COLUMN IT業界

Webデザイナーの仕事はなくなる?AI時代に生き残る為の現実的なロードマップ

2025.11.14

目次

Webデザイナーの仕事ってAIでなくなるの?

SNSで「未経験から月収40万円」という情報を見て興味を持った一方で、「AIに取って代わられる」という投稿を目にして不安になっていませんか?

結論から言えば、Webデザイナーの仕事は完全にはなくなりません。ただし、「選ばれる人材」になるための条件は確実に厳しくなっています。

AIに負けないスキル、そして現実的なキャリアパスを徹底解説します。

【結論】Webデザイナーの仕事は完全にはなくならない

「Webデザイナーはもう終わり」「AIに仕事を奪われる」──こうした情報を目にして、学習を始めようか迷っている方も多いのではないでしょうか。

結論から申し上げると、Webデザイナーという職業そのものがなくなることはありません。ただし、企業が求める人材像が変化し、未経験者が転職市場に参入するハードルも上がっているのが現実です。

2025年の市場データが示す需要の実態

情報サービス業の売上高は年々増加傾向にあり、Web制作を含むデザイン関連市場も堅調に推移しています。

一方で、厚生労働省のデータによると、デザイナー職の有効求人倍率は約0.12倍という厳しい現実があります。これは「求職者10人に対して求人が約1件しかない」という状態を意味します。比較として、IT系エンジニア職の有効求人倍率は2.5~3.2倍と、圧倒的に需要が高い状況です。

この数字だけを見ると「Webデザイナーは厳しい」と感じるかもしれません。しかし重要なのは求人数そのものではなく、求人の質の変化です。転職エージェントとして企業の採用担当者と日々やりとりする中で、「ポートフォリオはきれいだけど実務経験がないと判断が難しい」「デザインツールが使えるだけでは不十分。UIやUXの理解が必要」といった声を頻繁に耳にします。

つまり、求人数が少ないのではなく、企業が求めるスキルレベルが上がっているのです。

企業が求めるのは「即戦力」または「将来の幹部候補」のみ

採用現場の実態として、企業が求めている人材は大きく2つに分かれます。

即戦力人材
実務経験2〜3年以上、充実したポートフォリオ(実案件の成果物)、HTML/CSSなどフロントエンドの基礎知識、クライアントとのコミュニケーション経験

ポテンシャル人材
20代前半で吸収力が高い、デザイン以外のスキル(プログラミング、マーケティングなど)への学習意欲、将来的にディレクターやマネージャーを目指せる素養

一方で、企業が採用に慎重になるのは、スクールを卒業しただけで実務経験がない、ポートフォリオが架空案件のみ、「デザインだけやりたい」という姿勢、20代で未経験かつ学習期間が短い、といった人材です。

「ポートフォリオさえあれば転職できる」時代は終わったというのが、転職支援の現場で実感している現実です。

「なくなる」と言われる3つの理由

なぜ「Webデザイナーの仕事がなくなる」と言われるのでしょうか。主な理由は3つあります。

理由①AIデザインツールの台頭
ChatGPT、Midjourney、Canvaなどの進化により、簡単なバナーやSNS投稿用のビジュアルは非デザイナーでも数分で作成できるようになりました。

理由②ノーコード/ローコードツールの普及
Wix、Shopify、STUDIOなどの進化により、コーディング知識がなくてもWebサイトを構築できるようになり、中小企業を中心に「わざわざデザイナーに依頼しなくても自社で作れる」という判断が増えています。

理由③クラウドソーシングによる価格競争
ランサーズやココナラなどで「バナー1枚3,000円」といった低単価案件が増加し、プロのデザイナーが参入しづらい価格帯での競争が激化しています。

これらの理由から、「単純作業的なデザイン業務」は確実に減少しています。しかし逆に言えば、戦略的なデザイン、高度なUI/UX設計、クリエイティブディレクションなど、AIでは代替できない領域は今後も残り続けます

AIに「奪われる仕事」と「奪われない仕事」を明確化

パソコンを操作するエンジニア

「AIに仕事を奪われる」という漠然とした不安を抱えている方も多いでしょう。しかし実際には、AIが得意な領域と苦手な領域は明確に分かれています。この違いを理解することで、「どのスキルを伸ばすべきか」が見えてきます。

AIが得意な領域・代替される可能性が高い業務

以下の業務は、AIツールの進化によって代替される可能性が高いと言えます。

AIに奪われる業務

  • テンプレート的なバナー制作
  • 簡易なランディングページ制作
  • 画像の加工・リサイズ作業
  • SNS投稿用のビジュアル制作
  • 既存デザインの色変更・微調整

これらの業務で収入を得ようとしても、今後は単価の下落や案件の減少が避けられません。

人間にしかできない領域・AIが苦手な業務

一方で、以下の業務はAIでは代替が難しく、人間のデザイナーにしかできない領域です。

AIに奪われない業務

  • ブランディングデザイン
    企業の「らしさ」を理解し視覚化する仕事は、クライアントへのヒアリング、市場調査、競合分析を経て、唯一無二のブランドイメージを創り上げる力が必要
  • UI/UX設計
    ユーザーインタビュー、ユーザビリティテスト、データ分析をもとに「使いやすさ」を追求する仕事
  • クリエイティブディレクション
    デザインチームを統括し、クライアントの課題を解決するための戦略を立案
  • クライアントとの対話・提案
    本当の課題を引き出し、解決策を提案する高度なヒアリング力

未経験者が「AIに負けない仕事」を任されるまでの現実

ここで厳しい現実をお伝えします。上記の「AIが苦手な業務」は、いずれも実務経験2〜3年以上のスキルレベルが求められるものばかりです。

未経験者が最初に任されるのは、「簡単なバナー制作」「既存デザインの修正」など、AIで代替されやすい業務です。従来のキャリアパスである「未経験で入社→単純作業を覚える→徐々に高度な仕事へ」というステップが、AIの登場によって崩れつつあるのです。

だからこそ、未経験から目指す場合は、最初から「AIに負けないスキル」を意識して学ぶことが不可欠です。

2025年以降のWebデザイナーに求められる5つのスキル

AIに代替されず、企業から「この人なら採用したい」と思われるWebデザイナーになるためには、どんなスキルが必要なのでしょうか。転職エージェントとして企業の採用担当者から実際に聞いた声をもとに、必須の5つのスキルを解説します。

①UI/UXデザインの深い理解

UI(ユーザーインターフェイス)
ボタン、メニュー、画面レイアウトなどユーザーが製品やサービスと接触する際に目にするすべての要素

UX(ユーザーエクスペリエンス)
ユーザーが製品やサービスを通じて得る体験全体

単なる「見た目のデザイン」ではなく、「使いやすさ」を設計する力が求められています。ユーザー行動分析(Google Analytics、ヒートマップ)、ペルソナ設計、ユーザビリティテスト、情報設計(IA)といったスキルが必要です。

「見た目がきれい」なだけのデザインはAIでも作れますが、「ユーザーが迷わず目的を達成できるデザイン」は人間の深い理解と分析が必要です。

学習方法:書籍『ノンデザイナーズ・デザインブック』、Coursera「Google UX Design Certificate」、既存サイトのUI/UX改善提案を自主作成

②フロントエンド開発の基礎知識

コーディングができなくても、「読める・理解できる」レベルの知識は必須です。HTML/CSS、JavaScript、レスポンシブデザイン、FigmaからHTML/CSSへの落とし込み方を理解しましょう。

エンジニアと円滑にコミュニケーションを取るため、そして「実装可能なデザイン」を作れるデザイナーになるために重要です。

学習方法Progateドットインストール模写コーディング

③AIツールを使いこなす力

AIに「奪われる」のではなく、AIを「使いこなす側」になることが重要です。ChatGPT(コピーライティング、アイデア出し)、Midjourney/Adobe Firefly(画像生成)、Figma AI(デザイン効率化)、Remove.bg(背景削除)などを活用しましょう。

AIで「叩き台」を作り、人間が「ブラッシュアップ」する流れが基本です。作業時間を短縮し、単価を上げることができます。

④Webマーケティング・データ分析スキル

「デザインの成果」を数値で語れるデザイナーは圧倒的に重宝されます。Google Analytics、ヒートマップ解析、A/Bテスト、CVR改善などのスキルを身につけましょう。

クライアントが最も知りたいのは「このデザインで売上が上がるのか?」という点です。データに基づく提案ができれば、単価の高い案件を獲得できます

学習方法:Google「アナリティクス アカデミー」(無料)、自分のサイトでGoogle Analyticsを導入して実践

⑤クライアントワーク・提案力

「作業者」ではなく、「課題解決のパートナー」になるためのスキルです。ヒアリング力、提案資料作成、プレゼンテーション、スケジュール管理といった能力が求められます。

クライアントは「言われたものを作るだけの人」ではなく、「一緒に考えてくれる人」を求めています

学習方法:クラウドソーシングで実案件を受注、デザインコンペに参加

未経験からWebデザイナーを目指す際の注意点

現実を知らずに進むと、時間とお金を無駄にするリスクがあります。転職エージェントとして多くの求職者を支援してきた中で聞いた「こうしておけばよかった」という後悔の声をもとに、注意点をお伝えします。

また、未経験向けのWebデザイナー求人の罠について、【2025年最新】Webデザイナー未経験求人が怪しい理由で解説しています。

注意点①求人の多くは「実務経験必須」

「未経験OK」の求人は全体の約10%もなく、その多くは激務・低賃金の制作会社です。転職エージェントとして企業の採用担当者と話す中で、「ポートフォリオだけでは書類選考を通過させられない」という声を頻繁に聞きます。

対策
副業で実務経験を積んでから転職活動を開始するか、未経験OKのIT職種で業界に入ることを検討しましょう。

注意点②短期間(3〜6ヶ月)でプロになるのは難しい

SNSやスクールの広告で「3ヶ月でWebデザイナーデビュー」「半年で月収40万円」といった文言を見かけますが、現実はそう甘くありません。スクール卒業後すぐに転職できるのは一部の優秀な人材のみで、月収40万円を安定して稼ぐには最低でも実務経験2〜3年が必要です。

注意点③スクール選びは慎重に

高額な費用を払っても転職できない人は少なくありません。スクール卒業生が市場に溢れ、ポートフォリオが似通っています。転職支援の「提携企業」が必ずしも良い企業とは限りません。

「スクールに通えば転職できる」という考えは幻想です。スクールは「基礎学習の効率化」として割り切り、並行してクラウドソーシングで実案件を受注し、実績を作ることが成功の鍵です。

目指すべき人の3つの条件

以下の3つの条件に当てはまる方は、Webデザイナーを目指す価値があります。

条件①本業の収入を確保しながら、副業で実績を積める人
未経験からいきなり転職するのは非常に難しいため、副業で実績を作ってから転職活動を開始する方が成功率は高くなります。

条件②プログラミング学習に抵抗がない人
フロントエンドの基礎知識は必須です。「デザインだけやりたい」という姿勢では市場価値が低くなります。

条件③営業・提案活動が苦ではない人
クライアントとのコミュニケーションは必須です。「黙々と作業したい」タイプの方には向いていません

正直、避けたほうがいい人

以下に当てはまる方は、Webデザイナー以外のキャリアを検討することをおすすめします。

Webデザイナーに向かない人

  • 「手に職をつけたい」だけで、デザインへの強い興味がない人
  • 短期間でプロになれると思っている人
  • 営業・提案活動が苦手で「制作だけやりたい」人
  • 30代以降で1〜2年の学習期間を確保できない

これらに当てはまる方には、フロントエンドエンジニア、Webマーケター、インフラエンジニアなど、別のIT職種をおすすめします。

未経験からWebデザイナーになる3つのロードマップ

キャリアが広がるイメージ画像

注意点を踏まえた上で、未経験からWebデザイナーになるための3つの現実的なロードマップをご紹介します。あなたの状況に合ったルートを選んでください。

ロードマップ①副業で実績を積んでから転職する【最も確実・リスク低】

こんな人におすすめ
・今の仕事を続けながら安全にキャリアチェンジしたい人
・1〜2年かかってもいいから確実に実績を作りたい人

期間やること目標
0〜6ヶ月基礎学習
(Figma、デザイン原則、UI/UX基礎)
ツールを使いこなせるレベルに
3〜6ヶ月ポートフォリオ制作
(架空案件5〜10点)
営業できる作品を揃える
6〜12ヶ月クラウドソーシングで受注開始月5万円の副業収入+実績10件
12〜18ヶ月単価を上げつつ転職活動開始本業Webデザイナーとして転職

メリット収入を確保しながらスキルアップできる、実務経験を積んでから転職できる

デメリット:時間がかかる、本業と副業の両立が大変

ロードマップ②未経験OKのIT職種で業界参入→副業・独学でスキルを磨いて転職

こんな人におすすめ
・IT業界の実務経験を早く積みたい人
・収入を得ながら業界知識も身につけたい人

まず未経験OKのIT職種(Webディレクター補助、マーケティングアシスタント、インフラエンジニアなど)でIT業界に入ります。本業でIT業界の基礎知識を習得しながら、同時にWebデザインを独学で学び、副業でWebデザイン案件を受注開始。12〜18ヶ月後に「IT業界経験者×実務実績あり」の状態でWebデザイナーに転職します。

メリット「IT業界未経験」の壁を早期にクリアできる、給料をもらいながら業界知識・人脈を獲得できる

最も成功率が高いのはこのルートです。企業が最も重視するのは「ポートフォリオ」よりも「実務経験」だからです。

ロードマップ③スクール+転職支援で最短ルートを狙う【スピード重視・資金あり】

こんな人におすすめ
・半年〜1年で本気でキャリアチェンジしたい人
・独学だと挫折しそうで強制力が欲しい人
・学習に投資できる資金がある人(30〜80万円)

Webデザインスクールで集中学習し、スクールの転職支援を活用します。ただし、スクールで学びながら、並行してクラウドソーシングで実績を作るのが成功の鍵です。

メリット:最短ルートでWebデザイナーになれる、メンターのフィードバックでポートフォリオの質が上がる

デメリット:費用がかかる、スクール卒業生が多く差別化が難しい

Webデザイナーを目指す前に検討すべき職種

Webデザイナー以外のキャリアも検討する価値があります。

フロントエンドエンジニア
プログラミング寄りだが、デザインスキルがあれば差別化になる。需要が高く、給与水準も高い(平均年収500〜700万円)

インフラエンジニア
サーバー、ネットワーク、クラウドなどIT基盤を支える仕事。安定性が高く、未経験OKの求人が多い。

Webマーケター
データ分析、広告運用、SEO対策などマーケティング全般。デザインスキルがあれば、クリエイティブ制作もできて強い

よくある質問|WebデザイナーのキャリアQ&A

Q1:30歳から未経験で目指すのは遅いですか?

正直に言うと、20代前半と比べるとかなり厳しいです。企業は「未経験者=育成前提」で採用するため、若い人材を優先します。

ただし、以下の条件を満たせば可能性はあります。副業で実務経験を積んでから転職活動(「未経験」ではなく「経験者」として応募)、前職のスキルを活かせるポジションを狙う、フリーランスとして独立する道を選ぶ、などです。

30代以降のおすすめキャリア:Webディレクター、Webマーケター、フロントエンドエンジニア

Q2:フリーランスと会社員、どちらを目指すべき?

まずは会社員(または副業)で実務経験を積むべきです。いきなりフリーランスになっても、実績がないと案件を獲得できません。

おすすめのキャリアパス:会社員で2〜3年実務経験を積む → 副業で個人案件を受注し実績を増やす → フリーランスとして独立

Q3:Webデザイナーの平均年収は?

経験年数会社員(正社員)フリーランス
未経験〜1年250〜350万円100〜200万円
2〜3年350〜450万円300〜500万円
5年以上450〜600万円500〜800万円
10年以上600〜800万円700〜1,200万円

年収を上げるポイント:UI/UXデザイナー、アートディレクターなど上位職種へステップアップフロントエンド開発スキルを習得し単価を上げる事業会社のインハウスデザイナーを狙う(制作会社より高給)

Q4:副業で月5万円稼ぐのは現実的?

現実的ですが、半年〜1年の実績作りが必要です。最初の3ヶ月は低単価案件で実績作り(時給換算500円以下になることも)、実績10件溜まったら次の3ヶ月で単価を上げる、継続案件を獲得したら半年後に月5万円を安定して稼げるようになります。

まとめ|現実を知った上で、あなたに合った道を選ぼう

本気でWebデザイナーを目指す人は、まず副業で実績を作る(クラウドソーシングで低単価案件からスタート)、1〜2年の長期視点で取り組む覚悟を持ちましょう。

デザインもプログラミングも興味がある人は、フロントエンドエンジニアを検討してください。Webデザイナーより未経験からの転職がしやすく、需要も高い職種です。

安定性を重視したい人は、インフラエンジニアなど、IT業界の他職種を検討しましょう。手に職をつけつつ、安定した収入を得られます。

キャリアの選択肢を相談したい人は、IT業界専門の転職エージェントに相談してください。あなたのスキル・経験・希望に合ったキャリアパスを一緒に考えます。

現実を知った上で、あなたに合った道を選び、着実にスキルを積み上げていきましょう。IT業界は多様なキャリアパスがある魅力的な業界です。Webデザイナーとしてでも、別の職種としてでも、あなたの活躍を応援しています。

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