目まぐるしく変化するIT業界。AIの進化、DXの加速など、IT業界はかつてないほどの変革期を迎えています。そんな中、若手エンジニアはこれからの働き方に対して、期待と不安を抱いているのではないでしょうか。 IT業界の未来、そして私たちがどのような変化に対応していくべきかについて、株式会社エンデバース代表取締役の百瀬さんにお話しを伺いました。
ーー百瀬さんが感じるIT業界の課題を教えてください。
やはり、慢性的な人材不足です。
とくにAI、クラウド、サイバーセキュリティなどの先端分野での需要が高まっていますが、供給が追いつかない状況です。最先端の技術に対応できる人材が育っていないので、今後も人材不足は続いていくと思います。
ーー2030年にはIT人材が最大79万人不足するとも言われていますよね…。
先ほど話しました、先端分野での急速な需要増加は大きく関係しています。やはり、先端技術を扱える人材が十分に育っていないため、即戦力となる人材が不足しているのが現状です。
そのほか、教育や再教育の機会が不足しており、エンジニアがITスキルを習得するペースが追いついていないことも要因の1つです。
また「2025年の壁」への問題も懸念されます。ITインフラの老朽化やシステムの問題解決の遅れなどにより、大きな経済損失が生じる可能性があります。これらのレガシーシステムに対応できる人材が不足するほか、AWSやAzureなどのクラウド系プラットフォームに移行するには数年単位の作業になるので、多くのIT人材を担う必要があるでしょう。
ーーIT人材不足から転職市場には、どのような影響が出ると思いますか?
現在も売り手市場ですが、今後さらにその傾向が強まると感じています。優秀なエンジニアはどの企業も貴重な存在であり、採用や待遇、働きやすさの面で企業間の競争が激しくなると思います。
ーースキルを持つエンジニアの需要は高まる一方なんですね。そうなると、未経験や微経験の人はどうなるのでしょう?
実際、経験豊富な即戦力のみに限らず、これまで培ったコミュニケーション能力を活かした人の活躍や採用されるケースが増えている印象があります。
エンジニアはチームで動いたり1人で客先常駐したりするなど、さまざまな場面でコミュニケーションが求められます。接客経験のある方はコミュニケーション能力が高いので、エンジニアの業務を遂行する上で必要な「課題解決能力」を発揮していただけると思います。
ーー「課題解決能力」について具体的に教えてください。
論理的に問題を分解し、適切な技術を選択しつつ、新しい視点で柔軟に解決策を模索する力が重要です。また、チームやクライアントと協力しながら課題を共有し、優先順位を明確にすることが求められます。
試行錯誤を繰り返す粘り強さと解決後に改善を継続する姿勢が、信頼されるエンジニアへ成長すると思います。
ーー柔軟な対応力と冷静な判断力が求められそうですね。では、「課題解決能力」はどうやって身に付けられますか?
人とのコミュニケーションの数を増やし、伝えるロジックを組んで話すことが大切です。
とはいえ、「課題解決能力」は今すぐに身につくスキルではなく、3~5年ほどかかります。日々の業務の中で「相手にどのように伝えるのか」「どうすると伝わりやすくなるのか」を意識して業務にあたり、周りとコミュニケーションを取っていただくとよいと思います。
あとは、本を読んだりアウトプットの数を増やしたり…地道なのですが、コツコツと積み重ねることが近道になりますね。
ーー何事も継続が大切ですね。接客業などを経験された、コミュニケーションスキルが高い人は「課題解決能力」がある、ということですか?
そうですね、とくにお客様を思いやり、気遣い、おもてなしをする販売員などのホスピタリティの高さは、課題解決能力が優れていると感じます。
ITの技術部分は学習や業務の中で身に付きますが、コミュニケーションスキルは後から身に付きにくいものなんですよね。そうしたスキルは現場でどんどん活かせられると思います。
ーー中には、コミュニケーションが苦手な人もいますよね。そのような方はどのような支援をしますか?
当社の場合ですが、1on1でサポートしていきたいと考えています。やはりコミュニケーションスキルは簡単に習得できるものではないので、1回の転職でおしまいではなく、今後もキャリアの伴走者として携わりたいですね。
ーー今後、転職エージェントに求められるものはなんですか?
「キャリア形成の伴走者」としての役割がより求められます。
とくにIT業界は目まぐるしく変化するため、求職者が「どのスキルを伸ばすべきか」「次にどのキャリアを選ぶべきか」という長期的な視点でのアドバイスを提供できるエージェントが必要です。
当社「キャリアカンパニー」では、すでにスキルアップ支援を含めたサービスを提供しており、このニーズに先駆けて対応しています。
ーー長くサポートしてもらえると安心ですね。キャリアカンパニーではどのようなサポートをしていますか?
転職はゴールではなく、キャリア形成のプロセスの一部と考えています。そのため、入社後の定期フォローやスキルアップの提案、キャリア相談を継続的に行い、エンジニアの成長やキャリアプランを長期的に支え続けます。
あとは、求職者の話をとことん聞く。心の奥にある本音を話してもらえるよう、話しやすい環境作りに力を入れています。
丁寧な文章、即レス、小さな約束を積み重ねる…どれも当たり前のことですが、これらができているエージェントって少ないんですよね。なので、「求職者との信頼関係を築く」力は他のエージェントと違うと感じていただけたら嬉しいですね。
ーー最後に求職者に向けてメッセージをお願いします。
私自身、新卒で入社した会社の社風に馴染めず、1年で離職した経験があります。
一見、早期離職はマイナスなイメージに捉えがちですが、私はこれを必ずしも悪いことと考えていません。むしろ、早期の離職は自分自身のキャリアを見直し、「本当に自分が活躍できる場」や「納得できる働き方」を追求する機会でもあると考えています。
離職を単なる「挫折」ではなく「転機」として捉え、自分が輝く場を見つけるきっかけにしてほしいと思います。