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「未経験からWebデザイナーになりたい」と思い求人サイトを見たものの、「この求人、本当に大丈夫?」と不安になったことはありませんか。実は、Webデザイナー未経験求人には悪質な企業が紛れ込んでいることが多いのが現実です。
本記事では、なぜWebデザイナー求人が狙われやすいのかその構造的理由から、実際の被害事例、そして怪しい求人を事前に見分ける具体的なチェックリストまで、業界のプロならではの視点で詳しく解説します。
求人サイトで「未経験歓迎・Webデザイナー募集」という魅力的な文言を見つけたとき、多くの方が「本当にそんなことが可能なのか」と疑問に思うのではないでしょうか。
実際、厚生労働省の統計データを見ると、デザイナー職の有効求人倍率は0.12倍と非常に厳しい現実があります。にもかかわらず「未経験OK」の求人が溢れているのはなぜでしょうか。この章では、企業側の真の目的、業界の人材需給バランス、そして求職者との認識ギャップについて、データと実体験に基づいて詳しく解説していきます。
転職エージェントとして企業の採用担当者と日々やりとりする中で見えてくるのは、「未経験OK」求人の裏にある企業の真の目的です。この背景には、健全な企業と悪質な企業、それぞれ全く異なる理由があります。
まず、正当な企業が未経験者を採用する理由についてご説明しましょう。健全なWeb制作会社では、経験者の採用競争が激化しているため、未経験者を一から育成する戦略を取ることがあります。特に地方の中小企業では、都市部の大手企業に経験者を取られてしまうため、「ポテンシャル採用」として未経験者を積極的に採用しています。
一方で、怪しい企業の「未経験OK」には全く異なる意図が隠されています。彼らの主な目的は、Webデザイナーという人気職種を餌に多くの応募者を集め、実際には派遣業務やコールセンター、営業職への配属を行うことです。または高額な教材費を請求し、教育事業で利益を上げることを狙っているケースも少なくありません。
IT業界未経験の方は、まずIT業界への理解を深めることから始めましょう。IT業界の構造を知ることで怪しい求人の求人の見え方も変わってきます。
厚生労働省によると、デザイナー職の有効求人倍率は約0.12倍という厳しい現実があります。これは求職者10人に対して求人が約1件しかないことを意味します。一方で、IT系エンジニア職の有効求人倍率は2.5~3.2倍と、圧倒的に需要が高い状況です。
この数字が示すとおり、本来であればWebデザイナーは競争の激しい職種であり、未経験者を積極的に採用する必要性は企業側にはありません。にもかかわらず「未経験歓迎」の求人が溢れているという矛盾こそが、怪しい求人が存在する根本的な理由なのです。
実際の制作現場では、PhotoshopやIllustratorといったデザインソフトの習熟はもちろん、HTMLやCSSの知識、クライアントとのコミュニケーション能力など、多岐にわたるスキルが求められます。これらを全て「未経験から教えます」という企業があったとしても、教育コストを考えれば現実的ではありません。
最も深刻な問題は、企業側と求職者側の「未経験」に対する認識の違いです。この認識ギャップは、健全な企業と悪質な企業の両方に存在しますが、その内容は大きく異なります。
まず、健全な企業の「未経験OK」について説明しましょう。正当なWeb制作会社が未経験者を採用する際、企業側は「実務経験はないが、基礎スキルと学習意欲を持った人材」を想定しています。つまり、PhotoshopやIllustratorの基本操作、HTML/CSSの基礎知識、簡単なデザイン作品の制作経験などを前提としているのです。
一方で、求職者の多くは「完全に何も知らない状態からでもWebデザイナーになれる」と解釈してしまいがちです。この認識の違いにより、健全な企業でも選考で落とされてしまうケースが多発しています。
さらに深刻なのは、悪質な企業との認識ギャップです。求職者は「完全未経験だが、デザイナーとして成長できる環境」を期待して応募します。しかし、怪しい企業の考える「未経験OK」は「デザイン業務以外でも構わない人材」という意味で使われているのが実情です。
転職支援の現場で頻繁に耳にするのは、「面接では『デザイン業務を中心に』と言われたのに、実際に配属されたのはコールセンターだった」「研修期間中はデザインを学べると思ったら、営業ノルマを課された」といった相談です。
このギャップを理解せずに転職活動を進めてしまうと、期待していたキャリアチェンジが実現できないだけでなく、貴重な時間を無駄にしてしまう可能性があります。
なぜプログラマーやインフラエンジニアではなく、Webデザイナーばかりが悪質な求人に狙われるの…?
という疑問を持ったことはありませんか。
転職エージェントとして多くの求職者と面談する中で見えてくるのは、Webデザイナーという職種が持つ特別な特性です。
この章では、なぜWebデザイナーが標的にされやすいのか、その構造的な理由を4つの観点から具体的に解説していきます。
転職エージェントとして多くの求職者と面談する中で見えてくるのは、Webデザイナーという職種が持つ特別な魅力です。
まず、Webデザイナーは「クリエイティブ」「おしゃれ」「在宅ワーク可能」といったポジティブなイメージが強く、特に20代の転職希望者から圧倒的な人気を誇ります。他のIT職種と比較しても、一般的な認知度と憧れ度は段違いです。
実際にGoogleでの検索数で比較すると、「Webデザイナー 未経験」に関連するキーワードは他のIT職種と比較しても大きな差があります。この検索数の多さこそが、悪質な企業がWebデザイナー求人を餌にする理由の一つなのです。
さらに、コロナ禍以降のリモートワーク需要の高まりにより、「自宅でできるクリエイティブな仕事」としてWebデザイナーへの関心はさらに高まっています。悪質な企業はこの心理を巧みに利用し、「未経験からWebデザイナーに」というキャッチコピーで多くの応募者を集めているのが現実です。
Webデザイナーのスキル判定には、他のIT職種にはない曖昧さがあります。プログラマーであればコードの書き方で、インフラエンジニアであればサーバー構築の知識で明確にスキルを測ることができます。しかし、デザインは「センス」や「創造性」といった主観的な要素が強く、客観的な判定が困難です。
この特性を悪用し、「あなたにはデザインセンスがある」「研修を受ければ必ずできるようになる」といった曖昧な評価で求職者を安心させる手口が横行しています。実際には、PhotoshopやIllustratorといったデザインソフトの操作スキル、色彩理論、タイポグラフィの知識など、習得すべき技術は非常に具体的で専門性が高いものです。
転職支援の現場でよく見かけるのは、「面接で『デザインの基礎から教えます』と言われたから安心していたら、実際にはExcelでの資料作成ばかりやらされている」といった相談です。このように、スキル判定の曖昧さを利用して、実際の業務内容をすり替える企業が後を絶ちません。
Webデザイナーは非常に高い単価で派遣できる職種の一つです。一般的な事務職の派遣単価が時給1,500円程度なのに対し、Webデザイナーは時給2,500円〜3,500円で派遣されることが珍しくありません。
この高単価を狙い、実際にはデザイン業務を行わない人材を「Webデザイナー」として派遣する悪質な業者が存在します。派遣先企業も、実際の業務内容がコールセンターや事務作業であることを知りながら、「デザイナー」という名目での高単価を受け入れているケースもあります。
しかし、悪質な企業は高単価で人材を派遣しているにもかかわらず、実際に働く人が受け取れる所得は決して高くありません。経済産業省によると、コンテンツクリエイター・デザイナーの平均年収は411万円となっており、これは決して高収入とは言えない水準です。
求職者は「高収入が期待できるWebデザイナー」というイメージに惹かれて応募するものの、実際には全く違う職種で働かされた上に、期待していた収入も得られないという二重の被害に遭ってしまうのです。
Webデザイナーという職種は、働き方が特殊で法律的にも判断が難しい部分があります。悪質な企業は、この曖昧さを巧みに利用しています。
よくある手口が「クリエイティブな仕事だから」という理由で、正社員ではなく個人事業主として契約を結ばせることです。表面上は「自由な働き方ができる業務委託」と説明しながら、実際には会社の指示通りに働かせる「偽装請負」という違法行為を行っています。
また、「デザインの勉強期間」という名目で、最低賃金よりも安い給料で働かせたり、「スキルアップのための残業」として残業代を支払わない企業も存在します。これらは明らかに労働基準法違反ですが、「デザインの仕事は特別だから」という理屈で正当化されてしまうことが多いのです。
厚生労働省もこのような問題を深刻に捉えており、定期的に企業への指導や取り締まりを行っています。しかし、企業側も手口を巧妙にしているため、完全に取り締まることは難しいのが現状です。
このように、Webデザイナーという職種が持つ特性を悪用した求人が横行している背景には、構造的な問題があります。
まさか自分が騙されるとは思わなかった…
面接では全く違う説明をされたのに…
このような声が、転職支援の現場で後を絶ちません。求人票と実際の労働条件の相違に関する問題は継続的に報告されており、特にWebデザイナーなど未経験者歓迎の求人において、悪質な事例が見受けられます。「Webデザイナーになりたい」という純粋な気持ちを悪用されたケースも実際に報告されているのが現実です。
この章では、実際に起きた3つの典型的な被害事例を通じて、悪質企業の手口と対策を詳しくご紹介します。
Aさん(24歳・女性)は「未経験からWebデザイナーに!充実した研修制度あり」という求人に魅力を感じて応募しました。面接では「最初の3か月は基礎研修、その後デザイン実務に移行します」と説明され、安心して入社を決意しました。
しかし実際に配属されたのは、全くデザインとは関係のないコールセンター部門でした。「デザイン研修の一環として、まずはお客様のニーズを理解することから始めます」という説明で、電話対応業務を1日8時間行うことになったのです。3か月経ってもPhotoshopやIllustratorに触れる機会は一度もなく、デザイン業務への異動の話も出ませんでした。
転職エージェントとして支援する中で、このような「研修」を名目とした職種のすり替えは非常に多く見られます。
Bさん(26歳・男性)が応募したのは「営業も学べるWebデザイナー募集」という求人でした。面接では「クライアントとの打ち合わせができるデザイナーを育成したい」と説明され、デザインスキルを身につけながら営業力も鍛えられると期待していました。
入社後の業務は完全に営業職そのもので、ノルマも課せられました。デザイン業務については「営業成績が上がったら教える」と言われ続け、結局半年間で一度もデザインソフトに触れることはありませんでした。さらに深刻だったのは、営業成績不振を理由に「デザイナーとしての適性がない」と評価され、自信を失ってしまったことです。
このケースの問題点は、本来異なる職種である営業とWebデザイナーを意図的に混同させ、求職者の期待を裏切っている点です。健全な企業であれば、デザイナーがクライアントとコミュニケーションを取る場合でも、デザイン業務が主体となるはずです。
Cさん(23歳・女性)は「完全未経験OK・スキル習得支援あり」の求人に応募しました。面接では「当社独自のデザイン研修プログラムがあります」と説明され、未経験でも安心してスキルを身につけられると感じていました。
しかし入社直後、突然80万円の「専門スクール受講料」の支払いを求められました。「このスクールを修了しないとデザイナーとして働けない」「費用は分割払いも可能」と説明され、断りにくい状況に追い込まれました。さらに問題だったのは、そのスクールの内容が市販の参考書程度のレベルで、到底80万円の価値がないものだったことです。
正当な企業であれば、社員教育にかかる費用は会社が負担するのが原則であり、個人に高額な教材費を請求することはありません。
これらの被害事例に共通するのは、求職者の「Webデザイナーになりたい」という純粋な気持ちを悪用している点です。また、いずれのケースでも契約書や労働条件通知書の記載が曖昧で、後から「聞いていた話と違う」と訴えても逃げ道を作られているという特徴があります。
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この求人、応募しても大丈夫?
求人票を見ながら迷った経験はありませんか。悪質なWebデザイナー求人には共通する特徴があり、注意すべきポイントは多岐にわたります。これらを事前にチェックすることで被害を防ぐことができます。
また、求人票以外にも企業ホームページや面接方法など、確認すべき要素を網羅的にご紹介します。このチェックリストを活用することで、安心して転職活動を進めることができるでしょう。
求人票を見る際、特定のキーワードが含まれている場合は即座に警戒すべきです。まず「未経験歓迎・月収30万円以上保証」のような高収入を謳う表現は、悪質な企業の誘導文句です。実際のWebデザイナーの平均年収は経験者でも350万円程度であり、未経験者がいきなり高収入を得ることは現実的ではありません。
「完全在宅OK・自由な働き方」という文言も要注意です。本来のWebデザイン業務では、クライアントとの打ち合わせやチームでの作業が不可欠で、完全在宅は困難な場合が多いからです。これらの表現は、実際には業務委託契約での偽装請負を隠すために使われることが頻繁にあります。
「研修充実・教材費支援」も危険なワードです。悪質な企業は「充実した研修制度」を謳いながら、実際にはデザインとは関係のないコールセンター業務や営業研修を行ったり、「教材費支援」と称して高額な教材やスクール代を個人負担させる手口を使います。このワードが出てきた場合、求めている業務に携わることができない可能性や高額教材の購入を迫られる可能性が高いと考えましょう。
次に、すぐに危険とは言えないものの、詳細な確認が必要なワードをご紹介します。
「人物重視・やる気重視・未経験歓迎」の組み合わせも注意が必要です。Webデザインはスキルが重要な専門職であり、人柄だけで採用する企業は少ないのが現実です。面接時には必ず「具体的にどのようなデザインソフトを使うのか」「1日の業務フローはどうなっているか」を確認しましょう。
「営業も学べる」「幅広い業務に携われる」という表現も要注意です。これらは一見魅力的に聞こえますが、実際にはデザイン業務よりも営業や事務作業がメインになる可能性を示唆しています。健全な企業であれば、デザイナーはデザイン業務に集中できる環境を整えるはずです。
求人票の文言だけでなく、企業の実態も必ず確認しましょう。まず企業のホームページで制作実績を確認してください。Webデザイン会社なのに制作実績が掲載されていない、または明らかに外注制作と思われる場合は危険信号です。
会社の事業内容も重要なチェックポイントです。人材派遣業が主事業の会社が「Webデザイナー募集」をしている場合、実際には派遣要員の確保が目的の可能性があります。
また、求人サイト上の企業評価や口コミも参考になります。ただし、意図的に良い評価を書いている可能性もあるため、複数のサイトで情報を収集することが大切です。
最後に、労働条件通知書の提示を渋る企業は絶対に避けてください。法的に義務付けられている書面を提示できない企業は、そもそも労働基準法を遵守する意識が低いと判断できます。
これらのチェックポイントを活用することで、怪しいWebデザイナー求人の大部分は事前に見分けることができます。
ここまで怪しいWebデザイナー求人の実態と見分け方をお伝えしてきました。最後に、本当にIT業界で活躍するための現実的なアクションプランをご提案します。
まず重要なのは、Webデザイナーにこだわりすぎず、他のIT職種にも目を向けてみることです。経済産業省によると、2015年時点でIT人材の不足数は約17万人であり、2030年には約59万人にまで拡大する見通しです。この深刻な人材不足により、IT業界全体で人材確保が急務となっており、未経験者への門戸も広がっています。
例えば、ITサポート、システム運用、ネットワーク監視、Webプログラマーなど、様々な職種で未経験者の採用が行われています。これらの職種では確実にスキルを身につけることができ、将来的には専門性を高めてキャリアアップを図ることも可能です。
転職活動では、信頼できる転職エージェントの活用をお勧めします。特にIT特化型のエージェントであれば、業界の実情を踏まえた適切な求人紹介と、怪しい企業の排除を行ってくれます。一人で判断に迷った際には、プロの意見を求めることが成功への近道です。
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