対応で大きな武器になります。
論理的思考力やコミュニケーション能力があれば、出身学部に関係なく活躍できるチャンスがある職種です。
この記事の要点
「やめとけ」と言われるほどの責任や学習コストは、裏を返せば高い専門性と市場価値の証です。ご自身がこの職種に向いているか、あるいはどのような環境なら輝けるか、迷っているなら私たちにご相談ください。キャリアカンパニーが、あなたの長期的なキャリアに伴走し、ぴったりな道をご提案します。

アドバイザー
百瀬将悟
大学卒業後、不動産会社に入社。その後、求人広告営業・キャリアアドバイザーを経験したのち、株式会社エンデバースを設立。
現在はキャリアアドバイザー/リクルーティングアドバイザーとして活動しながら、IT企業の採用コンサルティングにも従事。採用と転職市場の両方を理解している点を強みとし、転職市場のリアルな情報と企業の採用基準を踏まえ、「市場価値を高めながら活躍できるエンジニア」のキャリア形成をサポート。