

IT事務の求人を見つけたけど、実際にどんな仕事をするのかイメージできない…
そんな不安を抱えていませんか。IT事務は、社内のIT環境を支える重要な仕事です。しかし、具体的な業務内容や1日の流れ、求められるスキルは一般事務とは大きく異なります。
この記事では、IT事務の仕事内容を時系列で追いながら、主要業務を難易度・習得期間付きで詳しく解説します。未経験者が最初につまずくポイントとその解決策、成長の流れまで、転職エージェントとして企業の採用担当と日々やりとりしている現場目線でお伝えします。
IT事務の基本や全体像については「IT事務とは?」で詳しく解説しています。


IT事務って、具体的にどんな仕事をするの?
多くの方がこの疑問を抱えています。IT事務は、企業のIT部門で社内のIT環境を支えるサポート業務を担当する職種です。プログラミングなどの専門スキルは不要のため、未経験からでも挑戦できます。ここでは、IT事務が担当する主要業務や一般事務との違い、混同しやすいヘルプデスク・ITサポートとの違いを解説します。まずは全体像を掴みましょう。

1. IT機器の準備と管理
パソコンやスマートフォンなどの初期設定(キッティング)から、故障時の対応、不要になった機器の回収・廃棄まで、機器のライフサイクル全体を管理します。
2. アカウント・権限管理
社内システムのアカウント発行、パスワードリセット、アクセス権限の設定・変更を行います。情報セキュリティの観点からも重要な業務です。
3. ヘルプデスク・問い合わせ対応
「パソコンが起動しない」「プリンターに接続できない」といった社員からのIT関連の問い合わせに対応し、トラブル解決に導きます。
4. IT資産・ライセンス管理
企業が保有するIT機器やソフトウェアライセンスを台帳で管理します。適切な更新や発注を行い、コンプライアンス違反を防ぎます。
5. マニュアル・ドキュメント作成
新システムの操作マニュアルや、よくある問い合わせをまとめたFAQ、IT部門の議事録など、様々な資料を作成します。
IT事務と一般事務の最も大きな違いは、業務内容がIT関連に特化しているかどうかです。
| 比較項目 | IT事務 | 一般事務 |
| 主な業務 | PC設定、ヘルプデスク、IT資産管理、アカウント管理 | 書類作成、データ入力、電話応対、備品管理 |
| 必要な知識 | ITの基礎知識、専門用語の理解 | ビジネスマナー、Officeの基本操作 |
| 平均給与(未経験) | 月給22〜28万円程度 | 月給18〜23万円程度 |
| キャリアパス | インフラエンジニア、社内SE | 営業アシスタント、総務、人事 |
IT事務は専門性が高く評価され、給与水準も高めに設定されています。採用現場では「ITへの興味関心と学習意欲を重視する」という声を多く聞きます。
ヘルプデスク
ユーザーからのIT関連の問い合わせ対応に特化した職種です。電話やメールでのトラブルシューティングが主な役割で、コミュニケーション能力が特に重視されます。
ITサポート
ヘルプデスクよりも技術的な対応範囲が広く、現地でのトラブル対応や、システムの設定変更、簡単なネットワーク構築なども含まれます。
IT事務
ヘルプデスク業務も含みますが、それに加えてIT資産管理やアカウント管理、マニュアル作成といった事務作業の比重が高いのが特徴です。ITと事務の両方のスキルをバランスよく活かせる職種と言えるでしょう。


IT事務の仕事は具体的に何をするのか、7つの主要業務を詳しく見ていきましょう。それぞれの作業内容、難易度(星5段階)、習得期間を紹介します。「自分にもできそう」「これは少し難しそうだな」と、リアルなイメージを掴んでください。未経験からでも、どの業務も段階的に身につけていけるので安心してくださいね。
新しいパソコンを業務で使える状態にセットアップする作業です。OSの初期設定、ソフトウェアインストール、ネットワーク接続、動作確認、資産台帳登録を行います。

OSとは、パソコンやスマホを動かすための土台となるソフトのことです。
Windows や macOS、Android、iOSなどは私たちの身近なOSです。
一言で言うと、「機械(ハード)とアプリの橋渡しをする、コンピュータの司令塔」です。
社員から「パソコンが動かない」「プリンターにつながらない」といったIT関連の困りごとやトラブルの相談を受けて、解決のお手伝いをします。電話やメール、社内チャットなどで状況を聞き取り、一つずつ確認しながら問題を解決していきます。
よくある問い合わせ例5選
・パスワードを忘れた
・パソコンの動作が急に遅くなった
・プリンターで印刷できない
・ファイルが開けない
・メールが送受信できなくなった
社内で使う様々なシステムのアカウントを発行したり、パスワードを忘れてしまった社員の再設定を手伝ったりします。また、異動や昇進に合わせてアクセス権限を変更したり、退職者のアカウントを削除したりする業務も含まれます。
会社が持っているパソコンやモニター、スマートフォン、ソフトウェアのライセンスなどを台帳できちんと記録して管理します。年に1〜2回の棚卸し作業で実際の機器と台帳を照らし合わせたり、ライセンスの更新時期が近づいたら手続きをしたり、不足している機器があれば発注の手配をしたりします。
新しいシステムの使い方を説明する操作マニュアルや、よくある質問をまとめたFAQ、会議の議事録、社員向けのお知らせ文書、業務の手順書などを作成します。誰が見ても分かりやすいように、図やスクリーンショットを使って丁寧に仕上げていきます。
会社全体で新しいシステムやツールを導入するときに、エンジニアと一緒にサポートします。システムがちゃんと動くか確認したり、社員向けのマニュアルを作ったり、導入説明会の準備をしたり、導入後に寄せられる質問に答えたり、使いにくい点があればエンジニアに伝えたりします。
IT部門のミーティングに参加したり、他の部署との間で調整役を務めたり、プロジェクトの進み具合を報告したりします。IT部門と他の部署をつなぐ橋渡し役として、技術的な話を分かりやすく伝えたり、現場の要望をエンジニアに届けたりします。
ITの知識だけでなく、ビジネスマナーやコミュニケーション力も大切になる業務です。



IT事務って、実際に1日をどんな風に過ごすの?
求人票だけでは具体的な働き方がイメージしにくいですよね。ここでは一般的なIT事務の1日の流れを時系列でご紹介します。繁忙期と閑散期の違いについても触れていきますので、年間を通した業務リズムも理解できるでしょう。
未経験からIT事務への転職に興味がある方は、実際にキャリアチェンジを成功させた方の体験談も参考になります。インタビュー記事「みんなで切磋琢磨して成長できる環境に出会えたことが、本当に良かったです。」では、未経験からIT事務として活躍するまでのリアルなエピソードを紹介しています。
9:00 出社・メールチェック
メールや社内チャットツールをチェックし、夜間や早朝に届いた問い合わせや緊急トラブルがないか確認。優先順位をつけて対応計画を立てます。
9:30 朝のミーティング
IT部門全体で朝会を実施。昨日のトラブル報告や今日の作業予定、進行中のプロジェクトの進捗を共有します。
10:00 キッティング作業
来週入社する新入社員5名分のパソコン設定を行います。Windows 11のセットアップ、社名アカウントの設定、Microsoft Office、Zoom、社内専用ツールのインストールを進めます。設定が完了したら、動作確認を行い、台帳に記録します。
11:30 問い合わせ対応
営業部から「急ぎ!プレゼンファイルが開けなくなった」と連絡が入ります。状況をヒアリングし、バックアップから復元する方法を案内して解決しました。
13:00 IT資産台帳の更新
午前中にキッティングしたパソコンの情報を、IT資産管理台帳に登録します。機種名、シリアルナンバー、使用者、配備日などを正確に入力します。
14:00 新システム導入に向けた動作検証
来月から全社で導入予定の新しい勤怠管理システムのテストを行います。出退勤の打刻や休暇申請がスムーズにできるか確認し、気になった点をエンジニアにフィードバックします。
15:00 アカウント発行・パスワードリセット対応
人事部から「来月入社する中途社員3名分のアカウント発行をお願いします」との依頼に対応。同時に、経理部からの「パスワードを忘れた」という問い合わせにも対応します。
16:00 マニュアル作成
新しい勤怠管理システムの操作マニュアルを作成します。実際の画面のスクリーンショットを撮り、PowerPointで手順を図解。専門用語は噛み砕いた表現に置き換え、分かりやすく整えます。
17:30 1日の業務まとめ・翌日の準備
今日対応した問い合わせ内容を記録し、未解決の案件があれば引き継ぎメモを作成。明日のキッティング作業で必要な機器が揃っているか確認します。
18:00 退社
定時で退社。IT事務は、エンジニアと比較して残業が少ない傾向にあり、ワークライフバランスを保ちやすい職種です。
繁忙期(4月・10月、システム更新時期、年度末)
大量のキッティング作業やアカウント発行、システムの動作検証や社員への説明会準備、IT資産の棚卸しやライセンス更新で忙しくなります。
閑散期(8月・12月の長期休暇前後)
問い合わせ件数が減少するため、マニュアルの見直しやIT資産台帳の整理、スキルアップのための学習時間に充てることができます。


ここまで読んで「IT事務、やってみたい!」と思った方も、「本当に自分にできるかな…」という不安が残っているかもしれません。
しかし安心してください。つまずくポイントは誰もが通る道であり、適切な対処法を知っておけば乗り越えられます。ここでは代表的な4つのつまずきポイントと、その具体的な解決策をご紹介します。事前に知っておくことで心の準備ができ、スムーズにキャリアをスタートできるはずです。
IT事務の職場では、キッティング、DNS、IPアドレス、ドメインといった専門用語が日常的に飛び交います。最初は呪文のように聞こえて、会話についていけず不安になることもあるでしょう。
解決策
まずは焦らず、分からない用語はその場でメモを取る習慣をつけましょう。後で調べるための記録が大切です。「IT用語辞典 e-Words」などのWebサイトでは、初心者向けに分かりやすく解説されています。
また、わからないことは先輩に素直に質問することも重要です。ほとんどの先輩は丁寧に教えてくれます。余裕があれば、基本書籍で体系的に学ぶと理解が早まります。
ヘルプデスク業務では、トラブルが発生している社員から問い合わせを受けます。相手は困っていて焦っているため、プレッシャーを感じて怖くなってしまうことがあります。「自分が解決できなかったらどうしよう」という不安で、電話が鳴るたびにドキドキする方も少なくありません。
解決策
まず、多くの企業ではトラブル対応フローや手順書が用意されています。それに沿って一つずつ確認していけば大丈夫です。対応する際は、冷静にヒアリングすることから始めましょう。状況を整理するだけで解決の糸口が見えてきます。
そして重要なのは、自分で解決できないトラブルは無理せず、先輩やエンジニアに引き継ぐ(エスカレーションする)ことです。これは恥ずかしいことではなく、適切な判断です。また、過去のトラブル事例を記録しておくと、同じような問い合わせが来たときにスムーズに対応できます。
IT事務はサポート役ですが、専門知識が完璧にあるわけではありません。それでも社員からは「IT部門の人」として見られ、「なぜそうなるのか?」という専門的な質問を受けることがあります。答えられないと、自分の無力さを感じてしまうかもしれません。
解決策
実は、原理や仕組みを完璧に説明できなくても、「こうすれば直ります」という解決方法を案内できれば十分です。相手が求めているのは、問題の解決であって、技術的な講義ではないからです。
その場で答えられない質問には、「詳しく調べて折り返しご連絡します」と伝えましょう。調べてから正確な情報を伝える方が、間違った情報を伝えるよりもずっと信頼されます。そして、対応した案件について後で少し深く調べる習慣をつけると、自然と専門知識が身についていきます。
IT事務の業務範囲は広く、最初の数ヶ月は新しい情報が次々と入ってきます。「これも覚えて、あれも覚えて」と言われ、圧倒されてしまうことがあります。「自分には向いていないかも…」と不安になる方もいるでしょう。
解決策
まず大切なのは、すべてを一度に覚える必要はないということです。優先順位をつけて、頻繁に使う業務から順番に覚えていきましょう。毎日使う業務は、自然と体が覚えていきます。
マニュアルとは別に、自分が理解しやすい言葉でメモを作ると記憶に定着しやすくなります。読むだけでなく、実際に手を動かして何度も繰り返すことで、体が覚えます。分からないことがあって当然という前提で、焦らず一歩ずつ進みましょう。



IT事務になるには、どんなスキルが必要?
未経験でも本当に大丈夫?
この章では、こうした疑問に答えます。結論から言えば、IT事務に挑戦するために高度な資格や専門知識は必要ありません。基本的なPCスキルと学習意欲があれば、未経験からでも十分にスタートできます。
ここでは最低限必要なスキル、あると有利な資格、そして入社後3ヶ月・6ヶ月・1年でどのように成長していくのかを詳しく見ていきましょう。IT事務に向いている人の特徴も紹介しますので、自分の適性を確認してみてください。
1. 基本的なPCスキル
Word、Excel、PowerPointの基本操作ができればOK。高度な機能は入社後に業務を通して学べます。
2. コミュニケーション能力
相手の話を丁寧に聞き、分かりやすく説明する力。接客業や営業事務の経験が活きます。
3. 学習意欲と柔軟性
新しい知識やツールを学ぶことに前向きな姿勢が最も重要です。
入社後1〜3ヶ月:基礎業務の習得期間
キッティング作業、簡単な問い合わせ対応、IT資産台帳の入力など、マニュアルを見ながら基本業務を習得します。
入社後4〜6ヶ月:応用業務への挑戦期間
アカウント管理業務、マニュアル作成、やや複雑な問い合わせ対応など、マニュアルなしでも対応できるようになります。
入社後7ヶ月〜1年:自立・専門性の向上期間
システム導入プロジェクトへの参加、後輩の指導、業務改善の提案など、一通りの業務を自分で判断して進められるようになります。
1. 人をサポートすることに喜びを感じられる人
「ありがとう」と感謝される瞬間にやりがいを感じられる人は、IT事務に向いています。
2. 新しいことを学ぶのが好きな人
「知らないことを学ぶのが楽しい」という好奇心旺盛な人は、IT事務の環境を楽しめます。
3. 丁寧で正確な作業ができる人
一つひとつの作業を丁寧に、確実にこなせる人が信頼されます。
IT事務は、未経験から挑戦できるIT業界への入口として最適なキャリアです。最初はIT用語やトラブル対応に戸惑うかもしれませんが、解決策を知っておけば焦らず乗り越えられます。入社後3ヶ月で基礎業務、6ヶ月で応用業務、1年で自立と、着実に成長していけます。
基本的なPCスキルと学習意欲があれば、未経験からでも十分にスタートできます。「事務職だけど、もっと専門性を高めたい」「IT業界に興味があるけど、エンジニアは難しそう」そんなあなたにとって、IT事務は理想的な選択肢です。
この記事が、あなたのIT事務への挑戦を後押しできたなら幸いです。自信を持って、新しいキャリアの一歩を踏み出してください。
