
セキュリティエンジニアという職種に対して、どのようなイメージをお持ちでしょうか。「需要が高そう」「給料が良さそう」といったポジティブな印象を持つ一方で、「本当に自分でも稼げるのか」「激務ではないか」という不安も抱えているかもしれません。
実態を紐解いていくと、セキュリティエンジニアの年収は、ただ長く働けば「なんとなく上がる」ものではなく、自身の市場価値を正しく理解し「戦略的に上げにいく」ものだという事実が浮き彫りになります。
この記事では、曖昧な平均値だけでは見えてこない、セキュリティエンジニアのリアルな年収事情と、確実に収入をアップさせるための具体的なロードマップを解説します。読み終える頃には、あなたが次に取るべきアクションが明確になっているはずです。


セキュリティエンジニアへの転職やキャリアアップを検討する際、最も気になるのはやはり「実際にどれくらい稼げるのか」という点でしょう。市場に出回っている求人データや公的な統計をもとに、その実態を紐解いていきます。
セキュリティエンジニアの平均年収は、およそ560万円前後が相場です。国税庁の調査による日本の平均給与が約460万円であることを踏まえると、一般平均よりも100万円近く高い水準にあります。
この金額差は、専門職としての手当や基本給の高さに起因します。セキュリティ人材は単なるシステムのお守り役ではなく、企業の資産を守る重要なポジションとして扱われるため、他のIT職種と比較してもベース給与が高めに設定される傾向があります。
年代別の推移を見ると、キャリア初期と中期以降で年収の伸び方に特徴があります。20代前半までは他のエンジニア職種と大差はありませんが、実務経験を積みプロジェクトを任され始める20代後半から30代にかけて、急激に上昇カーブを描きます。
以下の表は、年代ごとの年収目安を整理したものです。
| 年代 | 平均年収の目安 | 求められる役割 |
| 20代前半 | 300万〜400万円 | 運用・監視(SOC)、定型業務の遂行 |
| 20代後半 | 400万〜500万円 | 設計・構築、脆弱性診断、小規模PL |
| 30代 | 500万〜650万円 | コンサルティング、要件定義、PM |
| 40代以降 | 600万〜800万円 | セキュリティ戦略立案、CISO候補、監査 |
このように、40代で年収600万円から800万円のゾーンに到達するケースが多く、実力が給与に反映されやすい職種と言えます。
注意すべき点は、所属する企業の規模や業態によって年収レンジが大きく異なることです。平均年収が高いからといって、どの企業でも高待遇が保証されるわけではありません。
大手SIerや外資系ベンダー、金融機関の社内SEなどは、給与水準が極めて高く設定されています。一方で、下請け構造の下位に位置する企業や、セキュリティ意識の低い中小企業のひとり情シスといった環境では、責任の重さに対して報酬が見合わないケースも散見されます。高年収を目指すなら、個人のスキルアップと同じくらい「働く場所選び」が重要です。
※ SIer…システムの構築や運用を請け負う事業者のこと。顧客の要望に合わせて、ハードウェアやソフトウェアを組み合わせ、一つの仕組み(システム)を完成させる役割を担う。
※社内SE…自社のITシステムやインフラの運用・保守を担当するエンジニアのこと。システムの企画や導入、社員からのITに関する相談対応(ヘルプデスク)など、自社の業務効率化を技術面から支える。

単に「IT業界だから」という理由だけで給料が高いわけではありません。セキュリティエンジニアが高待遇を受ける背景には、明確な市場原理と構造的な理由が存在します。
最大の要因は、圧倒的な「売り手市場」であることです。サイバー攻撃の手法は日々高度化しており、企業は対策を迫られていますが、それに対応できるスキルを持った人材は市場に全く足りていません。
経済産業省などの試算でも、セキュリティ人材の不足数は数十万人規模に上ると予測されています。企業は優秀なエンジニアを確保するために高い報酬を提示せざるを得ない状況が続いており、この需給バランスの偏りが年収相場を押し上げています。
セキュリティ対策は、企業の存続に関わる経営課題です。情報漏洩やシステム停止が発生すれば、損害賠償や社会的信用の失墜により、ビジネスそのものが立ち行かなくなるリスクがあります。
そのため、経営層は開発費や広告費を削ってでも、セキュリティ予算を最優先で確保する傾向にあります。守りの要であるセキュリティエンジニアへの人件費は「コスト」ではなく「必要な投資」として認識されるため、予算の上限が高くなりやすいのです。
セキュリティエンジニアには、セキュリティ知識だけでなく、ネットワーク、サーバー、クラウド、アプリケーション、さらには法律やコンプライアンスに至るまで、極めて広範囲な知識が求められます。
例えば、Webアプリの脆弱性を診断するには、HTTP通信の仕組みやプログラムのコードを理解している必要があります。インフラを守るには、TCP/IPやOSの深層知識が不可欠です。このように習得すべき技術領域が広く深いことから、参入障壁が高く、その対価として高い報酬が支払われています。
※ TCP/IP…インターネットを含む現在のネットワーク通信において、標準的に利用される通信ルールの集まり。データの正確な転送を保証する「TCP」と、届け先の住所(IPアドレス)を管理する「IP」などの規約を組み合わせた仕組み。
※ OS…オペレーティングシステム。コンピューターを動かすための最も土台となるソフトウェアのこと。キーボード入力や画面表示、アプリの実行など、ハードウェアとソフトウェアの仲介役として全体を管理する。

平均年収が高いとはいえ、誰もが1000万円プレイヤーになれるわけではありません。壁を突破し、トップティアの収入を得るエンジニアには共通する要素があります。
年収1000万円の壁を超えるための鍵は、技術力プラスアルファの「コンサルティング能力」です。手を動かして設定を行うだけでなく、経営層に対してセキュリティリスクを説明し、組織全体のセキュリティポリシーを策定する能力が求められます。
クライアントのビジネス課題を理解し、「なぜその対策が必要なのか」を経営視点で語れるエンジニアは、コンサルファームや監査法人などで高額な報酬を得ています。技術をビジネス価値に変換できる人材こそが、市場で最も高く評価されます。
外資系企業は日系企業に比べて給与水準が高く、年収1000万円以上が標準的なポジションも珍しくありません。そこで必須となるのが英語力です。
最新の脅威情報や技術ドキュメントの多くは英語で発信されます。また、グローバル企業のセキュリティ担当者は海外本社のCISOと連携する必要があるため、ビジネスレベルの英語力が欠かせません。加えて、CISSPなどの国際的な難関資格を保有していることは、そのスキルの証明として強力な武器になります。
※ CISSP…情報セキュリティに関する高度な知識と実務経験を証明する国際的な認定資格。
組織のリーダーとしてチームを率いた経験も、高年収へのパスポートです。プロジェクトマネージャー(PM)として予算管理や人員配置を行い、大規模なセキュリティ導入プロジェクトを成功させた実績があれば、評価は格段に上がります。
単なる技術者としてではなく、組織のリスクマネジメントを担う幹部候補として見られるようになれば、年収レンジは一気に跳ね上がります。CISOやセキュリティ部長といったポジションを目指す意識を持つことが重要です。

資格取得は、スキルを客観的に証明し、年収アップ交渉や転職を有利に進めるための有効な手段です。特に評価されやすい資格を厳選して紹介します。
| 資格名 | 概要・特徴 | おすすめの理由 |
| 情報処理安全確保支援士 | 国内初のセキュリティ系国家資格(登録セキスペ)。 | 必置資格としての需要があり、官公庁案件などで強い。資格手当の対象になりやすい。 |
| CISSP | (ISC)²が認定する国際的なプロフェッショナル認定資格。 | 外資系や大手企業での評価が絶大。年収1000万超えの求人で必須条件になることが多い。 |
| AWSCertifiedSecurity | AWS環境におけるセキュリティ設計・運用スキルを認定。 | クラウド利用の急増に伴い需要が爆発中。即戦力として評価されやすい。 |
情報処理安全確保支援士(登録セキスペ)は、日本国内で唯一の士業系セキュリティ資格です。国家資格としての信頼性は抜群で、特に官公庁や金融系の案件では、有資格者の配置が要件となることもあります。
企業によっては月額数万円の資格手当が支給されるケースもあり、取得コストに対するリターンが見込めます。国内でキャリアを築くのであれば、まずはこの資格の取得を目指すのが王道です。
世界的に最も権威あるセキュリティ資格の一つがCISSPです。取得には実務経験が必要であり、試験の難易度も非常に高いですが、その分市場価値は計り知れません。
外資系企業や大手コンサルティングファームへの転職を目指す場合、CISSPを持っているだけで書類選考の通過率が劇的に変わります。グローバルスタンダードな知識体系を持っている証明となり、年収交渉の強力なカードとして機能します。
近年、企業のシステム基盤がクラウドへ移行していることに伴い、クラウドセキュリティのスキルが重宝されています。特にAWSやAzure、GoogleCloudなどのプラットフォーム認定資格は、現場での即戦力性をアピールするのにぴったりです。
AWSCertifiedSecurity-Specialtyなどは、具体的な設定やアーキテクチャ設計のスキルを証明できるため、クラウドセキュリティエンジニアとしての高単価案件を獲得しやすくなります。実務と直結しているため、学習内容がそのまま仕事に活きる点もメリットです。
【関連記事】セキュリティエンジニア資格完全ガイド2025|経験年数別ロードマップで年収アップ


「セキュリティは難しそうだから、未経験には無理ではないか」と考える方も多いですが、必ずしもそうではありません。現在のスキルセットに応じた参入ルートが存在します。
サーバーやネットワークの構築・運用経験があるエンジニアにとって、セキュリティエンジニアへの転身は非常にスムーズです。セキュリティはインフラの上に成り立つ技術であるため、TCP/IPやOS、クラウドの知識があることは大きなアドバンテージになります。
インフラエンジニアとしての経験があれば、セキュリティ製品の導入や設定、ログ分析といった業務から入り、徐々に専門性を高めていくキャリアパスが描けます。多くの企業が「セキュリティ知識のあるインフラエンジニア」を求めています。
IT業界自体の経験がない完全未経験者の場合、まずはSOC(SecurityOperationCenter)などの監視・運用オペレーターからスタートするのが一般的です。
アラートの内容を確認し、手順書に従って対応する業務を通じて、セキュリティの基礎や現場の空気を学ぶことができます。ただし、監視業務だけを長く続けても大幅な年収アップは難しいため、業務時間外での資格取得やラボ環境での学習を並行し、次のステップへ進む準備を怠らないことが大切です。
関連記事:未経験からインフラエンジニアになるには?20代のためのロードマップ
セキュリティの世界は座学だけでは通用しない部分が多くあります。攻撃手法や防御技術は常に変化しているため、現場で実際にインシデントに触れたり、最新のツールを使ったりする経験が何よりの学習になります。
ある程度の基礎知識を本やWebで学んだら、早めに実務に就くことを優先すべきです。未経験歓迎の求人や、社内での部署異動のチャンスを積極的に活用し、まずは「セキュリティの実務経験者」という肩書きを手に入れることが、キャリアアップの第一歩です。
【関連記事】【現実解説】未経験からセキュリティエンジニアになる方法|確実に目指すキャリアパス

漫然と業務をこなしているだけでは、給料は頭打ちになります。年収を上げていくためには、自分がどの山を登るのか、明確なキャリアパスを描く必要があります。
現在インフラエンジニアの方は、既存のスキルに「セキュリティ」を掛け合わせるのが最短ルートです。まずは今の業務の中で、FWの設定見直しやサーバーの硬化(ハードニング)、脆弱性対応などを積極的に引き受けましょう。
その実績を職務経歴書に書き、セキュリティ専任ポジションへ転職することで、年収ベースを上げることができます。インフラ知識という土台があるため、セキュリティ設計や構築の現場でも即戦力として重宝され、安定したキャリアを築けます。
技術そのものが好きで、マネジメントよりも現場にいたい方は、特定領域のスペシャリストを目指すべきです。例えば、ペネトレーションテスト(侵入テスト)やフォレンジック(証拠保全・解析)、マルウェア解析といった分野です。
これらの高度な技術を持つ専門家は極めて希少であり、高い報酬を払ってでも雇いたいという企業が存在します。CTF(CaptureTheFlag)などのコンテストに参加して腕を磨き、その界隈での知名度を上げることも、市場価値を高める有効な手段です。
正社員という枠組みを超えて収入を最大化する方法として、フリーランスという選択肢があります。セキュリティ診断やコンサルティング、CISO補佐といった業務委託案件は単価が高く、月額100万円を超えることも珍しくありません。
高い専門性と自己管理能力が求められますが、組織の給与テーブルに縛られず、自分の実力がダイレクトに収入に反映される点は大きな魅力です。複数の案件を掛け持ちしたり、週3日稼働で高収入を得たりと、働き方の自由度も広がります。
【関連記事】セキュリティエンジニアのキャリアパスはどう描く?仕事内容や求められるスキルとは
この記事の要点をまとめます。
セキュリティエンジニアは、戦略的なキャリア形成によって大幅な年収アップが可能な魅力的な職種です。しかし、最適なルートや必要なスキルセットを一人で見極めるのは簡単ではありません。私たちCAREERACCOMPANYは、あなたの経験や強みに合わせたキャリアプランを一緒に考え、伴走します。まずは現状や目標についてお聞かせください。
